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禁原発と成長戦略
禁原発の原理から禁原発推進法まで
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年5月
- 書店発売日
- 2013年5月1日
- 登録日
- 2013年4月25日
- 最終更新日
- 2013年4月25日
紹介
原発は工学的にみても、市場経済の観点からみても、使用不能。だからこそ速やかに原発ゼロを実現しなければ、日本に真の再生はない。日米の大学で材料強度を学び、国会議員で京都大学物理工学科卒業の著者が原発をゼロにするために考えたのが、法律でその利用を禁止すること。禁原発の原理とともに、その法案の具体的な理念、意図を提示し、原発ゼロ実現までの道のりを示した画期的な脱原発論。
目次
はじめに
第1章 禁原発7つの原理――なぜ速やかに原発をとめなければならないのか
原理1 核燃料を鉄で包むことは不可能
五重の壁ではなく五つの気休めにすぎない
戦争やリーマンショックと同じ構造
原理2 被害が大き過ぎる
損害賠償額は610兆円という試算
メルケル首相と安倍総理の違い
政局に左右されない脱原発は禁原発
補足1-1 原子力利権は強固な壁
原理3 人のミスはなくせない
人の教育も安全神話そのもの
絶対の安全以外は極めて危険
原理4 壊れたら近づけない
壊れていくのを直しながら使うのがプラント管理
原発は壊れたら直せなくなる
原理5 設置場所がない
調べてもわからない
禁原発こそが最善の防災対策
原理6 自動車とは違う
福島の原発事故を乗り越えてでも安全を求めるのか
世界で430基は試作段階
原理7 テロの兵器になりうる
スリーマイル事故は操作ミスか破壊活動か不明
原発54基がすべて攻撃の対象になる
第2章 誤解への14の反論――原発・放射能をめぐるウソに答える
誤解1 電気が足りないから原発が必要だ
反論1 原発の発電能力は日本全体の発電能力の約15%にすぎません
休んでいる電源を動かせば速やかに原発ゼロが可能です
いますぐ原発ゼロで需給を満たせます
停電が起こらないことは2012年夏に実証されています
「計画停電」の恐怖が原発必要論を生み出しました
計画停電で国民を脅して再稼働したことを忘れてはなりません
自分の計画を自分で不可能だと断じた政府の節電計画
再稼働を正当化するずさんな政府予測
政府による居直りの理屈を許してはなりません
誤解2 原発のおかげで電気代が安い
反論2 原発コストは「8・9円~」の「~」で不当に安く偽造されています
原発コストの間違いで国民は大損をしています
政府は建設費も事故リスクも極端に安く見積もっています
実は原発コストは火力よりもはるかに高い
誤解3 原油が高くなるから原発を続けるべきだ
反論3 燃料代が上がっても原発は火力よりも高くつきます
原発は燃料費以外の部分が高いのです
原油は火力のごく一部に過ぎません
そもそも燃料代が上がっても原発の利用を考えてはなりません
誤解4 安全保障のために原発が必要だ
反論4 核兵器5000発~1万発をつくれるプルトニウムをすでに保有しています
自民党は「安全保障に資する目的」を原子力基本法に書き込みました
この重大問題を与党内で議論したのはたったの1日でした
潜在的な核兵器保有国の発想を捨て去るべきです
誤解5 CO2を出さないためにも原発が必要だ
反論5 原発を利用しないこと、CO2の排出を抑制することは両立します
原発ゼロで増加するCO2は全体の1割に過ぎません
原発ゼロで増えるCO2は発電以外の分野で取り戻す
京都議定書の第一期間約束は実現する見込みです
誤解6 日本海側は津波がないから大丈夫だろう
反論6 地震でも原発は壊れます
総延長で120キロメートルもの配管をすべてチェックするのは不可能
誤解7 低線量は逆に体によい
反論7 根拠のない俗説です
健康リスクの基準値などありません
ガレキの広域処理は子どもの体内被ばくのリスクを高めます
被災地元とは誰を指すのか
被災地沿岸部のガレキにも原発事故由来の放射能が付着しています
誤解8 沸騰水型は危ないが加圧水型なら安全だ
反論8 高温・高圧で運転する加圧水型のほうが危ないです
「加圧水型が安全だ」についてなんの議論もないのが問題です
トリウム溶融塩炉がなぜ安全なのか理解できません
中性子をぶつけて放射能を減らす技術も理解できません
誤解9 核燃料サイクルはいずれ完成する
反論9 処分する技術がないのに、核燃料サイクルの技術は完成しません
再処理工程で発生する事故の対策がありません
「いまさらやめられない」という理屈
着実に3・11以前の原子力推進政策に戻りつつあります
とにかく放射性廃棄物の生産をとめるのが先です
誤解10 廃炉技術のためにも原発を続けなければならない
反論10 発電技術と廃炉技術はまったく異なるものです
原発のバックエンドは人類史を超えた事業
誤解11 他国の原発事故に備えて日本の原発を続けるべきだ
反論11 必要なのは発電ではなく検出と予測の技術です
誤解12 原発をやめたら日本の経済が破綻する
反論12 禁原発こそが脱デフレの成長戦略です
ドイツでは原子力廃止措置で雇用が増えています
原発を存続させれば、日本経済は衰退します
科学者・技術者は放射能の制御よりも新エネルギー革命に燃えるはずです
禁原発は日本が世界に誇る成長戦略そのものです
