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アウシュヴィッツの巻物 証言資料 ニコラス・チェア(著/文) - みすず書房
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アウシュヴィッツの巻物 証言資料 (アウシュヴィッツノマキモノ ショウゲンシリョウ)

歴史・地理
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発行:みすず書房
A5判
重さ 655g
416ページ
定価 6,400円+税
ISBN
978-4-622-08703-8   COPY
ISBN 13
9784622087038   COPY
ISBN 10h
4-622-08703-0   COPY
ISBN 10
4622087030   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C1022  
1:教養 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年5月16日
書店発売日
登録日
2019年3月2日
最終更新日
2019年5月10日
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書評掲載情報

2019-05-25 朝日新聞  朝刊
評者: 諸田玲子(作家)
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紹介

ナチのユダヤ人絶滅収容所内に設置されたガス室は、移送されてきたユダヤ人から選別された囚人「ゾンダーコマンド」(特別作業班)によって稼動していた。彼らは人々がガス室へ送られるのに立会い、遺体の焼却や処理、清掃など、「地獄」の労働を担わされた。
ゾンダーコマンドたちがひそかに書き残してアウシュヴィッツ収容所の火葬場の地中に埋めた記録、手記や手紙が戦後、数十年にわたって発掘されている。イディッシュ語やフランス語、ギリシア語などの言語で書かれ、内容も文体も体裁もさまざまである。ガス室の入り口から隠し撮りした写真もあった。
やがて死の選別が自らにも下される恐怖のなかで、書くことは彼らの生を支え,同時にナチに対する抵抗でもあった。それは外部の他者、後世の人々とつながろうとする意志であり、ホロコーストがしばしば「表象不可能」と評されることへの根源的な反証となっている。
ゾンダーコマンドの文書は旧約聖書の中でも特別な書とされる五書にちなんで「巻物」と呼ばれる。「巻物」の書き手たちはほとんど生きて還ることはなかった。
彼らはなぜ、何を、どのように書いたのか。本書は「アウシュヴィッツの巻物」の全体像を詳しく考察した初めての書である。

目次

まえがき
原書による凡例
日本語版のための凡例

序文 証言問題
発見/ゾンダーコマンド/ホロコースト文書/出来事の内部にいるということ/言葉を見つける

第一章 歴史問題
歯/隠された歴史/行為の残滓/参照枠/証言の再制作/過去に触れる/崇高な歴史経験/犯罪の痕跡 

第二 ザルマン・グラドフスキ  死の工場における文学
問い/ある人生の痕跡/勧告/旅程/月/チェコ人の搬送/地獄の心臓部で/最後の考察

第三章 散在した自我  レイプ・ラングフスの話
作者の消失/発見物/移送/分離の形象/感情の言語資料/「三千人の裸の女性たち」/「個々の事柄」/相違

第四章 終極の準備  ザルマン・レヴェンタルの抵抗史
事実/レヴェンタルの手書き文書/欠落(1-20頁)/蜂起の語り(21-92頁)/移送(93-115頁)/ウーチの手書き文書への補遺

第五章 筆跡と手紙  ハイム・ヘルマンとマルセル・ナジャリ
息づく手紙/情動的な現実/手紙の男たち/集団のなかのさまざまなグループ/共有された経験/生としての記述

第六章 カメラの眼  ビルケナウからの四枚の写真
イメージ、それでもなお/修正された状態/想像せよという命令/絶滅を指標する/画像とテクスト/カメラの眼/四枚目の写真

結論 炎の輪を通り抜ける

訳者あとがき
原註
参考文献
付表A レイブ・ラングフスの「移送」
付表B レイブ・ラングフスの「個別の事柄」
付表C ザルマン・レヴェンタルの手書き文書
人名索引

著者プロフィール

ニコラス・チェア  (ニコラスチェア)  (著/文

モントリオール大学美術史学科教授。視聴覚分野の現代美術やジェンダー論が専門。トラウマ体験を証言する表現形式としての美術・文学研究でも知られる。2007年、フランシス・ベーコンの絵画研究により、独創的な研究に授与される英国リーヴァーヒューム財団賞を受賞。著書にAuschwitz and Afterimages: Abjection, Witnessing and Representation (2011), After Francis Bacon: Synaesthesia and Sex in Paint (2012), Matters of Testimony: Interpreting the Scrolls of Auschwitz (with Dominic Williams, 2015)〔『アウシュヴィッツの巻物 証言資料』(ウィリアムズと共著)二階宗人訳、みすず書房〕。

ドミニク・ウイリアムズ  (ドミニクウイリアムズ)  (著/文

リーズ大学ユダヤ学科特別研究員。20世紀の英国ユダヤ文学やホロコーストを研究。ニコラス・チェアと「アウシュヴィッツの巻物」の共同研究を進め、戦後証言とその表象を考察している。チェアとの共著にRepresenting Auschwitz: At the Margins of Testimony (2013), Matters of Testimony: Interpreting the Scrolls of Auschwitz (2015) 〔『アウシュヴィッツの巻物 証言資料』二階宗人訳、みすず書房〕。

二階宗人  (ニカイムネト)  (翻訳

1950年生まれ。早稲田大学卒(労働経済論専攻)。ジャーナリスト。NHK記者としてローマ(エルサレム)、ジュネーヴ、ロンドン、パリの各総支局に駐在。東西冷戦下のヨーロッパ、中東紛争、バチカンの動静などを取材した。ヨーロッパ中東アフリカ総局長をはじめNHKエンタプライズ・ヨーロッパ社長を歴任。ホロコーストをめぐる思潮と宗教間対話に関心をもち、ナチ強制収容所の遺構やゲットー所在地跡の多くを訪ねている。これまでに上智大学神学部非常勤講師や米国フェッツァー財団の顧問をつとめた。訳書にシルリ・ギルバート著『ホロコーストの音楽』(2012年)、ニコラス・チェア/ドミニク・ウィリアムズ共著『アウシュヴィッツの巻物 証言資料』(2019年、ともにみすず書房)がある。日本宗教学会会員。長野県在住。

上記内容は本書刊行時のものです。