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また猫と 猫の挽歌集 仁尾 智(著/文) - 雷鳥社
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また猫と 猫の挽歌集 (マタネコト ネコノバンカシュウ)

文芸
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発行:雷鳥社
四六変形判
縦190mm 横116mm
160ページ
並製
価格 1,800円+税
ISBN
978-4-8441-3804-4   COPY
ISBN 13
9784844138044   COPY
ISBN 10h
4-8441-3804-9   COPY
ISBN 10
4844138049   COPY
出版者記号
8441   COPY
Cコード
C0092  
0:一般 0:単行本 92:日本文学詩歌
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2024年4月8日
最終更新日
2024年7月10日
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紹介

多くの猫を愛し見送ってきた猫歌人・仁尾智と、
多くの“猫飼い”の声を聴いてきた
猫本専門店オーナー・キャッツミャウブックス店主安村正也が贈る
猫の挽歌集


わかるなよ あなたにわかるかなしみはあなたのものでぼくのではない

誕生日すらわからない猫なので命日くらい見届けるのだ

のんびりとした猫だった 最期だけそんなに急いでどこへ行くのか

できることあるうちはいい 口元に猫の好物を持っていく指

生前の猫の写真を眺めてる サイダーをまたサイダーで割る

また猫と そう思えたらまた猫と暮らす未来のはじめの一歩

・・・・など全115首

前書きなど

著者・編者 あとがき全文

【著者あとがき 仁尾智】

 生きていくことの傍ら、猫を保護したり、保護した猫の里親さんを探したり、とき
には子猫の一時預かりのボランティアをしたり、という活動をほそぼそとやってきた。
もう四半世紀近くそんなことをしているので、その間、たくさんの猫を看取ってきて
しまった。
 猫を看取るときには、たくさん短歌がうまれる。気持ちが、これ以上になく動くか
らだと思う。そして、「短歌にする」という行為には、効能があると思っている。
 大好きな猫が日に日に衰えていくときや、いなくなってしまったときの吐くような
悲しみは、そのたびに短歌にしてきた。「短歌にしてきた」と書くと自発的行為のよ
うだけれど、実際には、悲しみから身を守るように「短歌ができてしまう」というほ
うが正しい。
 悲しみが短歌の形になると、少しだけ自分の中から外に出せたような気持ちになる。
逃れがたい渦の中から、一瞬頭を上げて息つぎができる。短歌にする過程やできあが
った短歌を目にすることで、自分に起こっている事態を客観視できるのだと思う。つ
まり、この本に収録されている短歌は「自分が楽になるために書いた短歌」なのだ。
たくさんの猫を看取って、そのような短歌が歌集になるくらいたまってしまった。全
部僕が僕のために書いた短歌なので、嘘のない歌集にはなっていると思う。
 ……が、その反面、歌集としてまとめるに当たっては、大いに迷った。「そんな自
分が救われるための作品で歌集を?」というわずかながらにあった歌人としての矜持
とのせめぎあい。「猫を、しかも猫の『死』を利用していることにならないか」とい
う罪悪感。「猫の挽歌集は、誰かの役に立つかも知れない」という気持ちと「役に立
つってなに? 短歌はそんなものじゃないのでは?」という気持ち。また「我が家の
ように何匹もの猫を看取る悲しみと、例えば幼少期から二十年間一緒にいた一匹の猫
を看取る悲しみが同じであるわけがない。悲しみなど共有できないのだから、何かを
わかったような顔で本なんて出すべきではないのでは?」という葛藤。
そう、悲しみは共有できないのだ。それぞれが、まったく別の悲しみを抱いている。
 ただ、「命」を前にしたときの右往左往や詮無い気持ちはみんな同じなのだ、とも
思う。「もっと早く気づいてあげられていれば」とか「最後の瞬間に一緒にいてあげ
られなかった」とか、そうした自責の念や後悔も、多かれ少なかれみんなが抱いてい
る。そして、そういう「同じ気持ち」のほうを共有できる機会は、意外と少ない。も
しかして、余白の多い「短歌」という形であれば、その機会になり得るのではないか。
 最終的には「誰かの役に立つ、というより、回り回って猫のためになるのでは?」
という考えに至って、踏ん切りがついた。
 この本を読んだ誰かが、少し前を向けて、また猫と暮らし始めてくれたりしたら、
この本を作った甲斐どころか、僕が存在した甲斐があったとまで思える。
 最後に。
 僕の迷いをまるごと引き受けてこの本を世に出してくれたキャッツミャウブックス
さんと雷鳥社さん、装丁を引き受けてくれた仁木順平さんには感謝しかない。本当に
ありがとうございました。


