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そして、バトンは渡された

とても大好きな瀬尾まいこさんの小説ですが、今日はその話ではありません。
山崎貴監督「ゴジラ−1,0」が邦画で初めて米国アカデミー賞の視覚効果賞を受賞しました。

私は前職で映画制作をしていたのですが、運よく山崎貴さんの初監督作品「ジュブナイル」のプロデューサー陣に名を連ねていました。出資各社が山崎貴さんという才能を世に送り出そうと集まり、初監督作品としては異例の3億5000万円もの製作費となりました。あれから24年、山崎貴監督はVFXの第一人者となり、ついに世界で評価されるところまで登り詰めたわけです。
私が2000年に設立したIMJエンタテインメント(現C&Iエンタテインメント)も、2021年濱口竜介監督によって、村上春樹の短編小説『ドライブ・マイ・カー』を映画化し、第74回カンヌ国際映画賞で日本映画初となる脚本賞を含む3部門を受賞し、第94回アカデミー賞で作品賞・脚色賞を含む4部門でノミネートされ、国際長編映画賞を受賞しました。私自身は2009年に経営を退きましたが、その後を引き継いでくれた社長が良質の作品作りと興行的成功という経営バランスをうまく舵取りし、この栄誉に結びつけてくれました。設立から21年目の快挙です。
私にとって、何かの誕生に立ち会い、年月が経ち、その芽が大きく成長し、花開く瞬間を見ることはこの上ない喜びです。
さて、コロナ禍で設立した我がベンチャー出版社CAPエンタテインメント。
まだ設立3年経ったばかりのヨチヨチ歩きで9作品を出版しただけですが、日々成長の喜びと未来に対する希望を感じています。
世間には「著名な書き手」がたくさんいらっしゃいますが、私が執筆をお願いしているのは、ほとんど「初めて」の方ばかり。
日本において「自著がある」ステイタスはまだまだ有効で、何をするにも発射台が高くなるので、「初めての執筆」は特に喜んでもらえます。
そうして出会った著者が、その後書き手としてメジャーになったり、所属する会社で出世したり、メディアで引っ張りだこになる姿を見ると、自分のことのように嬉しくなります。
私が名プロデューサーと評価していた島田紳助氏(残念ながら暴力団との付き合いが問題になり芸能界を引退しましたが)が、残した言葉にこんなのがあります。
「人の成長変化度を予測するのは不可能に近い。大化けしても、期待値を外してもキャスティングした側の責任である。
ただひとつ言えるのは、やらせてみなければ奇跡は起こらないし、孝行息子も出てこないのは確かだ。
そして、その機会に乗っかれるか、つかめるかはキャスティングされる側のセンスが問われる。断る理由は山ほどあるのだから」

英国の宗教詩人による詩の一小節の
「天空に大きな円を描きなさい。その円はあなたの代で 完成することはできないかもしれない。でもあなたはその円の弧になることができる」も大好きです。

業界では、出版不況とか紙は無くなるとか将来を不安視する声は大きいですが、
人の心を動かすコンテンツは永久に必要とされるはずです。
もちろん読者(ユーザー)への届け方は紙ではなくなるかもしれません。
私の会社の電子書籍の売上比率は倍々ゲームで伸びており、売上比率の10%まで成長してきました。
販促費も従来のマス広告は一切やらず、ひたすらSNS広告のみという実験を続ける毎日です。

20年後にCAPエンタテインメントがどうなっているか、まったく想像できませんが、おそらく私は第一線を退いて、誰かにバトンを渡し、その成長を見守り続けていると思います。
そして、今出逢っている著者の皆さんがどう変わっているかも楽しみで仕方ありません。勝手な想像をするだけで何杯も美味しいお酒が飲めそうです。
「過去が咲いている今、未来の蕾でいっぱいです」
そんな出版社・コンテンツサプライヤーでありたいと思っています。

CAPエンタテインメントの本の一覧

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