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読書装置と知のメディア史 新藤 雄介(著) - 人文書院
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読書装置と知のメディア史 (ドクショソウチトチノメディアシ) 近代の書物をめぐる実践 (キンダイノショモツヲメグルジッセン)

社会一般
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発行:人文書院
四六判
縦194mm 横135mm 厚さ35mm
重さ 500g
400ページ
上製
定価 4,500円+税
ISBN
978-4-409-24162-2   COPY
ISBN 13
9784409241622   COPY
ISBN 10h
4-409-24162-1   COPY
ISBN 10
4409241621   COPY
出版者記号
409   COPY
Cコード
C3036  
3:専門 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年2月28日
書店発売日
登録日
2023年12月4日
最終更新日
2024年2月21日
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紹介

社会において「読書」の意味と機能とは何か

明治から昭和戦前まで「読書」は、人々の知の伝達にどのような影響をもたらしたのか。また、読まないが知っているという「潜在的読書」の存在をどう理解するべきか。それは「書物-読む」という特権的な関係性を解除することで可能となる。書物をめぐる様々な行為と、これまで周縁化されてきた読書装置との関係を分析し、書物と人々の歴史に新たな視座を与える力作。

しばしば、ピケティの『21世紀の資本』は、マルクスの『資本論』になぞらえられた。その書名の対応関係だけでなく、二つの書物が資本主義における経済的な格差を取り扱っている点において、結び付られた。しかし、本研究においては、むしろ、『21世紀の資本』と『資本論』の関係は、読む/読まないの間に存在する、読んでいないが知っている、という関係において重要なのである。『21世紀の資本』においても、『資本論』においても、その社会的な影響力は、実際に読んだ人や発行された部数を遥かに超える範囲にまで波及した。こうした点こそが、書物と私たちの日常的な関係を、深く反映していると考えるからである。(「序章」より)

◎目次
序章 問題の所在と本研究の方法

第一部 読書装置の黎明

 第一章 明治民権運動における声と活字と書籍館――集会条例による政治/学術の区分の発生とその間
 第二章 明治後期の巡回文庫と地域組織――図書閲覧所から巡回文庫へ

第二部 読書装置の普及

 第三章 大正期における文庫の遍在――蔵書の多様化する形態と施設
 第四章 大正期における図書館の爆発的増加――簡易図書館と小学校と地域組織

第三部 蔵書なき読書装置の普及

 第五章 大正期におけるパンフレット出版と社会主義知識の大衆的浸透――社会運動における学習会・研究会
 第六章 昭和初期の社会運動と読書会・研究会
 第七章 戦時下の読書運動と読書会
 終 章 読書装置と書物をめぐる実践の構図

目次

序章 問題の所在と本研究の方法
 一 問題の所在
  1 明治三〇年生まれと書物の関わり/2 図書館の歴史の中での位置づけ/
  3 『資本論』の読書史の中での位置づけ/4 現代の中の過去と過去の中の現代  
 二 先行研究の知見
  1 先行研究の方法と知見Ⅰ――図書館史/2 先行研究の方法と知見Ⅱ――読書史  
 三 本研究の視座
 四 本書の構成

第一部 読書装置の黎明

第一章 明治民権運動における声と活字と書籍館
 ――集会条例による政治/学術の区分の発生とその内外領域
 一 書物を読むこと・集めること・語ること
 二 集会条例施行以前の演説
 三 集会条例の施行と「政談/学術」という区分の芽生え
 四 政談演説の回避としての懇親会と学術演説
 五 政談としての新聞解話会
 六 非政治空間としての学校の成立
 七 教育令に依らない教育=文化の場と書籍館
 八 問題化しない存在としての書物

第二章 明治後期の巡回文庫と地域組織――図書閲覧所から巡回文庫へ
 一 書店と書物が遠かった時代
 二 日露戦争期における図書閲覧所と地域社会
  1 地域社会にとっての小学校と教員/2 青年会と書物をめぐる協同行為  
 三 明治四〇年代の巡回文庫と地域組織の再編
  1 巡回文庫導入の経緯と仕組み/2 巡回文庫運営の実際/3 巡回文庫による地域組織の再編
 四 書物と場が交錯する条件