【編者あとがき  キャッツミャウブックス店主・安村正也】

「うちから何か本を出しませんか?」
 たぶん世界初の猫歌人を名乗る仁尾智さんに、どこかに必ず猫が出てくる本だけを
置いている猫本専門店オーナーの私が持ちかけたのは二〇二二年の暮れのこと。
「猫の挽歌集を出したいんですよね」
 彼が即答した挽歌集とは、つまり猫の死を悼む短歌だけを集めた歌集ということだ。
あまりポピュラーなテーマではないので、猫本専門店から発信すれば、読んでほしい
層に届きやすいのではないかということらしい。
 猫を飼う人はますます増えているが、通常は猫の寿命の方が短く、飼い主は愛猫に
先立たれることになる。一方で、猫の長寿化に伴い、死別に関する猫本のテーマも、
かつて主流だった【ペットロス】から、近年では【終活】【介護】【看取り】などに特
化・分化してきている。とは言え、それらの書籍からは猫の一生における個々の場面
でやるべきことや心構えは学べるものの、亡くした後の「誰にも言えないし、言いた
くない、でも誰かに分かってほしい」という複雑な心情を代弁してくれる本はなかな
か見つからない。そんな声を当店に来られるお客様からも耳にしていた。
 猫と暮らしている方であれば、愛猫の闘病中はもちろん、元気な時でさえ、猫の看
取り話を聞いたり読んだりするのは辛いはずだ。その反面、看取りの前後でそうした
話に触れると、「みんな同じなんだな」と少しだけ気持ちが楽になることもある。
 かくいう私も、二〇二三年の春に二名の店員猫を相次いで亡くしたのだが、その直
後から、ずっと読めなかった猫の終活や看取りのエピソードを号泣しながら読み始め
た。そのなかで特に、この歌集にも収められている一首に救われ、結果的に、里親と
して新たに二名の保護猫を迎え入れることになった。
「挽歌集、ぜひ出しましょう!」
 猫歌人の構想に私も即答した。看取りの状況もその前後に抱く感情も人それぞれな
ので、他者が分かったような振りをすることはおこがましいと感じている。逆を言え
ば、他者から分かったように振舞われたくないとも思っている。二〇一七年に猫本専
門店をオープンして以来のつきあいである彼も、同じ感性を持っていると信じていた
ので、迷うことは何もなかったのである。
 これをあとがきに書く私もどうかと思うが、この猫の挽歌集は、今すぐには読めな
くても、読めると思えるまで、常備薬のように本棚に並べておいていただくだけで構
わないような気がしている。ただ、「本当はまた猫を飼いたいのに、しんどいのでも
う飼えない」という思い込みをお持ちだったら、お読みになった後にそれを拭い去っ
て、里親を待っている保護猫に手を差し伸べるきっかけにしていただけると嬉しい。
 本書は、当初キャッツミャウブックスの刊行物として出すつもりだったが、猫歌人
と猫本専門店の想いに共感してくださった雷鳥社さんから出版されることになった。
それによって、より広く、より多くの方々のお手元に届くことを強く願う。そして、
みなさんが心に同じことばを思い浮かべることを。
「また猫と」

版元から一言

著者は、日本初の猫歌人・仁尾智。
編者は、猫専門書店キャッツミャウブックス店主安村正也。

両者とも多くの保護猫と暮らし看取り、そして同じように猫を愛する人々の喜びの声・苦悩や悲しみの声を長年聴いてきた。
この二人の手による本書は最強の猫フレンズのための本と言える。

著者プロフィール

仁尾 智  (ニオ サトル)  (著/文

1968 年生まれ。猫歌人。1999 年に五行歌を作り始める。2004年「枡野浩一のかんたん短歌blog」と出会い、短歌を作り始める。短歌代表作に『ドラえもん短歌』(小学館文庫 枡野浩一編)収録の《自転車で君を家まで送ってた どこでもドアがなくてよかった》などがある。著書に五行歌集『ストライプ』(市井社 共著)、『猫のいる家に帰りたい』、『これから猫を飼う人に伝えたい11 のこと』(ともに辰巳出版 絵/小泉さよ)、『いまから猫のはなしをします』(エムディエヌコーポレーション)。

上記内容は本書刊行時のものです。