「地球」2作
8月が終わりました。
日本では、平和を思う特別な月ですね。
昨年2018年の8月6日、ひだまり舎は出版社としてスタートしました。
8月の中でも特に強く平和を祈念するこの日をスタートの日に選んだのは、読者に伝えたい平和への思いを、つねに自分にも思い起こさせるためでもあります。ひだまり舎は、「子どもたちとその周りの人たち」をターゲットにした本を作っていきます。伝えたいことは、平和、いのち、幸せ。次の世代へ何を伝えるのか。出版人としての責任をもって本作りをしていこうと思っています。
2019年4月に第1作目の『ちきゅうがわれた!』(田島征三 絵/国広和毅 文)
を刊行しました。
さまざまなご縁をいただいて出来上がったこの絵本は、お釈迦様の前世の物語を集めた説話集ジャータカをモチーフにしています。
きいたこともないような大きな音を聞いて、「ちきゅうがわれた!」と言うワニのことばに、動物たちは大挙して逃げ出します。動物だけでなく、植物も魚も、見渡す限りの「いのち」たちが走っていくシーンはページから飛び出しそうな迫力です。ほんとうに地球は割れたのでしょうか?確かめにもどった動物たちが目にしたものは、ワニがひるねをしていた場所に落ちていた、マンゴーの実…。
昔から語り継がれているお話ですが、情報が氾濫する現代社会の様子を皮肉っているようなストーリーです。さらに現代は、「見えていること」すら、すべて正しいとは限らないご時世。何を見て、何を真実とするのか?本を閉じた後に残る、もやもやした感覚が、そうしたことを考えるきっかけになるのではないかと思います。
8月刊行の2作目『地球の仲間たち スリランカ/ニジェール』(開発教育を考える会 編)
は、ひとりの子どもの生活を見ていくことによって、文化の違いや、その国に対する興味・理解につながっていくようなしくみの絵本です。これまで教育現場で写真教材として使用されてきたものを、より多くのひとたちに楽しんでもらえる形にと、絵本の形で刊行しました。
国際理解の第一歩に、というと堅苦しいのですが、新しい形の世界との出会いをお届けできればと思います。
編著者の「開発教育を考える会」は、青年海外協力隊に参加し、帰国後教育に携わっている人達のグループです。カバーソデに、開発教育を考える会のことばを掲載しました。
「1980年代、東アフリカの干ばつがさかんに報道されていたころ、にこやかに笑うケニアの少年の写真を見せると『うそだ!笑えるはずがない』と、普段のアフリカを拒否した生徒がいました。その時が私たちの開発教育の出発点でした。
…(中略)…
地球上のあらゆるところに家族の営みがあり、子どもたちがいる。それぞれの土地の気候風土にあった生活があり、文化がある。その文化には優劣がつけられないこと、みな同じ仲間であることを知らせたい。」
この思いは、版元であるひだまり舎の思いでもあります。本当の意味での国際理解こそが、平和につながるものと信じています。
はからずも、「地球」を冠する絵本が2作続くことになりました。平和ということも、地球という環境あってこそ。大事にしていきたいものです。
歩き出したばかりのひだまり舎。この先どんな出会いが待っているか、楽しみです。1作1作、大切に本を作って、読者に届けてまいります。