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大トロ寄りの中トロか、どこ寄りの「ひとり出版社」か

2023年11月に本格始動し、まだ2冊を出したばかり、大阪・茨木市でひとり出版社をゆるゆると立ち上げ途中(途中という言い方が一番しっくりきます)のつむぐ舎と申します。

結局、出していくものでしか方向性などは示せないと思いますし、もう少し本を出してからこの原稿も引き受けるべきだろうと思ったのですが、次のタイミングは3~4年後とのことですので、せっかくのこの機会を、今後の方向性を考える公開ひとり編集会議の場にしたいと思います。
題して、「つむぐ舎、どこ『寄り』目指す?MTG」

ZINEブームと同じようなニュアンスで、「ひとり出版社」というカテゴリーが認知されてきている感がありますが、新しく増えつつあるひとり版元のカタチとしては
1.純粋に本が好きで、「自分で本をつくりたい」と立ち上げられた方
2.自分の書いたもの、考えを本にして出版していきたい方(文芸・思想系)
3.クリエイティブのカタチの一つとして「本(編集)」があって、デザインやビジュアルにこだわったモノづくりをしたい方
4.もともと出版業界などにいて、何らかの理由で辞められ、自分で「えいや」と立ち上げられた方
の4つに大きく分けられるのでは、と思います。
(もちろん、当てはまらずにご活躍のひとり版元の先輩もたくさんいらっしゃいますので、乱暴な私見お許しください)

かく言う私は、どれかと言われれば4番目なのかと思いますが、「○☓新聞の編集局長してました!」とか「雑誌○☓の編集長でしたが一念発起で退社して」とか、インパクト大のバックボーンのある方と違って、「編集業界を節操なく流れて一応この歳まで食ってきました」ぐらいではウリ文句にもならず、「本づくりを続けるには、いよいよ自分でやるしかなくなってしまったので」となんだかモゴモゴと言い訳めいた口ぶりになってしまうのも情けなく、3寄りの4か、2寄りの4もあるのか…などと松坂桃李のように逡巡しているワケですが。

ただ、零細とはいえ出版社勤務時代に、いかんせん企画会議でなかなか通らなかった記憶などはしっかり残っていて、一般書店に流通する本を…というスタンスで企画してしまう部分があり、とにかくこの2年ほど、ひとり企画書制作マシーンか、というほど企画書と叩き原稿ばかり作っていました(そのほとんどはボツになっています)。けれど、もしかして「ひとり出版社として受け入れられる企画」とは、そうではないのではないか??? とようやく思えてきました。

1冊目は、昨年1月に出した月刊育児雑誌時代からお世話になったイラストレーター・山口マサルさんの『10人の博士の昼休み』という作品集で、名刺代わりということで少部数にし、京阪神の回れる範囲の独立系書店さんを回りました。
(ちなみにこの本、今年の春に日本漫画家協会<里中満智子理事長>賞カーツーン部門の大賞を受賞したのですが、注文殺到かと思いきや静かなもので、在庫少なしのため「祝!大賞受賞」のFAXも書店にまけず、このまま品切れ重版未定になりそうです。トホホ…。

https://www.instagram.com/p/DLRvcFaxSkz/?img_index=1

その時思ったのは、独立系書店さんで「売れている本」と、一般書店で「売れている本」は違う!ということ。(そんなこと今更…でスミマセン)
そして2年目になると、独立系書店さんで売れている著者の方を、どんどん大手出版社さんが起用されていくことにも気づいていきます(上と同じく)。
 
小さな版元として求められているのは、まずは、やはり新しい作家の発掘なのだなあ。
その意味では、2寄りの「自分の書いたものを本にしていく」の方が、私のやっている「一般書店で生き残れそうな企画づくり」よりも、かなり「ひとり出版社」らしいとも言えそうです。
また、独立系書店さんで動いている人気の本としては、印刷所は藤原印刷さんなど、3寄りの「装丁などにこだわる、きれいな本づくり」というのもあると思います(というか、もはや必須?)。

個人の方が軽やかにZINEを出して、書店さんでも多く取り扱ってもらっているのを見ると、電卓叩いて、印刷会社に見積もりを何回もとりながら、正味と部数の計算をあーでもないこーでもないとかなりのエネルギーを使っているこの作業に、はたして意味はあるのだろうかと思えてきます。
本を出す意味が、「多くの人に読んでもらいたい」ということであるとすれば、私がやろうとしていることの実態は、ZINEと何が違うんだろう…。
コストを抑える意味でも、ZINE寄りの形態を選択した方がもっと軽やかに、それこそ「ひとり出版社らしい企画」ができるのではないだろうかと思ったりしながら、昭和的発想を引きずりつつ今日も企画を模索しています。

新しく立ち上げられたばかりでも、一作目からキラ星のごとくヒットを飛ばされているひとり出版社さんやら、活躍中のひとり出版社さんの重版報告などを知ってはキーッと羨んだり、落ち込んだりしつつも、でも、この2年間で、立ち上げなければお会いできなかった人とお会いしたり、話をしたり、何より書店営業で店主さんや書店員さんと話をすることが楽しく、励まされたり、うれしいこともたくさんありました。

立ち上げた理由のひとつに絵本編集をしたかったこともあり、2冊目は横浜の動物園ポスターなどを描かれているサクマユウコさんの『こぐまたちのうみのいちにち』という絵本を発刊しましたが、絵本専門店や独立系書店さんで原画展も開催いただき、流通の流れを学びながら、少しは今後につながる動きができたんじゃないかなとも思っています。絵本界のハードルの高さや、絵本編集の難しさも十分に感じた一冊でした。
(ただ、昨今のクマ被害ニュースでいまはひっそりと息を潜めるのみですが…。それでも、来年の春刊行でなくて良かったと自分を慰めています…)

まだまだガンガンと頭を打ちながら、先輩方に教えを請いながら、この出版業界の中でどんな航海をしていくことができるのか、もうしばらく忍耐だなあと思っています。
まずは、3~4年後に回ってくる「版元日誌」に再び書けるまで踏ん張っていられるように。そして願わくは、何かの本がヒットして、より多くの本をつくることができますように。そして、お金の心配ばかりして、電卓ばかり叩く日々でなく、営業の交通費などに頭を悩ませることなく、取材や営業に出かける日々が訪れますように。とりあえず、来春1冊出せるよう現在鋭意制作中です。

…あ、結局、どこ寄りのひとり出版社を目指すんでしたっけ?
ごちゃごちゃ言ってないで、「作りたいものを作れよ!」という声が聞こえてきそうですよね、スミマセン。浅い考察で中途半端な原稿になってしまいましたが、やっぱり本づくりは「愛だろ、愛」。こういうところ自体も昭和的ですが、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!

つむぐ舎の本の一覧

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