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被災物    モノ語りは増殖する 姜信子(著) - かたばみ書房
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被災物 モノ語りは増殖する (ヒサイブツ モノガタリハゾウショクスル)

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四六判
縦188mm 横128mm 厚さ165mm
重さ 340g
256ページ
並製
定価 3,500円+税
ISBN
978-4-910904-02-3   COPY
ISBN 13
9784910904023   COPY
ISBN 10h
4-910904-02-6   COPY
ISBN 10
4910904026   COPY
出版者記号
910904   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年2月28日
書店発売日
登録日
2024年1月4日
最終更新日
2024年7月8日
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書評掲載情報

2024-06-30 河北新報
評者: 松村由利子
2024-06-08 美術手帖  7月号
2024-05-22 福井新聞  
評者: 松村由利子
2024-05-10 週刊金曜日  5月10日号
評者: 五所純子
2024-05-05 新潟日報
評者: 松村由利子
2024-05-04 長崎新聞
評者: 松村由利子
2024-04-20 西日本新聞  
評者: 木村友祐
2024-04-06 すばる    5月号
評者: 辻山良雄
2024-04-06 京都新聞  
評者: 浦田千紘
2024-04-05 ふぇみん  3381号
評者: 姜信子インタビュー
2024-03-28 AERA  4月1日号  この人のこの本
評者: 姜信子(著者インタビュー)
2024-03-26 朝日新聞    朝刊  折々のことば
評者: 鷲田清一
2024-03-25 朝日新聞    朝刊  折々のことば
評者: 鷲田清一
2024-03-17 NHKラジオ第一「ラジオ深夜便」
評者: 辻山良雄
2024-03-12 熊本日日新聞  朝刊
評者: 姜信子(寄稿)
2024-03-10 北海道新聞  朝刊  日曜版
2024-03-10 読売新聞  朝刊
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重版情報

2刷 出来予定日: 2024-07-30
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全国各地で、静かに確実に動いています。

紹介

気仙沼のリアス・アーク美術館には、東日本大震災の「被災物」が展示されている。
2019年、この展示に出会った姜信子は、「被災物」に応答すべく、
大阪で「被災物」をモノ語るワークショップを始めた。
傷ついたモノを前に、人は思わず記憶の底の声を語りだす。
モノに宿された記憶は、語りなおしを通して、命をつなぐ。
路傍の地蔵や道祖神の謂れのように。

亡き娘のぬいぐるみ、携帯電話の声、山の供養塔、寄り物と漁師の思想、
第五福竜丸事件、東京電力福島第一原発事故による汚染処理水の海洋投棄……

本書は、「復興」の物語からはみだす、小さな〈モノ語り〉の記録であり、
他者の記憶の継承という問いに対する、真摯な応答の記録である。
当事者/非当事者の境界を越えて、命の記憶を語りつぐために。
カラー32頁。志賀理江子の撮り下ろし新作未発表写真16頁を付す。

目次

Ⅰ 終わりと始まり

「被災物に応答せよ」「第三者による記憶の継承」という問い  姜信子

モノ語り集Ⅰ
  祠/郵便受け/漁船/シュガーポット

記憶の器としての被災物  山内宏泰


Ⅱ 「モノ」語りは増殖する

「被災物」は記憶を解き放つ  記憶のケアとしての「モノ語り」  姜信子

モノ語り集Ⅱ
  ぬいぐるみ/トランペット/電柱/足踏みミシン/ドラム缶/携帯電話
  呼び鈴/トタン板/床板/児童文学全集/椅子/洗濯機/香炉/受話器 

座談会1 これは、きっと、新しい神話の増殖が始まっているんだ
      「被災物ワークショップ」参加者

Ⅲ 氾物語-躊躇なく触る
リアス・アーク美術館に眠るもの
案内する人 山内宏泰
写真 志賀理江子

土の時間、水の時間  東琢磨

Ⅳ 恵比寿の到来

ナニカが海からやってくる  姜信子

えべっさま、ようきてくれましたな  武地秀実

目覚めよ、ヒルコ  岡本マサヒロ

座談会2 気仙沼リアス・アーク美術館「被災物」の企み
     山内明美×山内宏泰×ワークショップ参加者×姜信子

Ⅴ 新しい祭りへ

南三陸集会+気仙沼への旅 姜信子

エビスが語りて命をつなぐ 川島秀一

前書きなど

「被災物に応答せよ」 

「記録自体が伝えるのではなく、伝えるために記録をとる」
 「リアス・アーク美術館常設展示図録 東日本大震災の記録と津波の災害史」より


かなり驚いたんです。友人の山内明美に連れられて、2019年冬に初めて気仙沼のリアス・アーク美術館を訪れて。
地階のフロアに「被災物」が所狭しと展示されている。これ、一般的には地震や津波による瓦礫と呼ばれているものです。震災直後から二年間にわたって拾い集められてきた。そのほとんどが人々の日常の暮らしの中にあったモノで、その一点一点に、それにまつわる記憶が記されたハガキが添えられている。たとえば、「携帯電話」だったら、こんなふうに。

