『ちつのトリセツ──劣化はとまる』……人生が変わる膣ケア
▼世界では常識、やっていないのは日本女性だけ!
自分の指にオイルをつけ、その指を膣のなかに入れて、膣にオイルを塗りこむ──。
これが、妊婦さんにはすでにおなじみの、「会陰マッサージ」の基本です。
オイルでマッサージすると膣や会陰がやわらかくなり、うるおいも増すので、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても、お産が楽になるのです。
インドでは数千年も前から行われていて、最近、近代西洋医学でも効果が実証されたため、いまでは世界中の医療機関(日本では聖路加産科クリニックなど)が、妊婦さんたちに会陰マッサージを奨励しています。
ところが、Be born助産院の医院長、たつのゆりこさんは、
「妊婦だけでなく、オトナの女性は全員、会陰マッサージをやったほうがいいんです。膣ケアをやっていないのは日本人女性だけ。世界中の女性が、すでに、あたりまえのこととして膣ケアを行っているのです」
と、言うのです。
▼原田さんの膣はカチカチになっていますよ!
最初にその話を聞いたとき、私のなかに湧き上がったのは嫌悪感。
「ええっ〜〜、そんなことするの、絶対にイヤだ!」と思ったのです。
気持ちが表情に表れてしまったのでしょう。たつのさんは、言葉を失っている私の顔を見ながら、にっこり笑って言いました。
「原田さんの膣は、たぶん、カチカチになっていると思いますよ」
「ええっ〜〜!」
たつのさんと私は、そのときが初対面。女同士とは言え、初めて会った人にそんなことを言われるなんて、ありえない!
……だけど、膣がカチカチになるなんて、そんなことが本当にあるのでしょうか!?
憮然とする私にむかって、たつのさんは続けました。
「最近は、若い女性でも、膣がカチカチになっている人が増えているんです。みなさん、お顔のことばかり気にしていますけど、膣だって、乾燥したり、たるんだりするんです。それなのに、日本人女性は、みなさん、ほったらかし! 尿もれや便秘、女性器のにおい・黒ずみ・かゆみ、生理痛や性欲減退、不感症、性交痛だって、膣をほったらかしにしていることが大きな原因なんです。膣は、ほったらかしにしたら、冷えて、乾いて、カチカチになって、しまいには、干上がって萎縮してしまうんですよ!」
干上がる……!? 萎縮する!? 膣が……!?
唖然、呆然、思考停止……。
まさか、まさか、そんなことあるはずがない! 信じられない!
▼自分の膣にさわるのは、いけないこと!?
驚くばかりの私に、たつのさんはさらに続けます。
「日本人女性は、自分の女性器をきちんと見たこともない、さわったこともないという人がほとんどです。男性にはさわらせるのに、自分ではさわることもできない……、原田さんはいかがですか?」
笑顔の奥に鋭さがありました。
情けないことに、私はたじたじ。
「そんなことを言われても……。そう言われると、たしかに、そういうことになってしまいますけど……」
たつのさんの言う通りでした。
考えてみれば、私はこれまでずっと「膣ケアなんて、まともな女がすることではない!」と思ってきたのです。そして、「私には、女性器なんてありません! セックスにも興味はありません! 大事なのは体ではなく心です!」という顔をしていることが「女性としての品位を保つこと。女性が美しく毅然と生きること」と思ってきたのです。
「自分の膣のなかに指を入れるなんて、いやらしい! 不潔! 下品! 恥ずべきこと!」、そう思ってきたのです。
だけど、よくよく考えてみれば、これって、どこか変……。
正直に言えば、私は心の奥でずっと「男性に『君とのセックスは最高だよ』と言われるような体(膣)の持ち主でありたい。好きな人と、身も心もとろけるようなセックスがしたい」と願っていたからです。
▼自分の欺瞞に気がついて、私は自由になりました。
