〈北海道から初出店!〉神保町ブックフェスティバルに参加して
今回初めて「神保町ブックフェスティバル」に参加させていただいた。版元ドットコム事務局から、北海道から参加してみませんかとお声がけいただいたのだ。
東京で、それも神保町で、本のイベントに参加できるなんて思ってもみなかった。とても楽しそうなお誘いに、すぐに飛びついた。札幌でも古くから版元ドットコムに加入して窓口になってくださった亜璃西社さん、そして寿郎社さんと柏艪舎の3社で参加することになった。
去年の共和国さんの出店報告などを参考に、持っていく本を選んだり、販売価格を決めたり、看板や値札を作ったり、準備段階からとても楽しかった。札幌には10社以上出版社があり、紀伊國屋書店札幌本店さんが「どさんこ出版社の本の屋台村」というイベントを何度か企画してくださっている。各出版社がワゴンを出し、オススメの本を直販するというイベントだ。この時も、読者と顔を合わせて販売できるという楽しさがあった。今回もそれが楽しみだった。
開催初日の10月27日(土)は雨の予報だった。前日から東京入りして、中止になるかもしれないという不安を抱えながら朝を迎えた。朝方まで雨が降っていたが、中止の連絡が来なかったので、会場に行ってみた。すでに、荷物が到着していて、みなさん集まっていた。今回ワゴンをご一緒させていただくころからさんと一緒にワゴンを並べ、看板を取り付け、持ってきた本を並べる。あちこちのワゴンからも会話が聞えてくる。「この子はこっち」などと、みなさん自社の本を自分の子供のように愛情たっぷりに扱っているのが印象的だった。
寿郎社さんが「北海道の出版社」をアピールする看板を作ってきてくれた。弊社は130冊ほど持っていった。ワゴンには全タイトルを出し、80冊ほど並べた。目玉は『完本 丸山健二全集 01-04 争いの樹の下で』4巻セットだ。定価25,500円を10,000円で販売した(ずっと欲しかった、という方に買っていただいた)。NHKで「どこにもない国」としてドラマ化された『満州 奇跡の脱出』や国内文芸、海外文芸、写真集なども並べた。
一日目は並べ方も要領を得ず、ほとんどの本を背表紙が見えるように並べていた。最初に売れたのは、北海道の鉄道写真集『ふるさと銀河線・駅写真集』だ。『北海道廃線駅跡写真集』と合わせてあっという間に完売した。しかし大判の写真集は後ろの方に立てて置いていたため、他のものはほとんど手にとってもらえなかった。
二日目は作戦を変更して、写真集などをスタンドに立て、平積みする本も増やした。面出しすると手にとってもらえる機会が増え、先に売れて行った。さらに簡単な手書きPOPをつけると、どんどん手に取る人が増え、初日より売上げが伸びた。また、買いやすいように金額ごとに分けて並べていたのだが、金額に関係なくジャンルで分けて並べたほうが、お客さんからは見やすそうだった。
本を立体的に並べる工夫も必要だと思った。関西の版元さんのブースでは、本棚を使っていた。平積みにする時の底上げにしたり、奥の本を見やすくするための簡単な棚や、ブックエンドなどがあるとよかったなと思った。
本を手にとってくれた人に声をかけて、どんな思いを込めて作った本なのか、作者がどんな人なのか、装丁のこだわりなどを直接説明できる。しかも、自分が企画・編集した本を、直接読者にオススメできる。そんな機会はほとんどないので、会話をするだけでも楽しかった。その結果、興味を示して「じゃあ、読んでみる」と買ってくれた時は、とても幸せだった。
北海道、札幌の出版社3社並ぶ形にしていただいたので、「初出店の北海道の出版社です」「北海道の本が揃っています」などと声をかけて、足を止めてくれる方には、出版目録をどんどん手渡した。会社の名前も知ってもらおうと、なるべく「札幌の柏艪舎です」と社名もアピールした。本好きの方ばかりなので、とても良い宣伝になったと思う。毎年、このブックフェスに来ているという方からは「北海道の出版社なんて初めてだね」声をかけられた。
二日間通して、人通りが途切れることはなかった。こんなにたくさんの人が本を求めているのか、ととても驚いた。人込みが苦手な私には人が多すぎて、とてもメインの「すずらん通り」の方へは出て行けないほどだった。売るのが楽しくてあまり店を離れていたくないということもあり、大手の出版社のブースはまったく見ていないが、著者を招いてサイン会を開いたり、限定で絶版本を販売していたりして行列ができていたそうだ。その他にグッズなども販売していたらしい。次回はサイン本を持って行くのもいいかもしれないと思った。今回のブックフェスのために『完本 丸山健二全集』の5枚組みの特製しおりを作ってプレゼントしたが、とても喜んでもらえた。
「本の得々市」は安さも魅力なのだろうが、掘り出し物を探しに来ている人が多いという感じがした。弊社から20年近く前に刊行したエドワード・L・ビーチ著『深く静かに潜行せよ』や、メルヴィルの処女作『タイピー』など、他ではあまり手に入らないような海外文芸は、即断即決という感じで買われていった。また、編集者やデザイナーなども来店し、ドイツ装で作った木村伊兵衛賞作家の岡田敦さんの写真集『MOTHER』は、装丁に目をとめて手に取る人が多かった。
メルマガやツイッター、フェイスブックなどで、ブックフェスに出店することを告知していたが、それを見て、弊社の本をいつも買ってくださっている読者の方や、装丁を担当してくださっているデザイナーさんなどが、わざわざうちのブースを探して訪ねてくださったのがとても嬉しかった。『完本 丸山健二全集』は全部買ってるよ、と声をかけてくださったり、この本はないのか、と弊社の本のタイトルを名指しして探しに来てくださった方もいた。
寿郎社さんのアイヌ関係の書籍がよく売れていて、初日で完売していた。「北海道の出版社です」というアピールをしていたので、弊社ももっと北海道色の強い本をたくさん持ってくればよかったなと思った。「北海道」というキーワードで興味を示してくれた方も、一度ワゴンに来ると、ジャンルを問わず海外文芸、国内文芸、写真集などをじっくり見てくれるという印象だった。予想よりはるかに売れて、3箱分持って行った本が帰りには1箱分になった。
あとやはり、普段メールでしかやり取りしていない版元ドットコムの事務局のみなさんや、会員社のみなさんとお会いできたのが嬉しかった。みなさんとても個性が強くて面白い方ばかりだった。自分で出版社を立ち上げてしまうような方はやっぱり違うなと思った。
今回、私たち同様に初出店された関西の版元の方々とも知り合うことができ、大阪の「まちライブラリー」でやっているイベントと大阪営業に来るように、とお誘いいただいた。道内の版元同士は会う機会もあるが、道外の版元の方たちとお会いする機会はほとんどない。今回の出会いは、とても貴重な収穫となった。
本当に事務局や東京の会員社のみなさまには、何から何までお世話になった。版元ドットコムがなければ絶対にできない経験だった。この場を借りて心からの感謝を伝えたい。本当にありがとうございました。神保町に集う本好きのみなさまにも、日本全国に小さくて個性的で面白い版元がたくさんある、ということを知っていただけたと思う。
東京から戻ってすぐ、今回は多忙で現場に行くことができなかった亜璃西社さんを交えて、報告会と来年へ向けての反省会を開いた。次回はどんな本を持っていこうか、どんな工夫をしようかと、夢と希望が広がる会合だった。また、来年もぜひ参加させていただけたら、こんな嬉しいことはない。