すべての日本人が英語ができるようになったら
ベレ出版の内田と申します。
よく「ペレ出版」や「ベル出版」と間違えられるのですが、「ベレー帽のマークのベレ出版」と覚えていただけると嬉しいです。
弊社は創業以来の出版方針として「ふつうの大人のための学び直しテキスト」と掲げています。
人に話す際は「いわゆる高校の五科目「国語・数学・理科・社会・英語(外国語)」の範囲をベースに、大人になってから学ぶ本を作っています」と説明することが多いです。
その中で、弊社の売上の過半を占めるのが語学書(外国語学習書)です。
語学書を購入するのは、当たり前ですが「語学ができるようになりたい」「外国語でコミュニケーションを取りたい」という方です。
これまた当然ですが、そういった方の多くは、海外渡航や旅行に興味を持っています。
このたびのコロナ禍で海外渡航が長期間制限されたことの影響で、語学書の売上は以前より少し落ち込みました(当社の場合ですが)。
しかし、噂で聞くところでは、ガイドブックなどの旅行関連書よりも小幅な落ち込みに留まったようにも感じます。
その理由はわかっていないのですが、私としては長年の習慣として学習を続けている学習者が多くおり、そういった方の学習意欲はさほど減退しなかったからではないか?と思っています。
一度に何冊も語学書を買って勉強される方や、同じ本を何度も何度も繰り返し読み込むような方がたくさんいらっしゃいます。
そうした熱心な読者のおかげだと、ただただ頭が下がる思いです。
ただ、ついでですが少し気になることもあります。
先日、ある書店員の方から「日本人はいつになっても英語ができるようにならないから語学書が売れるんだね(笑)」とからかわれたことがありました。
これは、語学学習を生業とする身からすると、笑えない(笑ってはいけない)ブラックジョークです。
時間とお金をかけて勉強しても目的が達成できていないのであれば、語学書出版社としてはなんとも申し訳ない思いです。
本来は、「この1冊を読めば誰でも英語ができるようになる」といった、すべての学習者の悩みを解決する書籍を発行するのが理想です。
実際には、外国語の習得は簡単ではありませんし、人それぞれ異なる目標や課題、悩みがあり、1冊でそのすべてを解決するのは現実的ではありませんが、読者のためになる本を作りたい、という思いは当然ながら持っています。
「たくさん本を買って勉強してほしい!」という商売人の気持ちと、「その本で目的を果たしてほしい!外国語をマスターしてほしい!」という気持ち、両方を持っているのは矛盾しているでしょうか?
すべての日本人が英語ができるようになったら、英語学習書は全然売れなくなるのか?
もしもそうなったら、我々は嬉しいのか、困るのか?
そんなことを考え出すとなかなか複雑な気持ちにもなるのですが、ともあれ、学習者の絶えない悩みを解決すべく、これからも日々、書籍の企画を考えていきたいと思っています。