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日本の繊維と人 Ⅱ
衣服造形家が訪ねた、棉、木綿、楮、竹、蜀黍、稲…
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年4月23日
- 書店発売日
- 2024年4月15日
- 登録日
- 2024年3月18日
- 最終更新日
- 2024年4月15日
紹介
土地に生きた人たちの姿が浮かぶ「日本の繊維」。骨董でも過去を懐かしむノスタルジーのための物品でもなく、そこには、コンテンポラリー・アート(同時代芸術)のように、大きな感動が潜む出来事や物語、生きるための問いがある。日本の気候風土の元、繊維と懸命に生きた人々の「生命の美」の姿であり、「今を生きる意味」や、「明日を生きるための希望」を私たちに与えてくれる。本書では「日本の繊維」そして「人」とは、どのような物であり、この国に生きた人たちは、どのように繊維と関わり、どのような生き方をし、どのような「美」を紡ぎだしてきたのか、これまで著者が、各地を訪ね出会った「日本の繊維と人」による造形活動を通して、繊維を見つめてゆく。
第2巻では、「木綿」「綿」「禾」「稲」をとりあげ、それぞれの材と人との関わりを、実際にそれぞれの材に携わる人々の生き方を通して見つめる。衣服造形研究者が、日本をめぐり繊維を採り、生きた人々の歴史を紐解き、日本各地で繊維文化に関わる人々を訪ね得た「今を豊かに生きる意味」と感動を綴る。待望の第2巻。
目次
五章 木綿 ゆう
1 〝ゆう〟の繊維
白い樹皮 昔の白色は、植物の「素」の色「生成り」
茨城県結城市へ 『古語拾遺』に書かれた、結城郡の名
2 四国 木頭の楮繊維
四国の地殻 中央構造線周辺で採取される、朱の辰砂
土地が生む信仰と辰砂 土地に育つ植物とその繊維
徳島県木頭へ 阿波太布製造技法保存伝承会により継がれる技
太布2千反 その時代は夜なべして太布を織るしかなかった
思い出の繊維・布 おばあさんやお母さんから太布を教えてもらった
12ヒボリで1反 ヒボリという単位で、糸を作り布を織る
3 阿波 繊維を生む山が織りなす幽玄
雲早山を越える 霧と雲が織りなす幽玄な世界
阿波忌部と楮 穴吹の「しらたえ織り」
木屋平村史の繊維 太布は榖の皮もて織れるものにて麻布にはあらず
阿波の楮 繊維から紙が漉かれてきた
4 楮の繊維を漉き、和紙に
紙の始まり 植物の繊維から作られる
紙の伝来 繊維を水中で漉いて作る
柔軟性ある和紙 織らないで作る布「不織布」
パピルス草 英語の「paper」の語源
5 白石 和紙の衣服繊維
清浄な紙子 僧侶の衣服にも使われた
宮城県白石市へ 白石の楮繊維
幸福の和紙 五節を通して、五穀豊穣、豊かな心を願う
美しい紙布 縦に繊維が並ぶように薄く漉く
白石和紙 拓本染 版木の彫刻文様が、和紙の凹凸に浮かぶ
6 元結、水引、紙の紐
元結 髷を結うための紙の紐
長野県飯田市へ 多くの古墳が残る要衝地、繊維の伝統
水引 遣隋使が伝えた紅白の紐
飯田の水引 紙が撚糸機で1本の紙紐になる
7 熊本と渡来人、和紙の繊維
熊本県和水町へ 渡来人が日本に伝えた繊維の力
山鹿の灯籠 1㎜にも満たない紙端同士を糊で留める
紙作りの主流 木材を細片にしたパルプで紙を作る
間伐材の衣服 木から和紙を作り、糸にして織り上げる
コラム5:縫うための道具 針
草本/木本 そうほん/もくほん
六章 棉 めん・わた
1 棉の繊維
棉 世界中の人々が身に着ける植物の繊維
多様な棉の種類 繊維の太さ長さ柔らかさが違う
日本人、棉繊維を知る 平安時代初期、崑崙人がもたらした棉
モンメン 中国、韓国、日本の棉・綿の呼び名
