とりわけ可愛い「我が子」
前回、いつ書かせていただいたのか忘れてしまいましたが、久々の登場の有志舎・永滝です。歴史(特に近現代史)関係の学術書を中心に出版活動を行っております。
さて、自分で企画した本はどれも「可愛い我が子」ですが、この9月下旬から刊行を開始した『講座 東アジアの知識人』全5巻には、とりわけ愛情を注いでいるこの頃です。このシリーズは、19世紀半ばから1950年代までの日本・中国・朝鮮(加えて、わずかながらモンゴル・ベトナム・チベット)の有名知識人を100人余り取り上げて、その人生と思想のエッセンスを分かりやすく解説している入門講座です。ただ、「知識人」といっても、とりあげているのは学者・思想家のような人だけではありませんよ。政治家・軍人・宗教者・教育者、さらに革命家から演歌師まで多士済々です。
この企画をやっていて、我々日本人がいかに中国・朝鮮の近代思想を知らないかをつくづく思い知らされました。それに同じ儒教文化圏と言っても、こんなに日本の儒教思想が異端的だったなんて・・・・・・。また、どうしても日本人は日本中心主義が抜けなくて、近代以降は日本の先進的な思想がアジアに広まったと思いたいわけですが、ことはそう簡単ではなくて、日本発の思想が中国・朝鮮で受け入れられたり反発されたりして変容し、その思想がまたブーメランのように日本に影響を与えてくる。そういう事の繰り返しだったんですね。
現在、東アジアは領土問題や歴史問題で波高しという状況ですが、お互いがよって立つ思想基盤を知らなければ誤解と反発ばかりになってしまうのは当たり前。少なくとも近現代100年の間に東アジアを巡った主要な思想はひと通り理解しておきたい。そういう人のための入門講座です。
最後に、この講座全体で一番私がおすすめする知識人は誰かというと・・・・・・それは山川菊栄です。いわずと知れたフェミニストにして社会運動家ですが、この人の思想と行動が実にカッコイイんですよね。これから出る第3巻に収録されますので、是非とも見てみてください。