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第19回 ジュンク堂書店プレスセンター店「JP(ジェイピー)」

東京・内幸町(日比谷・霞ヶ関)の日本プレスセンター内にあるジュンク堂書店プレスセンター店。2014年にはお泊まりイベントが開催され、話題を呼んだお店ですね(イベント名称は「ジュンク堂に住んでみる」。詳細はこちらを)。

お泊まりイベントが好評だったようで、ジュンク・丸善では、その後、何度も同主旨のイベントが開かれていますが、その記念すべき第一号店というのが、ロケーション的にはややお堅いイメージのある官庁街にあるお店というのが、今思うとやや意外な感じもしておもしろいですね。2017年9月には開店15周年を迎えたとのことで、記念のキャンペーンも開催されていました。
 

「JP(ジェイピー)」は同店発行のフリペ。ジュンク堂書店には『書標(ほんのしるべ)』という、丸善・ジュンク全店で無料配布されている、出版社のPR誌と同じ体裁のA5判・月刊の小冊子がありますが、こちらのフリペはプレスセンター店が独自に発行しているものです。サイズはA5判裏表の2ページと、いたってシンプルなつくり。書影をのぞいてオール手描きで、よく見ると、書影の枠線まで手描きになっています。見やすい手描き文字で書かれていて、デザインもいいですね。数こそ多くはないものの、イラストも効いています。

10月に同店で入手した2017年10月号、Vol.44は、表に4点、裏に4点のおすすめ本が掲載されたシンプルな内容。基本的には本の紹介が中心の内容ですが、過去には、ページ数が多い号もあり、開くと中にすごろくが掲載されている号までありました。

このフリペを紹介したいと思ったのは、とにかくシンプルで、必要最小限の情報がきゅっと詰め込まれたミニマルなタイプのフリペとして、とても完成度の高い1枚だからです。

連載過去回では、職人の技としかいいようのない、プロ顔負けのフリペや、紙面の隅々まで作り手の思いがぎゅーぎゅーに詰まっていてあふれ気味になっている、熱量の高いフリペも紹介したことがあります。それらはそれらでもちろんすばらしいし、個人的にも好きなんですが、すべての本屋フリペがそのような、徹底的につくりこまれたものでなくてはならない、というわけではありません。

お店の基本情報、お店からのお知らせ、フェア情報、その月のおすすめ本を、見やすい紙面に、最小限の文章量で、ごくごくシンプルにまとめる。そんなフリペの基本ともいうべきものがあってもいいと思いますし、あってもいいどころか、それこそがフリペの王道なのかもしれません。読み物やマンガや身辺雑記的エッセイなど、本の紹介という観点からは脱線気味のコンテンツが読めたりするのも本屋フリペの楽しみであり、いいところだったりもしますが、こういう飾り気のないシンプルな直球のフリペもいいものです。

この「JP」は、最小限の情報だけでも、読者にとって益の多い、日々の買い物を楽しくしてくれるフリペになりうるのだという好例ではないかと思います。

自分にもできるかも、と本屋フリペに手を出したことのない書店員にも思わせてくれる、そんな敷居の低い(ように見える)フリペですが、この「JP」のすごいところは、先にも書いた通り、必要最小限の情報を、見やすい描き文字でシンプルなデザインにまとめあげているところ。

見よう見まねで実際につくってみるとわかりますが、ワープロや表計算で枠を切ったところに、規定の字数を流し込むといった、定型でできる作業と違い、手描きでこのような見やすい紙面をつくるのは、実はけっこう大変で、センスと工夫とが必要になります。A5判の用紙1枚のペーパーだなどとあなどるなかれ。いろいろな意味で、本屋フリペの奥深さを感じさせてくれる1枚だったりするのです。

ぼくが入手したときは新刊コーナーの棚の中に置いてありました。同店を訪問する機会がありましたら、新刊コーナーのチェックをお忘れなく。


 

発行店:ジュンク堂書店プレスセンター店
頻度:たぶん月刊

sorainu_ico空犬太郎(そらいぬたろう)
編集者・ライター。主に新刊書店をテーマにしたブログ「空犬通信」やトークイベントを主催。著書に『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会)、『本屋図鑑』『本屋会議』(共著、夏葉社)、『本屋はおもしろい!!』『子どもと読みたい絵本200』『本屋へ行こう!!』(共著、洋泉社)がある。
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