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カリフォルニアのワイン王 薩摩藩士・長沢鼎
宗教コロニーに一流ワイナリーを築いた男
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年5月
- 書店発売日
- 2017年5月25日
- 登録日
- 2017年5月18日
- 最終更新日
- 2017年5月18日
紹介
幕末に薩摩藩が英国に送り出した留学生の一人、長沢鼎。その後米国に渡った彼は当時最盛期を迎えていた宗教コロニーで生活し、のちにカリフォルニアで一大ワイナリーの所有者として成功を収めた。知られざる波瀾万丈の人生を米国研究者の視点から描き出す。
目次
はじめに
第一章 欧米に目覚めた幕末期
1 イギリス公使館襲撃事件
2 生麦事件から薩英戦争へ
3 イギリスへ留学生の派遣
第二章 ロンドンでの留学生
1 グラバー家の支援と薩摩藩
2 学び始めた留学生
第三章 日本人留学生を導いた二人の宗教家
1 オリファントとハリス
2 ハリスの宗教コロニー
3 分裂する日本人留学生
第四章 トマス・レイク・ハリスとは何者か?
1 新生国家日本のビジョン
2 宗教コロニーの歴史的背景
3 三つの異なるタイプのコロニー
4 ハリス・コロニーの神学
第五章 長沢鼎のワイナリー経営
1 カリフォルニアに新天地を求めて
2 ワイン・キング長沢への歩み
3 カリフォルニアの名士と移民排斥
4 晩年の厳しい試練
5 今日に生きる長沢鼎
おわりに
注
参考文献
長沢鼎関連年表
索引
前書きなど
はじめに
これまで何冊かの本を書いてきたが、テーマはアメリカ研究に関するものだけだった。というより、そのテーマ以外には関心も向かなかったし、能力もなかった。ところが、今回はちょっとした出来事から、幕末のサムライがイギリス留学を経てアメリカに向かい、宗教コロニーでキリスト教を学ぶ若者の存在を知った。しかも、日本人移民としてではなく、アメリカ人の特殊な集団のなかで認められ、最終的にワイナリーの経営者として大成功するというのだから、他に類を見ないほど稀有の事例である。それなのに日米関係史において、ほとんど知られていないことから、大いなる関心をもつにいたった。
六、七年も前のことだが、横浜で起こった生麦事件の現場近くに資料館(参考館、二〇一四年に閉館)のあることを偶然に知り訪ねてみた。横浜育ちなので、生麦事件のことは名前くらいは聞いていたが、詳しいことは知らなかった。生麦事件から薩英戦争に発展し、その終戦後に薩摩藩がイギリスに留学生を送った。これだけなら、本の執筆には決してつながらなかっただろうが、そのうちの何人かがアメリカに渡ったことを知り、自分の研究分野でも扱えるテーマだと何気なく思った。
アメリカに六人の留学生が渡り、最年少の長沢鼎はカリフォルニアの宗教コロニーでブドウを植え、大きなワイナリーにまで育てあげるという成果をあげる。若い薩摩藩士がなぜ、異端のキリスト教を提唱する宗教活動家トマス・レイク・ハリスのコロニーで、その教えを実践しながらワイナリー経営者に育っていったのか。長沢に関する関心や疑問がどんどんふくらんでいった。資料があまりないことはすぐわかった。しかし、鹿児島県の図書館、全米日系人博物館、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、かつてワイナリーのあったカリフォルニアのサンタローザなどを訪ねたり、古い資料をインターネット検索にかけたりしているうちに、なんとか一冊の本にできそうな自信がわいてきた。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。