来年で創業10年。ちょっとわかりにくいアルファベータブックスの歴史を紹介
こんにちは。株式会社アルファベータブックスの代表をしている春日俊一と申します。
今や、版元ドットコムさんの会員出版社は524社(2023年9月7日現在)を超えるとのこと。
さすがにこれだけたくさんの出版社の方々のなかには、アルファベータブックスのことをご存じない方も結構多いのではと思いますので、自社紹介と私の自己紹介も兼ねて、アルファベータブックスの若干ややこしい成り立ちとその短い歴史を説明させていただきたいと思います。
普段私は「note」というメディアプラットフォームで「飯田橋の小さな出版社の社長です。」という記事コンテンツを作り、そこによく独り言のような駄文を投稿しているのですが、今回は、版元ドットコムに加入する524社もの出版社に所属する多くの出版人に読まれると思うと、下手なことを書いて反感を買わないか、つまらねえ版元日誌を長々と書きやがって、とバカにされないか、出版人は文章が巧みで頭の良い人が多いので怖いなあ、などと出版業界には珍しく、低学歴の実質高卒(正確にはロック・ポピュラー音楽系の専門学校中退)の学歴コンプレックスまる出しの私は、一人ウジウジと思い悩むうちに、この版元日誌の締切り前日を迎えてしまったので、今、無理やりパソコンに向かって書き綴っておる次第です。
アルファベータブックスは2014年10月17日に創業しました。来年で創業10周年を迎えます。スタッフは今現在、代表の私と社員1名だけでアルバイトスタッフもいない二人出版社です。まだ創業してから10年にも満たない出版社ですが、代表者は私で3代目になります。短い会社の歴史の中で、紆余曲折、想定外の困難など多々ありましたが、気が付けば、なんとか10周年が見えてきました。
アルファベータブックスのホームページの「自社紹介」にも書いておりますが、アルファベータブックスの創業は、今現在、多くの大手出版社で1万部を超えるヒット作を出すほどになった、作家であり編集者の中川右介氏が経営していた一人出版社の「株式会社アルファベータ」より出版業務を引き継ぎ、新たな経営陣により、新会社、「株式会社アルファベータブックス」として設立されたのが始まりです。
小社の前身となるこの中川右介氏がかつて経営していた出版社のアルファベータは、主にクラシック音楽や映画評論、ライカなどのカメラ関連、写真集などの、芸術関連のジャンルを中心に出していた出版社でしたが、このアルファベータブックスになってからも、かつてアルファベータ時代に本を出したことのある作家さんから次の企画を提案していただくことや、中川右介氏から新しい企画を提案していただくこともあり、これらの芸術書のジャンルの新刊は、今も引き続き出し続けておりますが、アルファベータブックスになってからは、これらに加えて新たに、私や、社員の結城の関係の作家さんたちと企画した新刊、ロックミュージックや演劇関連、現代音楽に現代美術、思想関連、絶版となっていた良書の新版としての復刊、中国IT関連、ドイツ史などの歴史関係やノンフィクション、そして歴史小説と、新たに他のジャンルにも次々と挑戦しております。そしてさらに、これらのジャンルに加えて、アルファベータブックスになってから、今では一番刊行点数も多く、弊社の一つの得意ジャンル、大きな柱となった鉄道書も多く出すようになり、現在に至ります。いわゆるマニア心をくすぐる本を得意とする出版社に、気が付けばなっていました。
狙ってこうなったかというと、正直そこまで狙ってそうなったわけではないのですが、私自身が、物心がついたころから、わりとマニア気質というか、いろんなものにのめり込むたちで、小学生のころは、天体関係や考古学、軍事関連、中学・高校からはロックギターと作詞作曲と歌にはまり、高校卒業後はろくにたいた才能も無いくせにシンガーソングライターを目指して都内各所のライブハウスで歌ったりしていました。そのころはいわゆるフリーターをしながらシンガーソングライターを目指す日々でしたが、そのころに出会った書店のアルバイトが、本の世界に本格的に仕事として入っていくきっかけでした。
この書店での初めてのアルバイトが、すごく自分にしっくりきた気がして、やっと自分の本当の居場所を見つけたと、そんな心境だったことを覚えています。その書店の空間も、そこで働く人たちとも、フリーターをしていたころは、工事現場から新幹線の売り子、コンサートスタッフにライブハウスの店員、カラオケバーのウェイターなどなど、ありとあらゆる仕事をしましたが、そのなかでも書店の仕事は、本当に初めて自然に溶け込めて打ち込めた仕事でした。そのあと二つめに働いた書店で、アルバイトから正社員に登用してもらい、本格的に書店員の仕事をするようになり、結果的に三つの会社の4店舗の書店で合計7年働きましたが、一時、書店の仕事に対して精神的、経済的な行き詰まりを感じてIT業界に転職するも、機械相手の仕事が自分には向いていないことにすぐに気付き、数か月で挫折して逃げるように退職。「やはり自分は本の仕事が向いている」とあらためて思い直し、以前、某出版社で編集者をしていた姉に口を聞いてもらって、その出版社の営業部に入れさせてもらうことができました。
それから15年、その出版社の営業部で働き、ときには本も作らせてもらいながら充実した15年でしたが、最後はいろいろあってそこも辞めてしまい、自分の力で独立を目指してフリーで出版関係の仕事をしていたところ、このアルファベータブックスの初代社長が脳梗塞で倒れ、人手が急遽足りなくなったことを機に、たまたまそのときアルファベータブックスには、前に働いていた出版社の元上司がいたことから、その元上司から私に声が急遽かかり、アルファベータブックスに中途入社しました。
そしてその2年後、今から5年ちょっと前に、私はアルファベータブックスの全株式を買い取って事業承継をし、はれてアルファベータブックスの代表取締役になったわけです(ただ、会社の全株式を買い取るために必要な資金を銀行から借りて莫大な借金をしてしまいましたので、まさに資金的にはマイナスからの厳しい船出ではありましたが……)。
はれて経営者になった私は、猛烈に、それこそ毎日朝から夜中まで働き続けましたが、私の能力不足、経営や資金繰りの経験の無さ、前職が15年間営業部だったので、作家の人脈も少なく、編集の経験も少ないので、最初の2年は、自分の足らない能力を成長させるための苦難と失敗の連続でもありましたが、経営者3年目からは、今度はいきなり歴史に残る世界的なパンデミック、それに伴う書店のいっせい休業による売上急減、その後、コロナ禍も完全に終わる前に、ウクライナ戦争に端を発した原価高騰、円安、書店の閉店は増え続け、名だたる大型書店や有名店も次々と閉店をするしまつ。そして10月からはインボイス制度が導入、とますます大きなハードルが目の前に立ちはだかるのを、無力な私は呆然と見つめつつも、日々、悪あがきを繰り返しながら、なんとかそれでも倒れずに、ハアハア言いながら、ここまで歩いてきた感じです(なので、何十年も出版社を潰さずに経営を続けている出版社の経営者の先輩方のことを本当に尊敬します)。
どうやったらこれからもずっと、さまざまに降りかかる困難を乗り越え続けることができるのか、ずっと耐えられるのか、10年後自分がどうなっているのか、想像するだけでも怖い、そんな春日俊一51歳です。
そんなわけで、なんかうまく話がまとまりませんが、きりがないのでここで締めさせていただきますが、そんなわたくし春日と、弊社の唯一の社員の結城による二人出版社、アルファベータブックスを、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。