男性にはさわらせるのに、どうして私は、自分の女性器にさわることや、膣のなかに指を入れることを「いけないこと」と思ってきたのでしょう。
こんなに大きな自己矛盾(欺瞞!)を抱えていたのに、なんでいままで、そのことに気づくことすらできなかったのでしょう。
たつのさんとの出会いによって、私は初めて、自分のなかに歪んだ性意識やタブー意識があること。それに囚われ、こわばっている自分がいることを知ったのです。
それは同時に、自分のなかに、セックスに対する不安や恐れがあることを自覚することでもありました。
ベッドをともにした男性の顔色をうかがい、ちょっとした言葉や仕草や表情だけで、全人格を否定されたように感じて深く傷ついたり有頂天になったり、必要以上に大胆に振る舞ったり、攻撃的になったり、おどおどしたり……。
私はこれまでずっと、性的なことに対して不安や恐れを抱えたまま、どう振る舞えばいいかわからないまま、生きてきたのです。
そのような自分を知ったことで私が得たものは、解放感と自由。そして自信でした。
幼いころ、私はわざと大きな声で「うんち! おしっこ! おなら!」と叫んでは、眉をひそめる大人たちを尻目に友だちと笑い転げていたのですが、そのときに味わったような解放感。「ひとりで遠くに行ってはいけないよ」と言われていたのに、ドキドキしながら出かけて行って、ちゃんと帰って来られたときに味わったような誇らしさ。自分の意志や判断で、自分が望めば、行きたいところへ行けるという自信を得たのです。
たつのさんと出会い、自分の体を知ることで、私は自分のなかにセックスに対する不安や怯えがあることを知り、そのような自分を知ることが、不安や怯えを乗り越える唯一の道であることを知ったのです。
▼性交痛はぜんぜん珍しくない、普通のことです。
ところで、もうひとつ、たつのさんが言ったことで当たっていることがありました。私の膣は本当に、カチカチを通り越して、カチンカチンになっていたのです!
驚愕しました!
そしてついに、大決心で、膣ケアと会陰マッサージを開始したのです。
結果は、驚くべきものでした。
ちつのトリセツ──劣化はとまる
に、私は、たつのさんの教えだけでなく、自分のその体験の経過や結果のすべてを、包み隠さず書きました。
あまりに恥知らず、と思う方もいるでしょう。
けれども私は、日本人女性全員に(男性にも)、膣がカチカチになったり、たるんだりすること、それによって、セックスだけでなく、さまざまなトラブルが引き起こされることを、きちんと知ってもらいたいと思ったのです。
なぜならそれは、ケアをすれば回避できるトラブルであり、すでにトラブルがあっても、自分の力で回復をはかれることだからです。
最近、『夫のちんぽが入らない』という、性交痛を告白した本がベストセラーになり、
松尾スズキ氏が、「普通に生きようとして、普通には生きられなかった。……血まみれ夫婦の20年史」と評しました。
けれども、いまや日本では、セックスができることは普通のことではありません。
性交痛があってセックスができないことのほうが、ぜんぜん珍しくない「普通のこと」なのです。
▼体が変れば、人生が変わる。
精神的なことがあるので、ケアさえすれば、すべてが改善されるとは言い切れません。けれども、「これは健康のために必要なこと」と知り、嫌悪感や罪悪感をもつことなく、前向きな気持ちでケアすれば、女性特有の不調が大幅に改善されるだけでなく、セックスに対する怯えや不安も自然に解消されてくるのです。
女性にとって(男性にとっても)、性にまつわることは、自分の人生(アイデンティティ)を左右する重要なこと。だからこそ、自分の体をきちんとケアすることは、とても大切。
どうぞ恥じることなく、恐れることなく、膣ケアを始めてください。
膣ケアは、私たちを自由にしてくれる「心のケア」でもあるのです。
ケアを始めれば、多くの方に、そのことを実感していただけるでしょう。
体が変れば、心も変わります。
体や心が変れば、人生だって変わるのです。