51年目の現在地
はじめまして。フィルムアート社営業部の千葉と申します。今の会社で5年半、学生時代に英治出版というビジネス系版元で丸3年、営業として働いています。会社規模はどちらも10名程度でして、自分が頑張れば頑張るだけ自由に仕事が作れるので、本を作ること以外は割と何でもやってきました。
昨年創立50周年を迎えた弊社は、全国の沢山の書店さんで記念フェアを開催させて頂きました。メモリアルな年ということで、蓮實重彥さんの著作を2冊復刊し、販売用の記念トートバッグなどを作成しました。また、これまでお世話になった著者さんや、書店員の方々にコメントを頂き小冊子にまとめました。こちらですべて読むことが出来ますので、ぜひご一読下さい。
http://filmart.co.jp/wp-fa/wp-content/uploads/2019/05/filmart_50thbook_.pdf
周年記念として何かやろう!という話が出た頃、理想と現実の両面から検討をはじめました。ひとまずお金や時間ことは外に追いやり、「これをやりたい」「できたらいいね」ということを一通り洗い出すというものです。平行して、周年記念事業として他社は何をやっているのかを、業界内外の事例をひたすらリサーチしていきます。立派な特設サイトを作ったり、著名な作品の新訳を出したり、セレモニーを行ったり…というのが多かったです。他社版元の営業さんに聞いたりもしましたが、そもそも何もやらない、というところも少なくなく、じゃあ何がフィルムアート社っぽい50周年の祝い方なのかなぁ…とぼんやりと悩んでいくうちに時間が過ぎていきました。
結果的には、最初に書いたような「現実的に出来ること」を精一杯頑張ろうという方針になりました。出版社なので売上で書店さんに貢献しよう、まずは注目を集める書籍を作って、全国各地で開催可能なフェアを組み立て、そのためにしっかりとした販促物を作ろう、というものです。せっかくなので、と50周年記念特別ロゴを作り、昨年度刊行の書籍にすべて付けました。同時に、これまでお世話になってきた著者・デザイナー等関係者の方々、いつも丁寧に売って下さる書店員の方々へ改めて御礼のご連絡もしたいと考え、冊子の制作というかたちを借りさせて頂きました。
様々な温かいお言葉を頂くなかで、いま出版業界で働くことの意義を改めて考えさせられました。バブルが弾けたあとに生まれた私は、「元気だった出版業界」を実感したことがなく、これまでは歴史の1ページのような認識でしか持てていませんでした。ですが50年のあいだ、それぞれの時代の思い出話をされている方々の声を聞くと、自分がそれを知らない、分断された世代という認識は薄れ、長い出版の歴史の果てに、みんなで立っているという意識に変わっていきました。
書籍というかたちだけでなく、あらゆるコンテンツに溢れているいまの世界、「選ぶこと」をやめてしまった社会に対して、私たちが提案しているものは何なのか。書籍ではなく、コンテンツ制作者としての意識を高めながら、現在地から先の未来を歩んでいきたいと思います。