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出版者情報
アウシュヴィッツの巻物 証言資料
- 初版年月日
- 2019年5月16日
- 書店発売日
- 2019年5月11日
- 登録日
- 2019年3月2日
- 最終更新日
- 2019年5月10日
書評掲載情報
2019-05-25 |
朝日新聞
朝刊 評者: 諸田玲子(作家) |
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紹介
ナチのユダヤ人絶滅収容所内に設置されたガス室は、移送されてきたユダヤ人から選別された囚人「ゾンダーコマンド」(特別作業班)によって稼動していた。彼らは人々がガス室へ送られるのに立会い、遺体の焼却や処理、清掃など、「地獄」の労働を担わされた。
ゾンダーコマンドたちがひそかに書き残してアウシュヴィッツ収容所の火葬場の地中に埋めた記録、手記や手紙が戦後、数十年にわたって発掘されている。イディッシュ語やフランス語、ギリシア語などの言語で書かれ、内容も文体も体裁もさまざまである。ガス室の入り口から隠し撮りした写真もあった。
やがて死の選別が自らにも下される恐怖のなかで、書くことは彼らの生を支え,同時にナチに対する抵抗でもあった。それは外部の他者、後世の人々とつながろうとする意志であり、ホロコーストがしばしば「表象不可能」と評されることへの根源的な反証となっている。
ゾンダーコマンドの文書は旧約聖書の中でも特別な書とされる五書にちなんで「巻物」と呼ばれる。「巻物」の書き手たちはほとんど生きて還ることはなかった。
彼らはなぜ、何を、どのように書いたのか。本書は「アウシュヴィッツの巻物」の全体像を詳しく考察した初めての書である。
目次
まえがき
原書による凡例
日本語版のための凡例
序文 証言問題
発見/ゾンダーコマンド/ホロコースト文書/出来事の内部にいるということ/言葉を見つける
第一章 歴史問題
歯/隠された歴史/行為の残滓/参照枠/証言の再制作/過去に触れる/崇高な歴史経験/犯罪の痕跡
第二 ザルマン・グラドフスキ 死の工場における文学
問い/ある人生の痕跡/勧告/旅程/月/チェコ人の搬送/地獄の心臓部で/最後の考察
第三章 散在した自我 レイプ・ラングフスの話
作者の消失/発見物/移送/分離の形象/感情の言語資料/「三千人の裸の女性たち」/「個々の事柄」/相違
第四章 終極の準備 ザルマン・レヴェンタルの抵抗史
事実/レヴェンタルの手書き文書/欠落(1-20頁)/蜂起の語り(21-92頁)/移送(93-115頁)/ウーチの手書き文書への補遺
第五章 筆跡と手紙 ハイム・ヘルマンとマルセル・ナジャリ
息づく手紙/情動的な現実/手紙の男たち/集団のなかのさまざまなグループ/共有された経験/生としての記述
第六章 カメラの眼 ビルケナウからの四枚の写真
イメージ、それでもなお/修正された状態/想像せよという命令/絶滅を指標する/画像とテクスト/カメラの眼/四枚目の写真
結論 炎の輪を通り抜ける
訳者あとがき
原註
参考文献
付表A レイブ・ラングフスの「移送」
付表B レイブ・ラングフスの「個別の事柄」
付表C ザルマン・レヴェンタルの手書き文書
人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。