見果てぬロード・ムービー──30年目のバイク車検
また2年生きてしまった(別に悔やんではいない)──そう思わせられるのが、2年置きのバイク車検の時。この5月が、スズキ・イントゥルーダー(スズキ自身はイントルーダーと表記)750の30年目の車検だった。
今年もとっくに見納めた桜花の下の勇姿、というより艶姿(あですがた)を掲げておこう。いつか遺影になるだろう。
何年か前から、まだまだ30年は付き合うぞ……いや、実のところどちらが長生きするか分からない、などと口走ってきたが、本当に30年目が来てしまった。
さて、どちらが先に散るのだろうか。
このバイクについて、確か雑誌CMに長靴姿の高倉健が起用されていた時期があった。それは『GOGGLE』(モーターマガジン社、1984年7月創刊)というバイク雑誌で、現在も刊行中。私は、創刊号から数年間、買い求めた。
少し前、手持ちの5号分をめくってみたが、どこかの納屋らしき建物の中、バイクの傍で佇んでいる長靴姿の高倉健──その情景ははっきりと覚えている──を見つけることはできなかった。代わりに、このバイク発売(1985年)の翌年、別の掲載広告(第3巻1号)を見つけた(これから推測すると、高倉健登場はバイク発売直後だったか)。その広告ページを掲載させてもらう。
キャッチ・コピーにえらく力が入っている。きっと、モーターサイクル業界で長く仕事をしてきたコピーライターによるものだろう。二輪にしろ四輪にしろ、今ならここまで書き込まないはず。如何にも80年代っぽい、と言われるだろうか。けれど、「シーサイドロードを流すように走るとき、いったい何人の視線を集めるだろうか」とまで書かれると少々気恥ずかしい。そういうコンセプトだったんだね──。
雑誌で初めて見た時の驚きと欲望の蠢きは未だに覚えている。私が買ったのは発売3年後だったが……やっぱりナルチシズムをくすぐられて、まんまとのせられたのだったか(だが、正直、今この広告を見てもなおときめく。流行りの大型スクーターには全く無縁の “機械” の美しさ、官能のざわめき)。
なおこの時期は、1984年にヤマハのビラーゴ750、85年にイントゥルーダー、そして88年にホンダのスティード400/600と立て続けに発売され、日本におけるアメリカン・バイクの絶頂期であった。
トヨタ(四輪)でもホンダ(二輪)でも、業界を代表するメーカーが “人真似・万人向け(=いいとこ取り・個性なし)” で逃げ切ろうとするから、街を走る日本車にろくなデザインのものが無い(嗚呼、プリウス!)。自動車業界を指標にした経済の浮沈しか頭に無い──だから「アベノミクス」なんぞに騙される──連中のセンスもまた然り。