誤解13 原発をやめたら電力会社が破綻する
反論13 原発を続けるほうが倒産リスクが高くなります
原発施設を国有化して廃炉にすべきです
原子力清算事業団(仮称)で電気事業者から負債を移し替える
積立金、拠出金、引当金の5兆円を原資と考えます
原発をやめるための新税が必要です
諸外国では国営での最終処分が一般的です
誤解14 原発をやめたら立地自治体の経済が破綻する
反論14 交付金を続ければ破綻しません
国民1人あたり年間800円の負担で立地自治体を守ります
国民1人あたり年間1493円でいますぐ原発はゼロになります
第3章 「禁原発推進法案」の逐条解説
第一条 原発の禁止について
第二条 禁原発に関する用語について
第二条第三号 船舶に設置する原子炉を除く意味
第二条第四号 「核」の文字を入れる理由
第二条第六号 廃止するのは原子炉だけではない
第二条第十一号~十三号 再生可能エネルギー以外も重視する
第三条 推進法の4つの理念
第四条 立地地元と住民の意見
第五条 廃炉の前に国への譲渡し
第六条 高速増殖炉の開発禁止について
第七条第一項 地層処分の禁止について
第七条第二項 プルトニウムの扱いについて
第八条 禁原発の財源について
第九条 エネルギー需給の安定について
第十条 立地地元の激変緩和について
第十一条第一項 被害地元への情報提供について
第十一条第二項 経済予測等について
第十二条 地域情報委員会設置の義務化に向けて
第十三条 内閣総理大臣が本部長に
第十四条から第二十四条 推進本部の組織と時限
附則第二号
補足3-1 運用の細部を見なければ法律はつくれない
補足3-2 高速増殖炉の中止
補足3-3 埋めて忘れる地層処分は未来に対して無責任
補足3-4 管理型直接処分の発想
補足3-5 廃炉にかかる費用の見積もり
補足3-6 禁原発を実現するための特別会計について
補足3-7 SPEEDIをなぜ避難に使わなかったのか
補足3-8 市場原理でも原発はすでに終わっている
第4章 「禁原発推進法案」全文
第5章 「原子力廃止基本法案」「原子力廃止委員会設置法案」逐条解説
本章で提案する個別法改正私案について
原子力廃止基本法案について
原子力廃止委員会設置法案について
補足5-1 安全庁が規制委員会になった理由
補足5-2 原子力廃止庁の構想
第6章 「原子力廃止基本法案」「原子力廃止委員会設置法案」新旧対照表
原子力廃止基本法案/原子力基本法 新旧対照表
原子力廃止委員会設置法案/原子力規制委員会設置法 新旧対照表
付録
おわりに
前書きなど
はじめに
2700℃まで熱くなる核燃料を1500℃で溶ける鉄の鍋釜で包むこと自体が、そもそも不可能である――。材料強度を学んだ者として、私は20代の頃から約30年にわたり、「原発は絶対に安全にならない」「だから使ってはならない」と主張してきました。
2009年9月の政権交代で民主党の国会議員となって以降も、私は一貫して原発に反対の立場を貫いてきました。しかし、3・11の原子力災害を体験しながら、それでもなお、「豊かで人間らしい生活のために原発が必要だ」とする野田佳彦総理の判断で大飯原発が再稼働し、私は民主党を離党しました。想像を絶する放射能災害、理不尽な東京電力への国民負担、強大な原子力利権の構造を目の当たりにして、私は脱原発に身を尽くすことを決意したのです。そして、2012年12月の第46回衆議院総選挙で、みんなの党から立候補、「禁原発」を主張し、しかし落選しました。
速やかな脱原発を実現するため、法律で原発の利用を禁止する禁原発が必要だと主張して闘いましたが、その声を十分に有権者に届けることはできませんでした。政権を取り戻した自民党は、「40年前の原発と新設する原発は全然違う」「原発ゼロをゼロベースで見直す」という安倍総理の考えに基づいて、3・11以前の原発推進政策に戻ろうとしています。このまま、なし崩しで原発の再稼働と新増設を許してはならない、その一心で本書を書きました。
私が総選挙で有権者に問うた禁原発は、倫理観や道徳観に基づく理念的な主張ではありません。工学的に見ても、市場経済の観点から見ても、原発が使用不能だということを証明した科学的な主張です。使用不能ですから、10年後、20年後の脱原発ではなく、速やかな原発ゼロを主張しています。また、禁原発こそが、日本が世界に誇る成長戦略だと主張しています。ドイツは2022年までの猶予期間を設けて原発ゼロに向かっていますが、日本は禁原発でただちに原発ゼロとし、これまでの大規模発電・大規模送電を改め、節電・省エネ・再エネに取り組む市民社会と協働して地域密着型の新エネルギー革命を先導するものとして構想しています。
本書では、以上の構想をもとに、私が議員在職中に検討していた禁原発推進法(私案)を紹介します。禁原発推進法は、速やかな原発ゼロを実現するための手続法ですので、原発の利用禁止に加えて、原発利権の温床である特別会計及び独立行政法人などの整理、核燃料サイクルの禁止と最終処分の国営化、原子炉等関連施設の国への譲渡による電気事業者の債務切り離し、原発立地自治体への交付金継続と雇用対策、エネルギー転換への予算拡大と成長戦略の策定、住民に対する廃炉プロセスの情報公開を国に義務づける地域情報委員会制度など、速やかな脱原発を実現するために必要な諸施策を盛り込んでいます。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。