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暑すぎる夏だった

7月15日 於・荒木町「風花」
6月に刊行した『フランスで考えた中上健次のこと』の著者、野浪行彦さんと文芸批評家の高澤秀次さんと荒木町「風花」で一献。高澤さんからいただいた素晴らしい帯文のお礼も兼ねて。お目にかかるのはおそらく30数年ぶり。よくお会いしていたのは中上さんの晩年の頃でした。新宿三丁目にあった以前の「風花」のカウンターで、気がつけば夜が明けていた日々。高澤さんはあの頃と何ら変わらぬ若々しさで、熱く文学を語っておられました。一方、野浪さんは1987年生まれ。いく周りも下の世代ながら、この場をまとめていたのは中上文学への思いでした。

8月17日
週刊読書人と弊社の共催、小説家の太田靖久さんを講師に迎えてやっている〈「アンソロジスト」から生まれた文章講座〉の3回目。年に2クール開催される本講座も、早いものでもう第5期に。ポケットアンソロジーを使ってアンソロジーを編み、そこにさらに同じテーマで描いた自分の作品(小説ないしエッセイ)を加えて世界に2つとない自分だけのアンソロジーを作るというこの講座、受講生の皆さんの熱心さに支えられて、今日に至っています。この日は前回提出したプロットをもとに書いてきた第一稿を、太田さんと私で読み込んでアドバイスして第二稿へと繋げる重要な回。皆さんレベルの高い原稿をあげていただきました。それに対する太田さんの講評もさすが! 翌々週の第二稿が楽しみです。

8月18日
1996年に「いちげんさん」ですばる文学賞を受賞したデビット・ゾペティさんが来社。受賞作は映画化もされ、スイス出身の作家が卓越した日本語で書いた小説として、当時大いに話題になりました。リービ英雄さんとともに今日活躍が著しい〈越境作家〉の草分け的存在ともいえます。今回は小川洋子さんの仲立ちで弊社から新作長編小説を刊行する運びとなり、その初回打ち合わせ。デビットさんはこのところ手話の世界に魅せられて勉強中とのことで、今回の小説は手話の世界と大人の恋愛を重ね合わせて、しかもクライマックスは今年11月15日に東京で開幕予定のデフリンピックの祭典を先取りして迎えるという趣向。開幕のひと月前に出すとして、校了までふた月もありません。さっそく取り掛からねば……。

9月6日
内幸町のイイノホールに6月に刊行した『神田愛山半生記』を50冊お持ちしました。4日から7日まで、神田愛山さんと伯山さんとで行われるイベントでの即販用に。3日に100冊お持ちしたものが、すでに80冊売れてしまったとのことで、その追加補充。さて、最終日の7日、どれだけ売れるか。

9月11日
葉山の神奈川県立近代美術館で行われている上田義彦展「上田義彦 いつも世界は遠く、」に赴き、会場で上田さんと打ち合わせ。7月から11月までやっているこの展示期間中にぜひとも出したい本があり、その件で。タイトルは『写真について 言葉は遅れてやってくる』。展覧会は大阪の写真学校時代の作品から現在まで、広範にわたる上田さんの写真家としての仕事の全貌を俯瞰できる大きなものですが、それに合わせた自己解説的なインタビューを11章にまとめたものになる予定。まずこの展覧会の圧倒的な作品に触れてため息。「すごい」のひと言に尽きます。1日も早く原稿をまとめねば。

9月14日
大阪文学フリーマーケットに初参加。会場へのアプローチが万博と重なっているところあり、会場に着くまでにひと苦労。今回は講義を持っている大阪芸術大学文芸学科でも参加しました。こちらは授業で作った無料ZINE(「大阪芸大文芸ライフ」)などが大好評でしたが、田畑書店としては今ひとつ。やはり一般版元が参加する場合には、「この会場でしか手に入らない」プレミア感ある商品が必要だと実感しました。ただ全体は大盛況で、出展者、参加者合わせて6800人で、過去最高を更新したようです。

10月1日
図書新聞が来年3月末で終刊するという情報をSNSで知り、衝撃を受ける。日本編集者学会でお世話になった故・井出彰さん以下、お世話になった方々の顔が目に浮かぶ。「いよいよ来たか」という漠とした不安を感じる。奇しくも終刊発表がある一面にサンヤツの広告を出した。10月17日発売の2冊、デビット・ゾペティ著『君の手が語ること』と横川善正著『ターミナルアート』。この面は生涯忘れないと思う。


10月5日
福岡文学フリーマーケットに初参加。こちらはワンブースを太田靖久さんと分け合って出店。また大阪芸大文芸学科でも出店して、大阪から元気のいい学生が10人、夜通し運転のハイエースでやってきてくれました。ちょうど前日にポケットアンソロジーの素晴らしい紹介記事を書いてくれた西日本新聞の壇知里記者ともお目にかかれて幸いでした。目玉商品を作ってこなかったという反省は大阪と同じでしたが、参加者は大阪の三分の一(2100人)なれど、売上は大阪と一緒という結果に。大阪芸大の方は持ってきた成果物が完売(売ってはいなかったけれど)で大好評でした。打ち上げで学生に晩御飯をご馳走して解散。彼らはまた深夜を高速で走って大阪に帰るという強行軍。無事大阪に着きますように。

10月6日
翌日、小倉に足を延ばし、長年来の畏友・針金淳氏が魚町に出している「読みどころ くるり」を訪問。ポケットアンソロジーを大々的にディスプレイ・販売してくれているありがたいお店です。市場の立飲み屋で午後2時半から飲み始めて、ホテルに戻ってきたのは何時だったろう? たまにはこういう日があってもいいか……翌朝、二日酔い醒めやらぬ身体で福岡空港より羽田に帰還。

田畑書店の本の一覧

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