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2015年6月26日

 こんにちは。自称通称「楽しい医療系専門出版社」の株式会社SCICUS営業担当です。

 2015年6月26日金曜日、社内を揺るがす大事件が3つ。

 ①『ついにアマゾンが書籍の「安売り」を始めた!』(東洋経済オンライン)
 ②『出版取次では過去最大の倒産/栗田出版販売/民事再生法の適用を申請』(帝国データバンク)
 ③『版元日誌のお誘い』(事務局よりメール)

 起きた順としては①→③→②です。さり気なく版元日誌を三段落ちっぽく使ってしまったことをお詫び申し上げます。
 さて、これら3つの事件をめぐる自分の心情の変遷について。
 まず午前中、出社直後に知ったAmazonの件。記事の扇情的な見出しに思わずのけぞります。そして悶々としていたところに、午後一番で事務局より、版元日誌執筆のお誘いを受けるという流れ。
 芸風というのもなんですが、かねてより心ひそかに決意していたのです。弊社が書かせていただいた前々回(2011/6/29)前回(2014/4/30)の、妙に食欲を刺激する日誌の書き様を踏まえ、もし次に私が版元日誌を書かせていただくときが来たら、弊社が拠点とする杉並区西荻窪の最新ラーメン屋事情をご紹介する……と思わせつつ、ドサクサで新刊書籍のお披露目になだれ込む寸法でいこうと。
 ところが、そんな感じでテキストをこねくり回して痺れた頭で迎えた週末の夕方5時、栗田出版販売さんのニュースが直撃いたします。
 なんということでしょう。結果的にとはいえ、日本出版史上における一大事がダブルで起きたその日に執筆のバトンを受け取っておいて、「それはさて置きラーメンですが」などと暢気なことを書いていてよいのだろうか!?
 とはいえ、このようなデリケートな話題について、ではちょいちょいっと書きますね、というわけにもいかず、唸りつづけて早十日……。
 困りました。
 あえて言い訳をさせていただくならば、そもそも弊社が栗田出版販売さんと取引がなかったから、とか。自分ごとき未熟者が別段何をいえるものでもないから、とか。そもそも最近率直な感想を大っぴらにいいづらい事案が多すぎませんか、とか。そういったところです。例のベストセラーの件も然り。踏み絵で舗装された出版道、できれば避けて通りたい。貝になりたいときもある。会社はもちろん業界からも離れた個人ブログで放言するならまだしも、そうでない場所で放った言葉は、いくら個人的な見解と前置きしたところで、外から見ると想像以上に「シュッパンギョーカイ的考え方」にまとめられてしまいます。自分とは全く相容れない見解を述べられたどちら様かが、SNS等で「これだから出版業界は」と十把一からげに擦られ叩かれ火をつけられているのを見ると、実に惨憺たる気持ちになるではありませんか。
 ……と何だかただの愚痴みたいなことを述べているうちに、それなりの字数を費やしてしまいました。とりあえずここまで、2015年6月26日という日を引き金に数日間を悶々と過ごした、とある出版社員の記録として、ラーメン話に代えさせていただきたく存じます。

 さて、前置きが長くなりました。
 当初の予定通り、ドサクサに紛れて弊社新刊書籍のご紹介に──とその前に


トシ、1週間であなたの医療英単語を100倍にしなさい。できなければ解雇よ。

 もし覚えていていただけたなら幸いです。前々回に執筆した日誌で、世にも白々しいご紹介をいたしました異端の医療英単語学習書。2009年に発売されてから6年が過ぎ、現在はどうなっているかと申しますと、実は、今や某ネット書店の医療関連語学部門で長らく1位を走り続ける定番書籍となっております。
 同じようなコンセプトの類書が第二、第三と出てきたかというとそれもないようで、オンリーワンでナンバーワンを地で行っております。
 こんなはずじゃなかった。
 というと身も蓋もありませんが、読者の皆様からはありがたいことに「(紙が)軽くてよい」「お洒落」「センスがいい」さらには「続きが読みたい」といった、学習書としてはあり得ないご感想を多数いただきました。本作りに携われたことがある方なら、本書を手に取られた瞬間、この類書作りがどれほど厄介な作業になるかを、ご理解いただけると思います。
 実際、厄介でした。自分たちが作ったのですから、類書ではなく続編ですが。


トシ、明日あなたの医療英単語でパリを救いなさい。できなければ離婚よ。

 前作同様「教科書も小説みたいにワクワクドキドキ読めたら……」を企画の軸に据え、紙の本ならではの仕掛けを追求した、渾身のシリーズ続編です。前作の読者ハガキでの要望にお応えする形で、より実用的な単語をセレクトし、音声データを特設サイト上にご用意。なぜか主人公が己の離婚回避を賭けて、パリの街を駆け巡りつつ医療英単語の課題を解きまくらなければならなくなるという奇想天外なストーリー。企画当初はいわゆる「ゲームブック」を志向するなど、学習書として尖りに尖りまくっていた状態からは相当落ち着いた形となりましたが、ここに至るまではかなりの時間を要しました。
 制作で苦労した点は数限りなくありますが、もし根本を挙げるとしたら、それはシリーズ第1弾の魅力とは何なのかを改めて自分たちで再認識し、続編の形へとフィードバックさせる作業だったといえるかもしれません。そしてその作業は今もなお続き、すでに新たな反省点を抱えつつ、シリーズ次回作の企画に挑んでおります。
 あくまでも医療英単語学習書として、専門家に向けたハードな内容であることは確かです。しかし「本好き」「勉強好き」の一般の方にも、一度は医学書の棚に足をお運びいただき、是非手に取ってご覧いただきたい、と自信をもってお勧めする次第です。
 
 
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