本屋の本の出身地の話
ぼくの所属するNUMABOOKSは本にまつわる様々な活動をしている。その中で2012年に本屋B&Bを共同経営にてオープン、2017年からは出版社を立ち上げ、一般流通していないB&B限定販売の本も含めて、現在7冊の本を出版している。
それとは別に、ぼく個人の活動として「H.A.B」というレーベルで本の出版と本屋、それと取次の仕事もしている。
この2つの仕事を両立できるありがたい環境で働いているのだけれど、これだけ近い領域で別の名義で仕事をしていると、混乱もありつつ普通では経験できないこともあり、すこし不思議な角度で、視野も広くなる。
同じ出版、と言っても、それぞれ本の流通先は異なる。NUMABOOKSは「トランスビュー」という出版社を中心とした、出版社直取引の共同チームに流通をお願いしている。H.A.Bからの出版は、「ツバメ出版流通」という中小取次に。H.A.Bが取次として他社の本の流通を受託するときは、「八木書店」というこちらも中小取次に協力してもらっている。最終的には同じ書店の店頭に並ぶ本でも、流通ルートはバラバラでそれぞれに良さや違いがある。最初は一つ取引先が増えるたびに混乱したものだけれど、慣れてしまえばそれぞれの違いを理解しながら店頭を覗くだけで、本の内容や種類といった多様さとは別の、流通出身地の多様さみたいなものが見えてくるようになる。君はトーハン出身、君は地方小、君はトランスビューだね、といったような。実は書店員さんにとっては、そういった出自は仕入・返品先としてちゃんと管理されているものなのだけれど、出版社の視点で見なおすと流通ルート別の傾向が見えてくる楽しさがある。一度出版した本の流通先を変えることは難しい(不可能ではない)が、たとえばある新規出版社から流通の相談をもらったときに、そのジャンルならこの流通先がいいのではないか、というようなコメントができるようになる。
本に対する解像度が上がったみたいで、そういう知識や経験を得ていくことは、本づくりや本を売るのとはまた違う楽しさもある。と思っているのだけれど、だいぶニッチな趣味だという自覚もあり、こういう話をすると「?」という反応をいただくこともしばしば。わりと寂しく、ぼくは常にこの楽しさを共有できる友人を募集しています。
NUMABOOKSの最新刊はこちら。
*こちらはトランスビュー出身(扱い)です。
『ベンガル料理はおいしい』(石濱匡雄・著、ユザーン・監修)