2 木綿繊維の広がり
棉の栽培始まる 糸にしやすく、着ると暖かい
畿内の棉栽培 稲よりも商品作物の栽培を求めた農民たち
大阪府八尾市へ 早い時期から棉栽培に取り組んだ人と土地
布団綿 棉の栽培が広がり、暮らしも変化した
綿打ち職人 手の違いが綿の質を変えた
3 関東の木綿繊維
関東の棉 三浦の人が伝えた、東国の棉栽培
三浦木綿 東国棉の栽培先進地
神奈川県三浦市へ 地元の海から獲れる鰯が栽培を支えた
万祝半纏 千両、万両の大漁を祝った衣服
北関東の木綿 江戸で評判になった真岡木綿の白さ
栃木県真岡市へ 木綿の伝統を伝える、真岡木綿工房の手仕事
4 三重、島根の木綿繊維
松阪の棉 神御衣祭の荒妙と和妙を奉織する地で継がれる伝統
三重県松阪市へ 江戸の人々を魅了した粋な縞木綿布
島根県出雲市へ 神の国の雲州木綿・平田木綿
山陰の棉作 古老の話から見えてくる棉栽培
5 沖縄の木綿繊維
沖縄の棉 島々で織りなされる木綿の伝統
ミンサー 八重山諸島の思いを伝える綿布
八重山諸島の綿 受け継がれる民話の布をつくる
6 日本の繊維産業の夜明け
近代紡績始まる 鹿児島に日本初の紡績所を設立
木綿産業の黎明期 国産綿から外国綿へ
臥雲式紡績機 日本人が発明した紡績機械
愛知県豊田市へ ガラガラと音を立てながら糸を紡ぐ
7 風土が育てる木綿繊維
コーマ糸・カード糸 繊維の長短が、紡ぐ方法と機械を選ぶ
東京都世田谷区へ 棉が心の豊かさを育む
8 世界のコットン繊維
世界のコットン 棉の種子、世界へ広がる
キャラコ、イギリスへ 木綿布から産業革命へ
コットンと世界史 インド・パキスタン分離独立との関わり
アメリカ南北戦争 南部コットン・プランテーション
コラム6:着衣
禾本 かほん
七章 禾 か
1 竹の繊維 たけ
竹 幽玄が浮かび上がる竹林
東京都東村山市へ 縄文人も笹を細くさき、繊維の弾力を利用した
竹の用具 農具・漁具・建材はじめ、再生繊維の糸もある
2 皮白竹繊維と版画
馬連 竹皮を細かくさいて撚った綱を巻いた芯
浮世絵の摺り 摺師が自ら竹皮から馬連を作り摺った
竹の綱を撚る 福岡県南西部の八女地方に生育する皮白竹
竹綱の感触 馬連の効きを身体で感じる
3 竹繊維の弾力と文化
竹繊維の柔軟性 白く美しい竹皮の履物
竹筆の筆跡 竹繊維の弾力で文字を書く
4 蜀黍の繊維
蜀黍 世界の人々の生命を育んできた
栃木県鹿沼市へ ハマグリ形にまとめられた縁起物の鹿沼箒
5 真菰の葉繊維と種子 まこも
真菰 古い時代から日本に植生するイネ科植物
真菰の神事 出雲大社の凉殿祭
アメリカ・カナダのマコモ ネイティブ・アメリカンの祭事や儀式への神聖な穀物
インテリアマコモ ワイルドライスとの出会い
コラム7:膜と生命
八章 稲 いね
1 稲の繊維
水稲、陸稲 環境により早稲・中稲・晩稲が植えられる
稲栽培開始 地球の寒冷化と稲作との関わり
日本の稲 伝来は、約3千年前、縄文時代晩期
2 稲の葉鞘、葉の繊維 わら
藁 日本人、稲の繊維を利用し造形を始める
稲藁と生活用具 蓑、蓑帽子、藁手袋など、多様な造形物
御蓙の登場 茣蓙は、床を持つ畳へと発展した
畳を縫う感触 羽毛田畳店での畳の制作体験
3 稲藁繊維が心の拠り所をつくる
赤・紫黒・緑の稲 多彩な稲種が伝えられてきた
稲の神事や芸能 日本のさまざまな稲の行事
注連縄 聖域と俗域を分ける稲繊維
藁を綯う 祈りや願いを稲藁に込める
千葉県鴨川市 大山千枚田 約20年、棚田で稲作をしてきた
稲のアート活動 各地の人々と稲を通して豊かさを見つける
心を包む稲の布 次代につなぐ、新技術と稲による社会支援活動
エピローグ
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。