低空飛行のまま4年、しかし・・・・・
41年勤めた出版社(ぎょうせい)を辞め、本読みの生活に入ろうかと思っていたころ、「給料出ないけど机を用意するからおいで」と言われ、ボケ防止のつもりで通い始めたのが今の会社。
成り行きで会社経営を引き受けることになったので、知己の人たちに報告したところ、反対多数。今更「斜陽産業」に身を投じてどうするというわけだ。「応援するよ」と言われたのはたった一人。「その志やよし」ということなのだが、実は志なるものがないまま、ずるずると4年が経過。
ずっと低空飛行。ある作家に窮状を話したところ、「お前、今まで働いてきて貯金があるだろう」と、同情を期待していたのに突き放される始末。が、家のローンもないし子供たちも自立しているし、贅沢しなければ飢えることはなさそう。細君は不満だが「すまんね。甲斐性がなくて」と頭を下げればすみそうだ。あの世に金を持っていけるわけでなし! とまぁ、自分の置かれている立場を肯定的に解釈すると、妙に納得。
ただ、あるとき「おめえんところの出版の柱はなんだ? まずそれを考えるんだ」と、30年以上お世話になっている老作家から問い詰められて絶句。出版社は「志の生業」というぐらいだから指摘の通り。未だ見つからずだ。
昨年から手がけているのが、特定地方に特化した内容のもの。「会津もの」をまず手がけた。『会津藩燃ゆ』
『星座の人山川健次郎』
。
いずれも著者は星亮一氏。毎年一冊ずつ会津ものを出そうと氏と意気込んでいたが、昨年末急逝し頓挫。並行して地方に立脚して活躍している人に注目し、白崎映美氏の『あったこほうさ』
と天花寺さやか氏の『京都へおいない』
を今年刊行。2冊とも書名は方言。前者は「あったかいところにおいで」、後者は「きょうとに来てね」という意味。考えてみると前社の謳い文句は「地方自治の振興と地域の活性化」だったから、私の頭の中に、そのことがあったのかもしれない。今後もこの方向でいこうと思っている。
小さな会社だから、経理業務以外はすべて社長の仕事。前社時代、編集・企画しか経験していないので、それ以外の仕事はすべてゼロから。でも「大変でしょう、一人で」とよく言われるが、そうでもない。朝6時半から午後4時頃まで、原稿を読み、電話を受け、著者やお客様に手紙を書き、メールを送り、自社のHPもメンテナンス等々。飛び込み営業も受け入れ、当該業界の話を聞く。取材相手が向こうから飛び込んでくるようなものだ。
土日祝日は事務所には来ないが、拙宅の自室を「ぱるす出版○○支社」というプレートを作り、午前4時から午前中籠るという暗〜い生活(笑)。「いつかいいこともあるだろう」と、それだけ思ってボケないように淡々と斜陽産業を支えているつもり。