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ドイツに生きたユダヤ人の歴史
フリードリヒ大王の時代からナチズム勃興まで
原書: The Pity of It All: A Portrait of the German-Jewish Epoch, 1743-1933
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年12月
- 書店発売日
- 2013年12月25日
- 登録日
- 2013年12月17日
- 最終更新日
- 2013年12月17日
紹介
ドイツ人口の0.5%にすぎないユダヤ人だったが、フリードリヒ大王の時代からヒトラー出現までの200年間に、メンデルスゾーン、ハイネ、アインシュタイン等傑出した人物を多数輩出した。彼らが偏見と差別に向きあって自己を主張し苦闘した経緯を描く。
目次
序
第一章 古代栄光の民――無宿者とゲットー社会の悲哀
第二章 メンデルスゾーンの時代――ユダヤ人の啓蒙運動とキリスト教徒社会
第三章 ミニチュアのユートピア――ナポレオンがもたらした束の間の解放
第四章 ハイネとベルネ――三重の悲しみを紡ぐ人々
第五章 諸国民の春――一八四八年の革命と挫折
第六章 期待と不安――ビスマルクとドイツ帝国の誕生
第七章 進歩の時代――ユダヤ人中産階級の形成
第八章 同化と不満――ドイツ帝国の発展―黄金の二五年
第九章 戦争熱――国家総力戦とユダヤ人
第一〇章 終焉――ワイマール時代からヒトラーの時代へ
謝辞
訳者あとがき
引用文献
前書きなど
訳者あとがき
本書は、アモス・エロン著 The Pity of It All A Portrait of the German-Jewish Epoch 1743-1933 の全訳、一八世紀中期に始まるハスカラ(ユダヤ人の啓蒙運動)からヒトラーの登場まで、偏見と差別にさらされたドイツ・ユダヤ人社会の葛藤の歴史である。
中心に位置するキリスト教徒社会と、その周辺部の小さいユダヤ人社会は、さまざまな点で互いに異質であった。生活を律する共同体の核心部分である宗教は、同じ系統とはいえ対立している。特にユダヤ教では戒律が日常生活に組みこまれ、その暦(陰暦)も宗教と歴史に由来する行事が沢山あって、生活のリズムが違う。使用言語も違っていた。
キリスト教徒社会より少し遅れて始まった啓蒙運動(ハスカラ)は、時代の進歩に遅れないために必要であったが、円滑にいったわけではない。日常生活は戒律が支配し、学習も聖書とタルムードの勉強を中心とする。そこへ世俗の教育を取り入れ、生活のリズムを外部に合わせようとすると、共同体の中で聖と俗の葛藤が生じる。
共同体の外側は、ユダヤ人を偏見の色眼鏡で判断し差別する世界である。世俗の教育を受けても職業や学問から排除され、仲間に入れて貰えない。個人レベルで見ると、キリスト教徒社会の生活と文化に適応する所謂同化だけでは、公職や教職につけず、改宗が必要であった。改宗は、これまでの存在基盤であった共同体からの離脱を意味し、個人と共同体に強い葛藤を生じた。
本書は、フリードリヒ大王の時代から第一次世界大戦後の時期までの二〇〇年を対象とし、メンデルスゾーン、ハイネ、革命家・銀行家バンベルガー、実業家・外相ラーテナウ或いはアインシュタイン等が、偏見と差別に向き合って自己を主張し、苦闘した経緯を描く。
行商、質屋、クズ屋或いは乞食を生業とし、人口の〇・五%を占めるにすぎなかった被差別民は、この二〇〇年の間に世界に知られる人物を多数輩出し、実業界でもドイツ有数の企業を作りだすまでに成長したが、葛藤の歴史がそこで終わったわけでない。
著者エロンは、政治哲学者ハンナ・アーレントがベルリンを脱出するところで、筆を置いた。この後戦争が始まり、同時並行的に進行するホロコーストで、ヨーロッパのユダヤ人社会が潰滅し、六〇〇万のユダヤ人が抹殺されたのは周知の通りである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。