人手不足の現状をどう捉えるか
どの企業も人手不足が深刻だ。規模や業種は問わない。従来の事業を維持することが困難になっている。経営陣は「組織や人員、業務の見直し。儲からない事業はやめて、新たな食い扶持を見つけろ……」と声高に叫ぶ(一般論です)。会社員である以上、この厳命に応えるために努めなければならないが、現実は「言うは易く行うは難し」である。
現在、弊社の出版事業に携わる人数は(私が知る)最盛期と比較すると約1/3になっている。できることは限られるが、当然予算達成を求められる。これもまた「言うは易く行うは難し」なのだ。
人が減ったことで以前から担当していた書店営業と宣伝業務にくわえ、編集も担当することになった。毎日、目が回る忙しさで大変なこともあるが、役得だなと感じることの方が多い。
編集業務の魅力のひとつは、自分の関心が高い分野のプロ(著者候補)とつながりが持てることだ。さらに打ち合わせでは雑談も含め、著者と面と向かって言葉を交わすことができる。著者との時間は自分の考えや価値観を見直すきっかけを与えてくれ、視野を広げてくれる。こんな有意義なときを過ごすことができるなんて、とてもぜいたくなことだ。
編集の経験は書店営業の場面でもよい影響が出ていると思う。自分の言葉で書店員に本を案内することができるからだ。なぜ、この本を刊行するのか、他社の類似本との違い、編集時の裏話など。なにより著者の思いを直接聞いているため、これまでの伝聞とは違って断言できるので、ストレスが少ない。
営業の現場で拾い集めた書店員の皆さんの意見を著者に伝えることができるため、長期間の編集作業で、ときに凝り固まってしまう二人の考えをほぐしてくれることもある。これは一人でやっているからこそ、得られるメリットだと感じる。
自ら考え、動き、著者と一緒に本を作る。書店員に本を案内、売るための提案をする。より多くの人に存在を知ってもらうため宣伝に力を入れ、著者と読者が出会う場を提供するためにイベントを仕掛ける。その後も著者との関係は続いていく。
責任は重く、言い訳はできない。その分、やりがいも大きい。常に「当事者」というシンプルな構造が心地よくもある(強がりも含みます)。
とはいえ、カバーデザインや帯に載せる原稿、初版数、定価など、重要な判断を伴う局面を迎えたとき、いつも悩む。めちゃくちゃ悩む。そんなとき、頼りになるのもその道のプロの方々だ。ブックデザイナーや校閲担当者、印刷会社の営業マン、福岡の出版社の大先輩方……。私があたふたしているとき、多くの方が的確な助言をしてくださる。社内の人員は減っても、心強い味方がいる喜びは計り知れない(感謝に堪えません。本当にありがとうございます。)。
カッコいいことばかり書いてきたが日々の業務に追われ、著者をはじめ、関係する皆さんをお待たせすることがよくある(ご迷惑をおかけし、すみません)。さらに以前と比べ、営業で書店を訪問する時間が確保できなくなっている(こちらもすみません。猛省します)。
人数が減り、人手不足に陥ったことはマイナスばかりではない。一冊の本に対する思いは以前より格段に濃くなっているからだ。末永く読まれる本を一冊でも多く世に送り出し、一人でも多くの方の手に届けるため、これからも努力を重ねたい。
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昨年刊行した奥田知志さん(NPO法人抱樸理事長)の『わたしがいる あなたがいる なんとかなる 「希望のまち」のつくりかた』と、村瀨孝生さん(宅老所よりあい統括所長)の『増補新版 ぼけてもいいよ』の編集を担当しました。
あらゆる世代の困窮者と認知症状のあるお年寄り。おふたりが支援、介護する対象は異なりますが、通底する考えや人との向き合い方は似ていると感じます。講演会やトークイベント、打ち合わせの場において実践者であるおふたりの話を何度も聞けたことは私にとって幸運でした。

