第1回 大盛堂書店「大盛堂書店2F通信」
JR渋谷駅のハチ公口を出ると、スクランブル交差点の向こうに、よく目立つ青字の看板が見えます。新刊書店の立地としてはこれ以上はないといっていいところにあるのが大盛堂書店です。場所柄もあり、1階はファッション誌などが目立つ、いかにも渋谷の本屋さんという感じですが、店内奥の階段を上がると、というか、正確には上がる途中から、なんだか店の雰囲気が変わり、上がりきると、1階とはまったく雰囲気の違う品ぞろえのフロアが待っています。
2階を担当している山本亮氏がほぼ独りで手がけているのが、同店発行の本屋フリペ「大盛堂書店2F通信」。本屋フリペには、我が道を行くというか、つくりも中身もユニークなものが少なくありませんが、なんでもありの本屋フリペ界のなかにあって、この「大盛堂書店2F通信」は、ユニークという意味では突出しているといっていいかもしれません。
なにしろ、よその店・チェーンの書店員のインタビューやアンケート特集が掲載されていたり、よその書店のフリペが合わせて綴じられていたりします。本屋フリペなのに、売上ランキングも自店のイベント案内(頻繁に行われているのに)もなく、新刊書店が自店の宣伝や拡販をねらってつくる販促物とは思えないような独自企画・独自記事を連発。本稿執筆直前に直近数号をまとめていただいたんですが、よその書店員と版元営業マンの対談が、なんと6回にわたって分載されていました。しかも最後の号には「対談の注釈のみの掲載です」などとあり、仰天。どこの本屋のフリペなのかもよくわからない、というか、そもそも本屋フリペなのか、という領域に突入している感があり、読む者を楽しく惑わせてくれます。
中身だけでなく体裁もユニーク。手描き文字も、折り方綴じ方も(いい意味で)ゆるゆるです。最近の号こそ、A4の用紙を四つ折にしたふつうのかたちになりましたが、以前のものは、適当に折って綴じただけにも見える独自過ぎるスタイルでした。バックナンバーが壁面にずらりと並ぶ様子にも妙な引力があって、ついつい手が伸びます。
いろいろなスタイルが乱立し、そのありようが一様でない本屋フリペ群のなかでもひときわ異彩を放っているこの「大盛堂書店2F通信」。編集者・出版営業・作家など、業界人・プロの間で人気が高いのもうなずけます。
これを最初に紹介するのもどうかと思ったのですが、本屋フリペがいかに自由な発行物かを知っていただくには、これ以上のトップバッターはないとも言えるかもしれません。とにかく、異色過ぎて、滅法おもしろい本屋フリペ。それが「大盛堂書店2F通信」です。
大盛堂書店2F通信
発行店:大盛堂書店 東京都渋谷区宇田川町22-1
発行頻度:ほぼ月一回発行
担当者:山本亮さん
●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店
【お知らせ】
その大盛堂書店の山本氏が、4月からコミュニティFM「渋谷のラジオ」に出演するとのことです。毎月1回、金曜午前8〜9時で、第1回は4/22。第1回目はゲストにショートショート作家の田丸雅智さんを迎え、本の話をするそうです。
「渋谷のラジオ」公式サイト https://shiburadi.com/
【お知らせ】(※本イベントは終了しました)
本屋フリペの作り手が出演、本屋フリペの世界について語るトークイベントがあります。
beco talk vol.29
本を本気でおすすめしたい
〜「にゃわら版」でんすけのかいぬしが語る本の売り方〜
日時:2016年5月13日(金)
OPEN 19:00 START 19:40(〜21:00)
会場:beco cafe(東京・西荻窪)
会費:1000円(ワンドリンク付)
出演:でんすけのかいぬし(セントポールプラザ書籍店)、空犬太郎
予約・お問い合わせは、会場のbeco cafeに、電話(03-6913-6697)・メール(w.bookendless [at] gmail.com)・twitter(@bookendlss)のいずれかでお願いします。
(版元ドットコムではイベントに関する問い合わせ・予約は受けられませんので、ご注意ください。)
本屋フリペ「本屋でんすけ にゃわら版」は、本連載でも紹介予定です。

編集者・ライター。主に新刊書店をテーマにしたブログ「空犬通信」やトークイベントを主催。著書に『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会)、『本屋図鑑』『本屋会議』(共著、夏葉社)、『本屋はおもしろい!!』『子どもと読みたい絵本200』『本屋へ行こう!!』(共著、洋泉社)がある。