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〈子どもの社会参画〉を問う環境教育/ESD
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年3月7日
- 書店発売日
- 2026年3月10日
- 登録日
- 2025年11月24日
- 最終更新日
- 2026年3月10日
書評掲載情報
| 2026-06-01 |
日本教育新聞
2026年6月1日付 評者: 吹 |
| 2026-04-13 | 全私学新聞 2026年4月13日付 |
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紹介
小学校教員として多くのESD実践を重ね研究者となった筆者が、「環境教育/ESDは学校での授業に限定して議論するのではなく,地域における子どもと大人の共同的な学びの問題,そして地域づくりの問題としてとらえ直すべきではないか」と立論する。
持続可能な社会を創る環境教育/ESD とは,地域・社会活動への参画を通じて政策提言がなし得る市民の育成を使命とするものという考えから,学校における環境教育/ESDを〈子どもの社会参画〉という観点から再検討する。
目次
第1部 環境教育実践からESD実践へ
第1章 つながり,広がる,サケの学習 ―低学年の教育課程を創る―
第2章 学校ビオトープを基軸とした教育課程づくり
第3章 「つながり意識」を育成する『世界の12歳は,今』の授業
第2部 3.11経験による教育実践の問い直し
第4章 道徳『健一の悩み』の授業を創る
第5章 東日本大震災・水俣病の経験から子どもたちは何を学べたか? ―総合的学習『東北の12歳は,今』『夢は奪われたのか』の実践―
第3部 「小さな共同体」が創るESD実践の研究
第6章 霞ヶ浦流域地域における学校を拠点としたESD実践の考察 ―茨城県牛久市立神谷小学校の授業事例の分析―
第7章 学校での自然体験学習におけるカリキュラム編成の考察 ―北海道厚岸郡浜中町における自然体験学習事業の事例分析―
第8章 「 小さな学校」における拡張的学校づくりの可能性 ―長野県飯田市立上村小学校のESD実践―
第9章 「地域の持続可能性」を主題とした学校と地域の協働的ESDの可能性 ―長野県飯田市「遠山郷ESD推進プロジェクト」の事例―
第4部 持続可能な地域を創るがっこうESDの理論研究
第10章 ESDに向けた環境教育における「参加型学習」概念の検討
第11章 学校ESD実践における「能力育成論」の考察
第12章 学校教育における“ESD for 2030”の展開と課題
前書きなど
はじめに
本書は,筆者が公立学校の教員時代から大学での研究職時代に至るまでに執筆した,環境教育/ESDに関する実践と研究をまとめたものである。なぜ,過去の論考を持ち出して,あえて世に問うことにしたのか。それは,各論考に潜在する問題の重要性が,これまでになく高まっていると考えたからである。そのひとつが,〈子どもの社会参画〉(子どもが,日常生活や地域・社会に関わる課題について意見を表明し,その解決に向けた計画づくりや意思決定のプロセスに参加すること)をめぐる問題である。
日本の学校では,1990年代から環境教育への関心が高まり2000年代の総合的な学習の時間の創設を機に「環境」を主題とする授業が広まっていった。その背景には,文部科学省と国立教育政策研究所が発刊した『環境教育指導資料』の発刊(1991-2017)による政策的支援があったことはいうまでもない。また,2002年の第57回国連総会で採択された国連「持続可能な開発のための教育(ESD)」の10年」(2005-2014年)を機に,ユネスコスクール加盟校がESDに取り組み,従来の環境教育を国際理解,福祉,情報などと関連づけて実践してきた経緯もある。さらに,2015年の国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の採択が原動力になり,17目標の下で環境教育を包括するESD の取組事例が推進されてきたことも周知のとおりである。
