書籍で音楽好きの背中をプッシュ!
DU BOOKS(ディーユーブックスと読みます)は都内にレコード、オーディオショップを展開する(最近は、書店bookunionや読書用品レーベルBIBLIOPHILICもスタート!)、ディスクユニオンの出版部として、昨年より本格的に「版元」業務をスタートし、音楽関連の書籍を中心に刊行しています。
ここ最近ではYoutubeでしか音楽を聴かないという人も続出している昨今。とはいえ、自分自身が学生だった頃を思い出してもみれば、金もない、けど音楽は聴きまくりたい、ということで借りたCDをテープにダビングしていた(私などはその最後の世代に属しそうです)わけで、フォーマットは変われど、人々の音楽への情熱は揺るがないはず。出版業界よりも先に音楽配信の波が押し寄せた音楽業界ですが、ここに来て、アナログレコードの生産数は増加傾向にありますし、パッケージを求める音楽愛好家がディスクユニオンの店頭を賑わせています。今回は、そんな貪欲な音楽好きたちの背中を押せるような新刊を、2冊ほど紹介させて下さい。
*藤井陽一・監修『ラグジュアリー歌謡』
シティ・ポップや和物ライトメロウといったタームでここ十数年再評価されてきた、昭和のポップスたち。しかしそこから漏れた音楽も数知れず。弊社のお店スタッフでもあった監修者が、それらそうした埋もれた名作たちに光を当てたディスクガイドです。70年の大阪万博のテーマに始まり、最近なら東京女子流(!)まで、歌謡曲のなかに洗練を取り入れてきた数々のコンポーザーの仕事を追いつつ紹介。レイアウトにもこだわってます。従来のディスクガイドの見た目を覆す、ページを開けば昭和~平成なアートワークの数々が飛び出す仕様で、音楽に興味がなくとも「この絶妙なセンス!」と記憶の奥深くをくすぐられること請け合いです(例:『ちゅうかなぱいぱい』などの「東映不思議コメディーシリーズ」)。
人文書からライトノベルまで、鋭い感覚で新刊を紹介するブックニュースの永田さんにも紹介して頂きました。
あなたはどの曲が好き?芳醇過ぎる『ラグジュアリー歌謡』から10曲えらんでみた:Book News
youtubeのリンクをどしどし貼るスタイルが素晴らしい。当時生まれてなかったであろう若い読者には、「これを聴いてレコードを掘らなければ」といった意気込みは横に置いといて、とにかく浴びるように聴いてもらいたい。発売中です!
*能勢伊勢雄・著『新・音楽の解読』
打って変わってこちらは重厚。岡山県で美術活動の傍ら、ライブハウス「ペパーランド」を運営している、能勢伊勢雄氏の膨大なコレクションを開陳した、音楽についての講義録です。ダダから始まりサイケデリック・ムーヴメントを通過、ここ数年のダブステップやドローンに至る……。解説は松岡正剛氏、椹木野衣氏、宇川直宏氏、谷崎テトラ氏と、アンダーグラウンド・ポップのゴッドファーザーたちが集って豪華。
70~80年代に工作舎さんの本や「Rock Magazine」が追及してきた音楽と哲学とニューウェーブSFのマリア―ジュ、羽良田平吉や杉浦康平の美しい装丁の極み……みたいな文化って正直あまり継承されてないと思います。確かにかつてはレアすぎたノイズのレコードもポチっとyoutubeできる今ですが、それらがどういった文化を背景として生まれたのか、何に繋がっているのか、系譜を辿る作業というのは難しくなっている。そんな現代に打ち込められた楔のような書です! と書くと完全に荷が重そうですが、講義録なので実は初心者にも易しいです。この易しさに触れ、アーカイブを蓄えとくだけでなくきっちり次の世代に文化を継承していく作業の重要性を改めて痛感してしまいます。最後には氏の知識が爆発してそれ自身が美術作品のようになっている相関図も!
因みに音楽書以外にもいろいろ準備中です(去年出した、きのこ擬人化イラスト集『少女系きのこ図鑑』も引き続き好評!)。独創的な棚作りをする書店さんに花を添えられるような本を出していきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。
DU BOOKSのTwitterアカウント @du_books