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残照 開高健
詩人・牧羊子と作家の昭和
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2025年7月14日
- 書店発売日
- 2025年7月14日
- 登録日
- 2025年5月22日
- 最終更新日
- 2025年7月11日
紹介
戦後高度成長期の文学を牽引し、ベトナム戦争従軍記で新境地を開拓、釣り紀行ルポや美食エッセイでも読者を魅了した開高健(1930~89)。しかしその執筆活動の背景には、妻・牧羊子との容易ならざる家庭生活、闇三部作や『珠玉』に象徴されるニヒリズム、女性たちとの秘密の関係があった。谷沢永一と同僚であった著者が、その〈悪妻〉説に異を唱えつつ、亡き人々への鎮魂の思いを込めて記す開高文学讃。
目次
序章 芥川賞作家を創った女性
開高健と牧羊子という視点/開高文学のルポルタージュと純文学という重層性/いまなぜ開高文学なのか
1 悪妻伝説とフェミニズム
悪妻伝説/フェミニズムの時代
2 同人誌『えんぴつ』に集った鬼才たち
焼け跡のなかで/難儀な合評会
コラム① 大阪空襲
3 開高健と牧羊子の出会い
牧羊子という女性/牧羊子の妊娠/結婚写真/牧羊子の変わり身
4 牧羊子の詩の世界
詩集の出版/小野十三郎/『コルシカの薔薇』/リルケの『マルテの手記』
5 開高文学の原点
サルトルの『嘔吐』/大学生の父親/追試験受験風景
6 コピーライターとしての開高健
壽屋入社から東京へ/開高健、柳原良平、山口瞳のトリオ
コラム② 日本の高度成長期を支えたコピーライター
7 初期の作品群 『パニック』、『日本三文オペラ』と『流亡記』
抒情の否定/「パニック」の新聞記事/ネズミの異常発生の描写/『日本三文オペラ』/在日コリアンの「アパッチ族」/『流亡記』とカフカの世界
8 芥川賞受賞
人生の頂点/ジャーナリズムの寵児となる/文士のサロンへの参入
9 大阪 vs 東京
谷沢永一、東京行きを断る/大阪的流儀/「谷沢劇場」/ルポルタージュ『ずばり東京』──「搦め手」から表社会をあぶり出す/オリンピック観戦記
コラム③ 東京オリンピックと文化人たち、街頭観戦風景
10 開高の『ベトナム戦記』
戦下のベトナム行き/開高が見たベトナム戦争/男の約束/散布された枯葉剤/写真の威力と切り口
コラム④ ベトナム戦争と 「ベ平連」
11 政治の季節から小説家への回帰
開高と「ベ平連」/アンガージュマンから小説家への回帰
12 開高文学の頂点『夏の闇』 104
作品成立の経緯/『夏の闇』のテーマ──生の乖離現象/日本人に対する怨念/在日コリアンの悲しみ/蛙とコオロギ、フクロウと栗鼠のメタファー/『夏の闇』のフィナーレ
13 開高健の闇
佐々木千世という女性/『夏の闇』誕生の真相/開高健の闇/佐々木千世はなぜボンに留学したのか/未完の『花終る闇』
コラム⑤ 政治の宴の後──アンニュイ
14 火宅の人
牧羊子の激怒と嫉妬/茅ヶ崎へ脱出/躁鬱症の連鎖/牧羊子の女帝化
コラム⑥ フェミニズム時代の到来と牧羊子のボーヴォワール論
15 開高はなぜ離婚できなかったのか
三つの理由/牧羊子の夫婦論/牧羊子の秘密/棲み分け
16 言葉の魔術師
「つかみ」のテクニック/大阪の芸人魂/「妖術使い」/対談の名手/特技としての外国語の習得/人たらし/開高のエスプリ
17 焼け跡世代のグルメ志向
トトチャブから美食家へ/パリの食文化を愛でる/洋酒の奥義を極める
コラム⑦ 牧羊子の料理
18 世界放浪のロマン
アマゾン釣り紀行『オーパ!』/開高のロマンの夢
コラム⑧ アウトドア時代の到来
19 牧羊子の晩年の詩
牧羊子の闇/カマドウマと牧羊子/午前二時三八分
20 純文学への回帰──遺作『珠玉』
宝石への関心/『珠玉』のコスモロジー
21 『珠玉』と三島由紀夫の『金閣寺』
開高の抒情の復権/『珠玉』と『金閣寺』
22 開高健の最期
ガン告知/通夜の風景/通夜のモーツァルト「四十番ト短調」/司馬遼太郎の弔辞/谷沢永一と佐治敬三の弔辞
23 女の闘い──牧羊子と高恵美子
『珠玉』のヒロインは誰か/牧羊子の勝利/高恵美子の自殺/追悼集の高恵美子の写真
24 開高健と娘道子
ニチョガエル/父へのレクイエム/開高道子の自殺/自殺比較論
25 牧羊子と金子光晴夫妻
牧羊子『金子光晴と森三千代 おしどりの歌に萌える』/開高健と金子光晴の「どくろ杯」/牧羊子の孤独死
コラム⑨ 下り坂の時代を迎えて
終章 牧羊子は「悪妻」だったのか
結婚と花嫁衣装にこだわった牧羊子/良妻賢母/南無。森羅万象
あとがき
参考文献
上記内容は本書刊行時のものです。