「対面」の大切さ
様々なものがデジタル化され、人と人とを結ぶ関係が希薄になりつつある時代、コロナ禍がそれを加速させ、ますます繋がりが薄れてきているような気がします。
ネット通販を活用し店に行かなくても、欲しい商品が手に入る。
江戸時代の人間がタイムスリップしてきたら、きっと目を丸くして尻餅をつくでしょう。
書店・スーパー・コンビニではセルフレジが増え、人を介さずキャッシュレスで簡単に欲しいものが手に入る時代になりました。
一時代前のSF小説に、コンピューターが神となり人類を支配するストーリーがありましたが、そこまでは到達しなくても便利さを追求する中で、些細な日常のことでもコンピューターという機械と向き合わざるを得ない殺伐さを感じます。
私が子供の頃の「店」は、単なるモノを買う場所ではなく、情報交換の場でした。
例えば書店なら「こんな本が入荷したよ。この本面白いよ。学習誌の付録が余ったから、設計図はないけど工作してみる?……」なんて会話が交わされていました。
駄菓子屋なら「新商品入ったよ。これ買ったらガムおまけしてあげる。〇〇君は、さっき△△公園に行くって言っていたよ」などなど、地域の見守り隊の役割を担っていました。時には子供同士のけんかの仲裁もしてくれました。
そうしたなかで泥臭い人間の温かみがあって世の中の秩序を学んできたのです。
私は主に書店現場に営業に行く役割を担っています。新刊本は一斉FAXや電話でのご案内で受注できます。しかしながら商品のチラシや過去の類書の売れ行きをベースに発注数を決定し、そこに商品に対する人間の熱量は感じられません。
営業担当が現地に赴き、チラシでは計り知れない商品の解説を加え、どのジャンルのどのような類書の近くに陳列すれば売れ行きが見込めるか、そんな意見を交わしながら商品に息吹を吹き込む。
それは、対面なしでは叶えることができない書店営業の醍醐味であると私は思います。
アメリカ大統領選を11月に控え、弊社で最も注目されている書籍『カマラ・ハリスの流儀』のPOPを見せながら商品案内する際、それを痛感いたします。
弊社は、書店においてはできる限り対面営業を行なって、少々かたい書籍もありますが、一重に「人間性」に特化した普遍的な価値を追究する書籍づくりを目指しております。