第二部 読書装置の普及

第三章 大正期における文庫の遍在――蔵書の多様化する形態と施設
 一 忘却された文庫の浸透
 二 文庫の遍在を要請する社会的要因
  1 明治末期における非進学小学校卒業者の問題/2 担い手としての青年団と実行としての読書装置  
 三 遍在する文庫の大正期
  1 青年団の常設文庫の設立/2 文庫の数量的把握/3 文庫の生活圏への内進化と多種多様性  
 四 社会的蔵書としての文庫

第四章 大正期における図書館の爆発的増加――簡易図書館と小学校と地域組織
 一 地域に図書館がなかった時代
 二 明治末から大正期の小学校と教員
  1 地域社会における小学校教員の再定位/2 地域社会における小学校の多機能性と再定位  
 三 大正期における簡易図書館の設立と運営
  1 明治末における簡易図書館/2 記念事業と簡易図書館の関係性/
  3 簡易図書館の図面と設置場所/4 地域住民による寄付・寄贈という文化/5 青年団による簡易図書館の運営  
 四 図書館の社会的役割
  1 社会教育的啓蒙の失敗による成功/2 文化としての図書館、不適格な図書館  
 五 図書館の現代へと続く道

第三部 蔵書なき読書装置の普及

第五章 大正期におけるパンフレット出版と社会主義知識の大衆的浸透
 ――社会運動における学習会・研究会
 一 『資本論』は知っている、しかし翻訳はまだない
 二 『新社会』の発禁という困難  
 三 二つの『研究』と「学術研究」という迂回術  
 四 水曜会パンフレットの創刊  
 五 運動の「方向転換」と『資本主義のからくり』の形態のからくり  
 六 「からくり時代」の一九二〇年代  
 七 生まれ変わり続ける『資本論』  

第六章 昭和初期の社会運動と読書会・研究会
 一 社会運動を支えたメディア  
 二 理論闘争の時代における難解さへの批判  
 三 読書会による組織化と組織化された読書会  
 四 『戦旗』の難解さへの批判  
 五 『戦旗』編集部による読者の要望への対応  
 六 読書会・研究会のテキストとしての講座記事・パンフレット・リーフレット  
 七 読書会・研究会におけるテクストの改変――新たな『資本主義のからくり』の誕生  
 八 パンフレット出版の社会的流行  
 九 メディアが可能にした社会運動  

第七章 戦時下の読書運動と読書会
 一 総力戦体制下の書物と人びと    
 二 国策にまとわりつくマルクス主義の亡霊
  1 読書会と結び付くマルクス主義のイメージ/2 大政翼賛会へのマルクス主義批判  
 三 国策としての読書会へと至る道  
  1 図書館の新秩序とその未整備/2 重層的な国家運動としての読書指導/
  3 読書会の全国的展開とその数量的把握  
 四 戦時下の読書会の実際的様態  
  1 県立図書館と地域の読書会/2 指定読書会における戦争の完遂と未完遂/
  3 読書会と読書における自由・自主性と意図せざる効果  
 五 戦前における図書館の到達点としての読書会  

終 章 読書装置と書物をめぐる実践の構図
 一 本研究が設定した課題とそのための方法  
 二 本研究の知見
 三 読書装置と書物をめぐる実践の弁証法  
  1 読書装置の物理性と非物理性が可能にしたもの/
  2 書物をめぐる実践による関係の組み換え  
 四 本研究の意義とメディア史であることの意味  
 五 読書装置を通した現在の歴史化と歴史の現在化  


あとがき
参考文献

著者プロフィール

新藤 雄介  (シンドウ ユウスケ)  (

【著者】新藤 雄介(しんどう・ゆうすけ)
1983年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程満期退学。博士(社会情報学)。現在、福島大学行政政策学類に勤務。専門は、メディア史、社会学。主な論文に、「大衆の読書を手引きする雑誌への挑戦とその苦闘」『復刻版 何を読むべきか 第1巻』(不二出版、2022年)、「戸坂潤『技術の哲学』が囁くメディア史――透明化したメディアを可視化する方法」『メディア史研究』(52号、2022年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。