この動向と並行して,1994年に日本政府が国連「子どもの権利条約」を批准したこと,2015年に公職選挙法の改正によって18歳選挙権が成立したこと,2022年の子ども基本法によって意見表明と社会参画の機会の確保が規定されたことなど,子どもをめぐる社会環境が大きく変容してきた事実も見過ごすわけにはいかない。つまり,あらゆる教育/学習の過程で,子どもを保護され支援される存在から,地域・社会を創る主体的な存在として認める時代に入ったのである。
これら環境教育/ESDの発展と子どもの権利保障の広がりは,私たちに1977年のトビリシ宣言(ユネスコ政府間環境教育会議)における環境教育の目標を,あらためて思い起こさせる。そこには,Awareness(気づき),Knowledge(知識),態度(Attitudes),Skills(技能)とともに,“Participation”(参加)”という目標が掲げられ,環境問題の解決への参加能力を求める議論が確かにあったのである。それが2023年のESD for 2030における「行動学習:個人的・社会的・政治的領域での持続可能な変革のための実践的な行動」にまで継承されているとすれば,先の動向と併せて,学校における環境教育/ESDを〈子どもの社会参画〉という観点から再検討する必然性が強まったとみてよいだろう。つまり環境教育/ESDは,学校での授業に限定して議論するのではなく,地域における子どもと大人の共同的な学びの問題,そして地域づくりの問題としてとらえ直すべきではないか。持続可能な社会を創る環境教育/ESDとは,地域・社会活動への参画を通じて政策提言がなし得る市民の育成を使命とするものと考えるからである。
本書に収めた実践と研究は,〈子どもの社会参画〉の理念や方法を雄弁に語っているわけでなく,具体的なビジョンやモデルを提示できているわけでもない。環境教育と開発教育の理念的・実践的統合を目論みつつ,その可能性と課題に関する議論を宙吊りにした論考ばかりにみえるかもしれない。読者には,このような筆者の力量のなさを補いつつ,本書で紹介された実践と研究を批判的に検討して,ぜひ次世代の環境教育/ESDの可能性について考えていただきたい。
あとがき
本書に紹介した取組は,2025年現在でどのように変化したのだろうか。
第1章の後日談として子どもの提案で保全された谷田の泉や,第2章で造成した学校ビオトープは現在でも残されて,市民や子どもたちに親しまれているはずである。第8章の飯田市立上村小学校は,約20名前後の子どもたちが在籍し,先進的な教育実践に取り組む小規模特認校として評価がますます高まっている。
しかし残念なことに,第7章の浜中町では2010年当時に計16校あった小中学校が計7校に再編され,廃校となった学校の自然体験学習もいっしょに消えてしまった。第6章で紹介した神谷小学校の子どもたちが再生した谷津田ビオトープは,メガソーラ建設の対象地となり,その存続が危ぶまれている。さらに視野を広げれば,第4・5章の授業の背景にあった原子力発電所の爆発による放射能汚染の問題,放射性廃棄物の処理問題に関する解決への道はいまだに遠いばかりか,政府が原発の「再稼働の加速」まで表明する時代となった。この間,学習指導要領の前文に「持続可能な社会の創り手」育成が謳われているにもかかわらず,その理念に逆行する政策ばかり推進されてきた感がある。本書の趣旨〈子どもの社会参画〉を踏まえれば,近年の学校をとりまく社会は,「子どもの声をどこまで聞いているのか?」「本当に教育はよくなったのか?」という強い憤りを覚える。
したがって,本書で紹介した各地域の事例(授業・事業)を古びた過去の取組として理解するのではなく,持続可能な地域社会を創り出そうとした貴重な記録として評価していただきたい。筆者には,その価値を十分に伝えるだけの力量が不足していたかもしれないが,その批判は未来の研究者と実践者に委ねるとして,ひとまずこの論文集の筆を置くことにしたい。
※本書は,日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究(C)「人口減少地域におけるESD促進のための学校版社会的インパクト評価の開発」(2023-2025)の成果の一部である。
版元から一言
持続可能な未来を創るために,子どもたちの社会参画を問い直す環境教育と,ESDの実践と理論を深く掘り下げ,次代につなぐ好著。
上記内容は本書刊行時のものです。