2012.4.10 南三陸町志津川平磯(収集年月日日と場所)    
地震の後でね、携帯がたまたまつながったのね。それで、すごかったねぇなんて話してたの。そしたら、アッ!津波来た!って言って、電話切れたのね……それっきりになってしまったの……電話で話なんかしてないで、すぐに逃げればよかったんだよね・・・

もちろん、拾ってきた被災物の元の所有者はわからないわけです。
とすれば、それは、いったい、誰の記憶? 
実を言えば、その記憶のすべてを山内宏泰館長が書いているんです。つまり、フィクション。いや、でも、フィクションと言いきれるのか。自身も被災者である学芸員たちが、収集時に収集現場で被災物を前にしてイメージしたことを「被災資料」に書きこんで、それをみなで共有し、最終的に館長がひとつひとつの被災物に宿る記憶の「モノ語り」として書きおこしていったのだというんですから。
いま、私は「物語」ではなく、「モノ語り」と言いましたが、リアス・アーク美術館で「被災物」に囲まれれば、それが単なる瓦礫でも、残骸でも、ましてやゴミなどではないことは、ありありとわかる。「被災物」は「モノ」なんですよ。人々と暮らしを共にし、人々と共に大地震と津波を経験し、人々と記憶を分かち合い、人々と共に生きてきた記憶を孕み、人々と共に生きてゆく祈りを宿す、そのような意味において、魂ある「モノ」なんです。気配をたたえた「モノ」なんです。もしかしたら、すでにモノノケ化している「モノ」かもしれない。見事にそのように展示が企まれていることに、驚いたんです。
何も知らずにリアス・アーク美術館の地階に降りていくでしょう、被災物に囲まれるでしょう、おおっと圧倒されるでしょう、そのとき、ふっと、路傍の名もなき石仏、道祖神、地蔵、観音、大石小石、風土の無数の小さな神々に囲まれているような心持になるんですよ。日常の暮しの中にあった頃の気配を残す被災物/モノたちは、まだまだ生々しい気配を残して、声にならぬ声をあげているようでもあり、それを聴き取るようして添えられた「思い出/モノ語り」は、名もなき神々の謂れをそれぞれにさまざまにそっと語りかけているようでもあり、それはつまり、名もなき民の記憶の声。
ああ、こうして「モノ語り」は生まれ、人々は生きてきた記憶を語りついできたのだろう。公の記録にも、立派な社に鎮座する神々の系譜からも弾き出されているような、風土に生きる「モノ=者=物」たちの記憶。 なるほど、私は、「モノ語り」のはじまりの光景に出会ったのだな。リアス・アーク美術館「被災物」展示では、そんなこともつくづくと思ったのでした。
 
問題はここからです。
 「被災物」の「モノ語り」は、すべて、ハガキに記されている。そこには宛名は書かれてないけれど、それは明確に「モノ語り」を読む者ひとりひとりに宛てられている。
 それを読んで、受け取ってしまったなら、応答しないわけにはいかない。
 ええ、応答いたしましょう。
できることなら、「被災物/モノ」たちはああやって語りだしているのだから、たくさんの人々に声をかけて、「被災物/モノ」の前に立ってもらって、どんどん応答するようにしましょう。
気仙沼は遠い。いま私が暮らす関西から応答の試みを立ち上げるとするならば、「被災物/モノ」の画像と「モノ語り」の文章をリアス・アーク美術館から提供していただいて、応答の「場」を開きましょう。
あの「モノ語り」は、きっと文字で読んだらあの土地の声で語ってもらわねばならないはず、ならば気仙沼の人(リアス・アーク美術館館長)、南三陸の人(山内明美)にお願いして読んでもらいましょう。
というぐあいに、思いつくままに応答のための準備を重ねていって、ついには趣旨賛同の仲間たちとともに「被災物ワークショップ」なる試みの「場」を大阪で開くに至ったのでありますが、さて、困った。
応答って、どうやってする? 
 被災者ならぬ私たちは、応答の声を発するどころか、むしろ被災物のモノ語りに声を失って、被災物の向こう側にいる被災者を思い描くほどに、アーウーと唸りながら、無難で相手を傷つけることのない、押しつけがましさも感じさせない労わりや励ましの言葉をついつい探す自分をまずは発見するんですね。でも、ちがう、ちがう、これじゃない。
送られた「モノ語り」を自らの声で語ってみたり、歌ってしてみたりする者もいました。そうやって自分の中に「モノ語り」を響かせてみる、心が震える、試行錯誤の「場」を重ねる、「被災物/モノ」の「モノ語り」がどんどん心に打ち込まれてくる、ますます震える心は突き動かされるようにして、自分自身の「モノ語り」を語りだす。目の前の「被災物/モノ」の写真をじっと見つめながらも、被災地を遠く離れた自分の「モノ語り」をこんなふうに語りだしてもいいのだろうか、これが応答になるのだろうか、自問しながらおずおずと。

