増刷は売れている証なんです
皆さんは本の奥付をご覧になったことがありますか?
奥付には本が最初に世に出された日付(初版の日付)だけでなく、重版や増刷の日付が記されています。お手元の本の奥付をご覧になってみてください。ものによっては「おお、こんなに刷っているのか!」などと驚かれることもあるはずです(初版の日付と書店発売日は違うじゃないかとかそういう話をしだすと長くなるのでそれはそれとさせてください)。
大抵の本は売れると増刷します。「これは売れる!」という本であっても最初から大量に刷るのはごく一部の例外で、少しずつ増刷を重ねて部数を積み上げていくのが通常のやり方です。話題の本や一括採用など短期勝負の本とは違うやり方ですが、規模を問わず、そうやって地道に販売を続けていく本が出版社の売上を支えている場合は少なくありません。
他社の例で恐縮ですが、童心社の絵本『いないいないばあ』は、つい最近、累計500万部を突破されたそうです。これも他社の例ですが、青春出版社の『試験にでる英単語』は累計1,500万部超だそうです。
「発売前から増刷決定!」のような惹句を見かけることがありますが、あれは新刊のタイミングでの宣伝などがうまいことハマったからであり、長く売り続けることで増刷を重ねているアイテムとはやや趣が違います。上記の500万部とか1500万部とかは出版物全体から見ても例外的ですが、中小零細出版社であっても一年に一回とか、もしくはそれ以下のペースで地味に増刷を重ねて数万とか十数万といった書籍を持っていたりすることは珍しくありません。
増刷は、「売れた」、もしくは、「売れている」ことの証です。「売れた(売れている)ものを(もっと)売る」のは営業の基本中の基本です。だからこそ、売れた(売れている)ことを読者や書店に伝えるのは出版社の営業にとって非常に重要な業務のひとつと言えます。また、増刷の場合は当然のことながら製作コストが発生しますから、売上を立てることでコストをなるべく早く回収すること、それも全体の流れを見ると大事な話になります。増刷を「誰に向けて」「どこで」「どうやって」「どれぐらい」告知するか、もしかしたらそれは出版社の経営を左右しかねない業務なのかも知れません。
語研では増刷のお知らせをWebサイトでまとめて行なっています。もちろん、営業が回っている書店の方に直接伝えたり、FAXや郵送DMなどを使ったり、最近だとeメールやTwitterなどを使ったりということもあります。広告出稿とタイミングが合う時には新聞や雑誌の誌面を借りて増刷をお知らせしたりもします。
ですが、正直に言うと、現状、告知が足りているとはとても言えません。もちろん増刷以前の問題として新刊も近刊も告知が足りていないという中小出版社の現実もありますが、それを差し引いても増刷についての告知はまったく足りていません。
この状況を何とかしたい。常にそれを考えています。
話は変わりますが、ここで「近刊(これから世に出てくる本)の告知も足りていない」ということで少し。
「これから世に出てくる本」の情報は、Googleでも、Amazonでも、Facebookでも、Microsoftでも、Appleでもどうにも出来ない情報のひとつです。これからその本を作る側である著者や出版社でなければ知りえない情報であり、それを世に知らしめるためには著者や出版社が自ら積極的に出していくしかない情報と言えます。
この「これから世に出てくる本」を一元化できたら書店にも読者にも便利で、著者や出版社にとっても有難い話になるはずですよね。
日本ではJPO(日本出版インフラセンター)が中心となり、出版社が自ら発信する近刊情報を集めて書店や取次に配信する「JPO近刊情報センター」という仕組みが動いています。2011年4月の立ち上げから既に368社の出版社が参加し、毎日二回情報が更新されています。これによって「これから世に出てくる本」の情報は今まで以上に扱いやすくなっています。現時点ではこの仕組に全ての出版社・書店が参加しているわけではありません。が、徐々に参加出版社・書店は増えており、大きな流れが生まれ始めています。
こういう流れを「増刷」についても作れないだろうかということを以前から夢想しています。
私はJPO近刊情報センターの普及促進サブワーキンググループのリーダーでもあり、JPO近刊情報センターの近刊情報を気軽に検索・閲覧できる一般向けのWebサイト「近刊検索β」の製作者でもあります(文字通りの意味の製作で、サイトの中身のPHPやXSLTを書いています)。
拙い経験ではありますが、そうした経験の中で、「増刷情報の一元化はやはり役に立つ」と確信しつつあります。近刊情報の普及もまだまだです。電子書籍の近刊情報についても取り組む必要がありそうです。それらの優先度は思ったより高いものです。ですが、時間はかかるかも知れませんが、それらとは別に増刷情報の一元化にも取り組んでみたいと考えています。
まあ、その前に自社の出版物をきちんと売るのが先なんですが。
ということで語研の増刷のお知らせです。
10月『インドネシア語基本単語』第11刷
10月『フィリピノ語基本単語』第11刷
10月『イタリア語基本単語』第10刷
10月『ドイツ語基本単語』第10刷
11月『使える・話せる・ドイツ語単語』第2刷
※この原稿を最初に版元ドットコムの事務局に送った後、さらに9点の増刷が決定しました。
『全問正解する新TOEIC TEST990点対策』第3刷
『全問正解するTOEFL ITP TEST文法問題対策』第2刷
『TOEFL ITP TESTリスニング完全攻略』第2刷
『TOEFL TEST究極単語(きわめたん)5000』第2刷
『新TOEIC TEST文法・語彙問題秒速解答法』第4刷
『新TOEIC TEST文法・語彙問題完全攻略580問』第4刷
『新TOEIC TESTリスニング完全攻略』第2刷
『新TOEIC TESTリーディング完全攻略』第2刷
『使える・話せる・フランス語単語』第6刷
こちらの9点の増刷についてはFAXでもご案内しております。
語研(書店ファックス)9点怒涛の増刷
語研の増刷情報は以下のページで随時更新中です。
語研:増刷のご案内