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在庫ステータス
取引情報
かわと生きる
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年6月10日
- 書店発売日
- 2024年5月31日
- 登録日
- 2024年4月11日
- 最終更新日
- 2024年5月31日
書評掲載情報
2024-10-06 |
読売新聞
朝刊 評者: 遠藤秀紀(東京大学教授・解剖学者) |
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紹介
牛革の生産量が全国一の兵庫県たつの市。地元出身・在住の著者は、15年にわたり革なめしの職人たち(タンナー)の元に通い、撮影を続けてきました。
また、革なめしの工場だけではなく、牧場や食肉処理場から革製品の製作現場まで、牛革にかかわるすべての過程を取材することで、牛の「いのち」について考え続け、それを生かし切る職業に誇りを持って取り組む人々の声を聞き続けてきました。
巻末には、革なめし工場の三代目を継ぐタンナーへのインタビューを収録。個人の目線から、革なめしの歴史や工場の一日、「皮革産業とともに生きる」ことのリアリティを伝えます。
牛の「皮」が「革」となるまでの過程を丁寧に追いかけた、ほかに類を見ない写真集です。
前書きなど
はじめに
私は皮革産業が盛んな兵庫県たつの市で生まれ育った。幼少期から皮革工場は身近にあり、河原に革を干していたり、皮を後ろに積んだ軽トラックやフォークリフトが道を走ったりしていた光景が記憶に残っている。
兵庫県は日本一の牛革の生産地だ。主に、たつの市にある松原・誉田・沢田地区、隣の姫路市では高木・御着・網干などが有名で、全国に流通する牛革の約7割が県内で生産されている。
私の住むたつの市は兵庫県南西部に位置し、瀬戸内海に面している。自然が豊かで、特に里山や海岸などが美しい地域だ。北の山地から南の瀬戸内海まで南北に長い地形の中を、揖保川・林田川という2本の川が流れている。豊かな水が、しょうゆ、手延べそうめん、そして皮革というたつの市の伝統的な三大地場産業をもたらした。
他の産業と同様、革づくりにおいても水と気候は重要だ。原皮を鞣して革にするまでの工程では、大量の軟水を使用する。また、瀬戸内特有の比較的温暖で雨の少ない土地は、革を干すのに好都合だ。さらに海が近く皮革産業に欠かせない大量の塩が手に入りやすかったことも、この地の皮革産業を盛んにした要因となったようだ。
写真家として、初めてタンナー(※)の工場に入らせてもらったのは2009年のこと。山積みにされたホルスタイン牛の原皮を見て圧倒されたが、無意識にカメラを構えたことを今でも覚えている。その後も、牛の「皮」が「革」となり、製品となっていく過程に魅力を感じ、牧場からタンナーまで、15年ほど取材を続けてきた。
牛が生まれてから革製品が仕上がるまでには、実に多くの職人が関わっている。本書を通して、そんな「いのち」の物語が、一人でも多くの人に伝わればと願っている。
※動物の皮を鞣(なめ)して革にする製革事業者のこと。
版元から一言
国内の牛革なめしの現場を捉えた写真集はこれまで類がありません。
工場の床いっぱいに広がる牛の皮、大きなドラム型の機械から立ち上る湯気、そしてきびきびと働く職人たち。
著者は皮革産業のさかんな兵庫県たつの市に生まれ育ち、多くの縁から、現場で働く人々との交流を通して撮影を続けてきました。
皮革産業は、動物の皮を扱うことから、差別と偏見にさらされてきた過去があります。しかしそこで働く人々は、食肉加工の副産物に再びいのちを吹き込む自らの仕事に誇りを持ち、皮革を心から愛しています。作品とインタビューから、真摯な職人魂を感じ取っていただき、皮革への興味を高めていただけたら幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。