 応答、というここで言うとき、そこには「記憶の継承」という意味合いもあります。当事者から非当事者への。なのに、自分の「モノ語り」を語りだすって、おかしくないか? そう思いつつも、なかには、自身の中から湧きおこる「モノ語り」が止まらなくなってしまった者もいました。
 応答、どうする? 
継承、これでいいのか?
 渦巻く問いと共に、応答の「場」で語りだされた「モノ語り」のうち、まずは4編をここで紹介いたしましょう。 

著者プロフィール

姜信子  (キョウノブコ)  (

作家。1961年横浜生まれ。著者に、『棄郷ノート』、『声 千年先に届くほどに』、『現代説経集』、『はじまれ、ふたたび』、『語りと祈り』、『忘却の野に春を想う』(山内明美との共著)など多数。訳書に、李清俊『あなたたちの天国』、ホ・ヨンソン『海女たち』(共訳)、キム・ソヨン『数学者の朝』、『奥歯を噛みしめる』(監訳)、編書に『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』などがある。

山内宏泰  (ヤマウチヒロヤス)  (著/文

リアス・アーク美術館館長。美術家。1971年宮城県石巻市生まれ。常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」を企画担当する。気仙沼市東日本大震災伝承検討会議委員、同遺構検討会議委員および遺構施設展示アドバイザー。気仙沼市復興祈念公園施設検討委員。2004年宮城県芸術選奨新人賞受賞(美術・彫刻)、2017年棚橋賞受賞(日本博物館協会)。

志賀理江子  (シガリエコ)  (写真

写真家。1980年愛知県生まれ。2007年、写真集『 Lilly』と『CANARY』で第33回木村伊兵衛写真賞を受賞。2008年より宮城県に移り住む。近年の展覧会に、「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク)、「ブラインドデート」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)、「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館)、「さばかれえぬ私へ」(東京都現代美術館、Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023受賞記念展)などがある。

川島秀一  (カワシマシュウイチ)  (著/文

1952年宮城県気仙沼市生まれ。東北大学教授を退職した2018年、福島県新地町に移り住み、漁師に弟子入りする。著書に、『ザシキワラシの見えるときー東北の神霊と語り』、『漁撈伝承』、『カツオ漁』、『津波のまちに生きて』、『海と生きる作法 漁師から学ぶ災害観』、『春を待つ海 福島の震災前後の漁業民俗』などがある。

山内明美  (ヤマウチアケミ)  (著/文

1976年宮城県南三陸町生まれ。宮城教育大学教育学部准教授。専門は歴史社会学、社会思想史。日本の東北地方と旧植民地地域をフィールドに、稲作とナショナリズムをテーマとする文化的政治を研究している。著書に『こども東北学』、共著に『「辺境」からはじまる 東京/東北論』、『ひとびとの精神史 第3巻 六〇年安保 1960年前後』、『忘却の野に春を想う』(姜信子との共著)などがある。

東琢磨  (ヒガシタクマ)  (著/文

評論家。1964年広島県生まれ。ヒロシマ平和映画祭実行委員、山形ドキュメンタリー映画祭審査員、大学講師などを歴任。著書に、『全─世界音楽論』、『違和感受装置』、『ラテン・ミュージックという「力」』、『広島独立論』、『ヒロシマ・ノワール』、『忘却の記憶 広島』(共著)『ホロコーストとヒロシマ』(共著)など多数。

被災物ワークショップ参加者  (著/文

岡本マサヒロ、太田てじょん、大谷眞砂子、座主果林、社納葉子、武地秀実、畑章夫、伴戸千雅子、平井梨絵、深田純子、桝郷春美、渡部八太夫、滝沢厚子、横江邦彦、足立須香

上記内容は本書刊行時のものです。