サバイバーになれるか?
2017年10月、1年6ヵ月ぶりに新刊を世に放ちます。
題して『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』(Create Media編)
、親からの虐待を生き延びたサバイバーたちが書いた「親への手紙」100通をまとめたものです。
なぜ新刊がこんなに長く出せなかったのか、長く出せなかったのになぜ出せたか――これが本稿のテーマです。
私が代表をつとめる(といっても現在は「ひとり出版社」)dZEROは、2013年7月に立ち上げました。当初は社員3名+アルバイト2名という陣容で、東京都文京区本郷に事務所を構えていましたが、その後、かくかくしかじか、いろいろあり、現在は社員1名+サポーター1名で、本社・事務所を千葉市に置いています(dZERO前史と創立後の歩みはこちらをご覧いただけるとうれしいです。)。
創業から3年は、「dZERO→取次口座貸しの出版社→取次→書店→読者」という、長い長い道のりを通過させて本を読者に届けていました。3年間で、この長い道を通過させた作品は31点に及びます。
創業3年を過ぎたころ、右肩上がりの返品率を見て、通過させる道を変えるしかないなあと考えました。取次ルートをやめて、書店さんとの直取引にするということです。しかしながら、当時も現在も、dZEROスタッフは編集者のみ。編集が営業を兼ねているという状況でした。そこで、駆け込んだのがトランスビューさんです。工藤代表にお会いして、かくかくしかじか、こういうわけだから、とりあえず既刊の販売を引き受けてくれないかと。その場で快諾していただきました。
幸い、自社の出版社記号は創立時に取得していました。長い道のりを通すには、口座貸しの出版社の出版社記号を奥付やカバーに印刷せざるを得ず、また取次に見本出しするときの伝票類には、口座貸しの出版社名を書かなければならず、「なんだかなあ、独立国なのかどうかもわからないなあ」という気分で本を送り出していました。
2016年10月、取次ルートでの販売契約を解消し、既刊に自社の出版社記号による新ISBNを付けて、2017年1月よりトランスビュー代行取引で書店さんへの出荷を開始。その出荷開始までには、既刊の在庫を旧倉庫→仮倉庫→トランスビュー倉庫へと大移動させたり、旧ISBNの上に新ISBNのシールを貼ったりという力仕事があっただけでなく、悩ましいことの数々が待ち受けていました。
旧ISBNの市中在庫をどうするかなあ、とか、ネット書店に新旧ふたつのISBNで本が登録されちゃてまあ大変……など、かなりのドタバタ悲喜劇が繰り返されました。
が、ともかくも無事に販売ルートの切り替えが完了し、こんな案内を書店さんへファックスするまでこぎつけました。
そしていよいよ、独立国になってからの第一弾を10月に刊行する運びとなったわけです。その新刊、『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』は、編著者が既存のクラウドファンディングのプラットフォームを使わず、たった一人で制作資金を集めたことで刊行が実現しました。そこにも熱いドラマがありましたが、それは別の機会に。
本書の寄稿者100人は、虐待を生き延びたサバイバーたちです。出版、そしてdZEROは、果たしてサバイバーになれるでしょうか?