第5回 「子どもの本のフリペ その2」
夏休みシーズンの特別編ということで、前回に続いて、児童書専門店または児童書売り場で発行されている「子どもの本フリペ」をまとめて紹介します。
●「絵本通信」
児童書好きの方のなかにも、ひょっとしたら代官山蔦屋書店(東京)の児童書フロアはチェックから漏れている人がいるかもしれません。同店は、売り場ごとの独立性が高く、専門店が一つの場に集まったような雰囲気になっていますが、児童書売り場はとくにその傾向が強いといっていいかもしれません。キャラクターものなどの扱いは廃し、売れ線に頼らない、オーソドックスでしっかりした品ぞろえは、さながら大型書店のなかに児童書専門店が入っているような、そんな雰囲気になっています。
同店の児童書コンシェルジュが手がけているフリーペーパーが「絵本通信」。以前の号は、A4を三つ折りにしたような体裁でしたが、その後判型が変わり、現在はA6判になっています。同店の児童書担当スタッフが店づくりにかける思いが紙面によくあらわれた、読むところの多い、しっかりしたつくりのフリペになっています。
●「コガモ倶楽部」
ティール・グリーンin シード・ヴィレッジ(東京)は、東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩数分のところにある絵本のお店。小さなお店ですが、本の売り場の奥にはティールームも併設されていて、お店で買った本を片手にお茶を楽しめるほか、展示やイベントにも活用されています。
同店のフリペ(お店では「新聞」と呼んでいます)「コガモ倶楽部」は、奇数月に発行。丁寧にデザイン、レイアウトされた、とても読みやすい紙面のフリペで、A4両面にオールカラーで印刷されています。表は本の情報を、裏はイベントの情報を中心にまとめていますが、裏面の情報をざっと見るだけで、同店が多彩なイベントに力を入れていることが伝わってきます。
●「プーの森便り」
プーの森(東京)は、JR三鷹駅から南側に伸びる商店街の途中にあるお店。子どもの本のお店ですが、本以外にも自然食品や雑貨を扱っているため、小さいお店ながら、店内はとてもにぎやかな雰囲気になっています。
同店発行の「プーの森便り」は、A4判8ページに、子どもの本の情報や読み物が、とにかくぎっしり。情報量の多さと読み応えでは、前回今回で紹介しているフリペのなかでいちばんかもしれません。
本連載で紹介しているフリーペーパーは、多くが、店主や担当者の個人的な熱意で発行、継続されているもの。複数の担当者がいる規模のお店・売り場ならともかく、個人経営の小さなお店で、定期刊行物を製作、発行し、それを続けていくのは大変なはずです。とくに、この「プーの森便り」や前回紹介した「えるふ通信」のように情報量の多いものは。こういう、売り手の思いがぎっしりとつまったフリペが継続して発行されているというだけで、読者としてはうれしくなりますね。
●「りとるのいす」
児童書専門店「子どもの時間がある本屋 りとる」。かつては、JR三鷹駅北口を出てすぐのところに店舗がありましたが、残念ながら2011年に閉店となってしまいました。現在、店主の中野玲子さんは、無店舗の児童書専門店として、主に学校や幼稚園などに本を届ける仕事をがんばっています。
店舗があったころからずっと継続して同店が発行してきたのが、「りとるのいす」。A4判数ページに、新刊情報がまとめられています。紙面はコラージュのように書影や解説文を切り貼りして構成されていて、まさに手作り感あふれるフリペとなっています。現在は、購読希望者に郵送されています。
●「ぴえにだより」
フィンランド語で「小さな橋」の意だという、ちょっと不思議な響きの店名のピエニシルタ(大阪)は、豊中にある絵本と雑貨のお店。2016年1月から月に2日間の変則営業となっています。くわしくは、同店のサイトに掲載されている「大切なお知らせ」をご覧ください。
同店発行の「ぴえにだより」は、やさしいイラストが紙面を飾る、小さくて(小さく畳まれていて、本当に小さいのです)かわいいフリペです。
「絵本通信」
発行店:代官山蔦屋書店 東京都渋谷区猿楽町17−5
発行頻度:不定期
「コガモ倶楽部」
発行店:ティール・グリーンin シード・ヴィレッジ 東京都大田区千鳥2−30−1
発行頻度:隔月奇数月
「プーの森便り」
発行店:プーの森 東京都三鷹市下連雀3-30-12-104
発行頻度:月刊
「りとるのいす」
発行店:りとる(無店舗)
発行頻度:季刊
「ぴえにだより」
発行店:ピエニシルタ 大阪府豊中市熊野町4-1-8
発行頻度:不定期
●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店
編集者・ライター。主に新刊書店をテーマにしたブログ「空犬通信」やトークイベントを主催。著書に『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会)、『本屋図鑑』『本屋会議』(共著、夏葉社)、『本屋はおもしろい!!』『子どもと読みたい絵本200』『本屋へ行こう!!』(共著、洋泉社)がある。