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SMの思想史 河原 梓水(著) - 青弓社
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SMの思想史 (エスエムノシソウシ) 戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望 (センゴニホンニオケルシハイトボウリョクヲメグルユメトヨクボウ)

哲学・宗教
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発行:青弓社
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ25mm
重さ 370g
408ページ
並製
定価 3,000円+税
ISBN
978-4-7872-1058-6   COPY
ISBN 13
9784787210586   COPY
ISBN 10h
4-7872-1058-0   COPY
ISBN 10
4787210580   COPY
出版者記号
7872   COPY
Cコード
C0010  
0:一般 0:単行本 10:哲学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年5月14日
書店発売日
登録日
2024年3月7日
最終更新日
2024年5月10日
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書評掲載情報

2024-06-23 読売新聞  朝刊
評者: 苅部直(東京大学教授・政治学者)
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紹介

サディズム、マゾヒズム、フェティシズム、同性愛や異性装などのセクシュアリティをもつ人々が集った雑誌「奇譚クラブ」は、「その表紙に触れるだけでも戦慄が走る一種危険な雑誌」「戦後の裏文化の帝王」などと語られ名前だけは広く知られてきたが、雑誌の特色や内容に関する本格的な研究がなされてこなかった。

本書では、「奇譚クラブ」を含めた1950年代の戦後風俗雑誌7誌を全号通覧のうえ、類似雑誌の系譜・模倣関係を検証、「奇譚クラブ」の史料的特質とその重要性を浮き彫りにする。

吾妻新、沼正三、土路草一、古川裕子という4人の「奇譚クラブ」作家/思想家に着目する。戦後民主主義・近代化の潮流のなかで、サディスト・マゾヒストを自認した人々は、支配と暴力をめぐる欲望について何を考え、どう語ったのか。「家畜人ヤプー」「夜光島」などのポルノ小説やエロティックな告白手記から、主体性、自立、同意、愛をめぐる論点を取り出し、近代的な人間性をめぐる規範の限界をあぶり出す。

目次

はじめに

第1部 史料論――戦後風俗雑誌研究序論

序 章 問題の所在と本書の視角
 1 問題の所在
 2 研究方法
 3 時期区分

第1章 第一世代雑誌――「奇譚クラブ」「人間探究」「あまとりあ」
 1 「人間探究」「あまとりあ」
 2 「奇譚クラブ」
 3 戦後風俗雑誌の共通点
 4 「科学的」研究と当事者研究

第2章 第二世代雑誌と弾圧――「風俗草紙」以後
 1 「風俗草紙」とその模倣誌たち
 2 「風俗科学」
 3 専門誌の価値
 4 雑誌同士、執筆者同士の関係
 5 弾圧と廃刊
 6 弾圧以後――「裏窓」の創刊

第2部 善良な市民になる

第3章 病から遊戯へ――サディズムの近代化・脱病理化
 1 サディズム・マゾヒズム概念の輸入と定着
 2 フェミニストなサディスト
 3 吾妻新によるサディズムの近代化論

第4章 〈告白〉という営み――セクシュアリティの生活記録運動
 1 〈告白〉に対する二つの態度
 2 〈告白〉とフィクションと真実
 3 〈告白〉が描こうとしたもの
 4 近代的主体になる

第5章 吾妻新と沼正三のズボン・スラックス論争
 1 論争の経緯
 2 ズボンの意義――村上信彦の女性論・服装論から
 3 裏返しの拘束衣――ズボンの性的活用

補論1 作家の実名①吾妻新(村上信彦)――戦後の民主的平等論者の分身
 1 テキスト比較
 2 村上信彦にとっての吾妻新と「奇譚クラブ」

第3部 社会に抗する思想

第6章 マゾヒズムと戦後のナショナリズム――沼正三「家畜人ヤプー」
 1 男性主義的エリート・沼正三
 2 マゾヒズムと女性蔑視
 3 理想郷

補論2 作家の実名②沼正三(倉田卓次)――『家畜人ヤプー』騒動解読
 1 問題の所在
 2 個人情報の比較
 3 『家畜人ヤプー』騒動と共同筆名説
 4 『家畜人ヤプー』騒動はなぜ起きたか

第7章 家畜の生と人間の身体――土路草一「潰滅の前夜」「魔教圏No.8」
 1 「家畜化小説」の登場
 2 最初の家畜、最後の家畜
 3 小説の構造
 4 家畜への道程
 5 唯一の生

第8章 近代性を否定する――古川裕子「囚衣」とマゾヒストの愛
 1 吾妻新と古川裕子
 2 「夜光島」という思考実験
 3 ユートピアの成立
 4 マゾヒストの愛
 5 近代性の要求と免罪

おわりに

初出一覧

あとがき

著者プロフィール

河原 梓水  (カワハラ アズミ)  (

1983年、岡山県生まれ。福岡女子大学国際文理学部国際教養学科准教授。専攻は日本史、サディズム・マゾヒズム・SMを中心とする近現代日本の性文化・思想。共編著に『狂気な倫理――「愚か」で「不可解」で「無価値」とされる生の肯定』(晃洋書房)、論文に「現代日本のSMクラブにおける「暴力的」な実践――女王様とマゾヒストの完全奴隷プレイをめぐって」(「臨床哲学ニューズレター」第3号)など。

上記内容は本書刊行時のものです。