「KOKI ZOO 木下晃希どうぶつ画集」にかける思い
この原稿の締め切りと同時に会社の設立から1年目を迎えました。スタジオケイのキノシタユマと申します。その間に1冊の本を作りました。出版専業でもなく、本を1冊出したくらいで「版元日誌」を書いていいものか、お引き受けしてから迷いましたが、せっかくいただいた機会なので、その渾身の1冊の紹介をさせていただきたいと思います。
タイトルは「KOKI ZOO木下晃希どうぶつ画集」、大好きなアーティストの画集です。出版社を立ち上げるなら、最初の本はこれと決めていました。
作家の木下晃希さんは2000年、兵庫県西宮市生まれ。重度の知的障がいと発達障がいを持つ24歳のパラアーティストです。幼少のある日、青鉛筆できりんを描いて以来、写真をもとに動物を描き続けています。目から入る写真の情報をプログラミングされたかのようにペンに伝え、一筆で一気に描き上げるスタイルが特徴的です。
いきいきとした動物たちの姿は多くの人を魅了し、数々のコンテストで入賞、アメリカのアウトドア・フットウェアブランドにも採用されています。2023年9月に開催された初個展では、30点の作品が早々に完売。2024年にはテレビでドキュメンタリー番組が放送されました。
自身は多くの言葉を口にするわけではありません。しかし、彼が描く生き物は、言葉で語りきれないものを、言葉より深く、心に染み入るように伝えてくれます。優しい表情や愛情に満ちたしぐさは見る人の心に響き、展示会場やSNSでは「いつの間にか自分が笑顔になっている」「愛があふれている」「幸せな気持ちになる」などの声があがります。
直近の受賞歴として「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」では假屋崎省吾審査員特別賞を受賞、同氏より「動物に対しての愛を感じる。生きている愛おしさ、生命力がある。色彩感覚も良い」と評価されました。
「KOKI ZOO木下晃希どうぶつ画集」は初画集です。作家が初期から愛用している画材、ポスカで描いた44点の作品を収録しています。
作品の魅力を活かすため、印刷と製本にはこだわりました。印刷は、丁寧に話を聞いてくれてベストな方法を一緒に考えてくれるとクリエイターの間で大人気の藤原印刷さん。製本は、造本にこだわるプロが思わず唸る、美しい本を世に送り出し続けている美篶堂さん。木下晃希さんの作品世界を本のかたちに再構築するうえで、この2社にお願いできたのは、ほんとうによかったと思っています。さらに、関わってくださった方々がそろって作家のファンになってくださったのは、とてもうれしいことでした。
自社ホームページでその制作ストーリーを掲載しています。
https://www.studio-k.art/books/01
みなさんのお力で「KOKI ZOO木下晃希どうぶつ画集」は、ほんとうに美しい本になりました。職人が1冊ずつ心をこめて作った手製本ならではのぬくもりが手に伝わります。180度開けるドイツ装なので、お好きなページを開いて飾っても素敵です。
定価が高い、OPP袋に入っているなど、申し訳ない事情も多々あり、書店で出会って買っていただくのは難しいと思います。でも、原画展などでファンの方がお求めくださって、胸に抱えるようにしてお持ち帰りになる姿を見たり、「自分の入院に持っていきます」「介護をしている母と見ています」などのメッセージをいただいたりすると、この本をつくってよかった、こういう方に届けていこうとしみじみ思います。今はその方法を模索中です。
最後に、木下晃希さんは今年、展示などの予定が目白押しなのですが、近く出版記念巡回展が行われるのでお知らせさせてください。
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木下晃希「KOKI ZOO」出版記念巡回展
今年1月に東京で開催した出版記念原画展の巡回展となります。画集、オリジナルアートグッズも販売します。セレクトマルシェ「Les Femmes hello SPRING 2025 NISHINOMIYA」における特別企画で、2日間だけですが、いろいろなお店が出店されるようで楽しそうです!
日時:4月18日(金)19日(土) 10:00〜16:00
会場:西宮北口ハウジングギャラリー(西宮市高松町2-29/阪急西宮北口駅歩 3分)
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また、大阪・関西万博の会場内オフィシャルストアで大丸松坂屋がコラボ作品、グッズを販売するとのこと。今後の活躍がますます楽しみです。
出版社としても、渾身の1冊を出して終わり、などということにならないように、なんとかしぶとくやっていきたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!