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自衛隊の南西シフト 小西  誠(著) - 社会批評社
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自衛隊の南西シフト (ジエイタイノナンセイシフト) 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態 (センリツノタイチュウゴクニチベイキョウドウサクセンノジッタイ)

社会一般
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発行:社会批評社
A5判
191ページ
並製
価格 1,800円+税
ISBN
978-4-907127-25-1   COPY
ISBN 13
9784907127251   COPY
ISBN 10h
4-907127-25-1   COPY
ISBN 10
4907127251   COPY
出版者記号
907127   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年9月
書店発売日
登録日
2018年8月7日
最終更新日
2018年9月13日
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紹介

自衛隊の南西シフト態勢による、急ピッチで始まっている与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島などへの新基地建設の現状のリポート。
これを約220枚の写真と現地調査、そして自衛隊内部の資料で描く。そこには国民が全く知らない、知らされていない、恐るべき実態が隠されている。始まっているのは、「島嶼防衛戦」=日米共同の東シナ海戦争態勢づくりという、戦慄する事態である。

目次

プロローグ  6  
     ――急ピッチで進む先島―南西諸島の要塞化

第1章 与那国島に開設された沿岸監視部隊  18
    ――果たして与那国にミサイル部隊は配備されないのか?

第2章 自衛隊の新基地建設を阻む石垣島住民  24
    ――駐屯地建設に向けて動き出した中山市長

第3章 急ピッチで駐屯地建設が進む宮古島  32
    ――要塞化する美ら島での住民たちの抵抗

第4章 軍事要塞に変貌する奄美大島  48
    ――陸海空の巨大基地が建設される!

第5章 南西シフトの訓練――事前集積拠点・馬毛島  68
    ――島嶼上陸演習場・米軍FCLP訓練場

第6章 沖縄民衆にも隠されて進む沖縄本島の自衛隊増強  74
    ――空自那覇基地の増強で大事故は必至

第7章 与那国・石垣・宮古・南北大東島の「不沈空母化」 82
    ――ヘリ空母「いずも」改修による本格空母より効率的か?

第8章 沖縄本島への水陸機動団一個連隊の配備  86
     ――在沖米軍基地の全てが自衛隊基地に

第9章 日本型海兵隊・ 水陸機動団の発足  94
    ――「島嶼防衛」不可能を示す「奪回」作戦

第10章 琉球列島弧を全て封鎖する海峡戦争  102
    ――自衛隊兵力の半分を動員する「島嶼防衛戦」

第11章 「動的防衛力」から「統合機動防衛力」へ  106
    ――「南西統合司令部」の創設

第12章 陸上総隊の新編は南西有事態勢づくり  110
    ――軍令独立化による制服組の台頭

第13章 南西諸島への機動展開・動員態勢  112
    ――進行する民間船舶の動員・徴用

第14章 先島諸島などからの戦時治療輸送 116
    ――始まった「統合衛生」態勢づくり

第15章 強化される「島嶼ミサイル戦争」の兵器  120
   ――巡航ミサイル、高速滑空弾、スタンドオフ・ミサイル、イージス・アショア

第16章 北方シフトから南西シフトへ  126
    ――東西冷戦終了後の新たな「脅威」を求めて!

第17章 「東シナ海限定戦争」を想定する「島嶼防衛戦」  130
    ――エアシー・バトル、オフショア・コントロールとは?

第18章 安倍政権の「インド太平洋戦略」とは何か  140
    ――日米豪英仏印の対中包囲網づくり

第19章 先島―南西諸島の「非武装地域宣言」  142 
    ――かつて南西諸島は非武装地域だった

第20章 アジア太平洋戦争下の「島嶼防衛戦」  146
    ――島嶼戦争では日本軍は玉砕全滅、住民は「強制集団死」

第21章 島嶼戦争の現場を歩く  150

前書きなど

 プロローグ
  ――急ピッチで進む先島―南西諸島の要塞化

 忖度か、政府による報道規制か

 今、この日本で、戦慄する状況が進行している。
 それは、本書で筆者がリポートする、先島―南西諸島への自衛隊の新基地建設、新配備に関するマスメディアの沈黙だ。
 2016年6月の奄美大島、2017年10月からの宮古島駐屯地(仮)工事の着工、そして今、急ピッチで進む石垣島への自衛隊基地建設、沖縄本島での自衛隊の増強・新配備という、一連の自衛隊の南西シフト態勢に関して、マスメディアは、事実さえもほとんど報道しない。

 マスメディアだけではない。従来、このような日本の軍拡や平和問題で発言してきた知識人らも、驚くべきほどの沈黙を守っている。
 彼らは、この急速に進んでいる先島―南西諸島への基地建設について全く知らないというのか? そうではない。マスメディアは、日本記者クラブでの現地調査も行っており(後述)、平和問題で発言してきた知識人らも、幾人かが現地を訪れたことを筆者は確認している。

 しかし、彼らのほとんどは依然として発言しないのだ。何故なのか? 筆者は、2016年夏から2017年にかけて、幾度か与那国島・石垣島・宮古島、そして奄美大島を訪ねて、その基地建設の現場を見てきた。

 拡大し続ける 駐屯地と隊員

 そこには与那国島を始め、防衛省・自衛隊当局が、地元に説明している事実とは全く異なる実態が隠されていた。
 例えば、後述する2016年3月に開設された与那国駐屯地。
 左頁の写真に写っているのは、かなりの広大な敷地を有する駐屯地だ。これが、160人規模の沿岸監視隊だと言えるのか。

 読売新聞の元記者は、与那国駐屯地へミサイル部隊の配備が予定されていることを記述しているが(『自衛隊、動く』勝俣秀通著・ウェッジ)、この駐屯地の敷地面積の広さや、与那国島の地理的位置からして不可避的に、ミサイル部隊の配備は必至といえるかもしれない。
 最新の防衛省の発表では、「兵站基地」とされている与那国駐屯地の巨大弾薬庫も、それを表している。つまり、現在、先島―南西諸島で進んでいる基地建設は、沖縄世論を恐れて規模を縮小して行われているが、「宣撫工作」が成功すればするほど、拡大していくということだ。

 ミサイル部隊の配備、そして琉球列島弧の要塞化

 これを示しているのが、最近明らかになった先島諸島などへのミサイル部隊の配備問題だ。
 2018年4月、国会で暴露された自衛隊の南西シフトの策定文書「『日米の『動的防衛協力』について」(統合幕僚監部)は、民主党政権下の2012年に作成されたが、この最初の南西シフト策定文書では、先島―南西諸島へのミサイル部隊配備は、明記されていないし、予定もされていない。つまり、この時期では沖縄世論を恐れて、ミサイル部隊配備は「有事展開」だったことが分かる。実際、この前後から自衛隊は、ミサイル部隊の「緊急展開訓練」を行っていたのだ(西部方面隊の「鎮西」演習など)。ところがどうだ。住民への宣撫工作成功とみるや否や、自衛隊は先島、奄美ばかりか、沖縄本島への地対艦ミサイル部隊の配備まで打ち出したのだ(2018年2月)。

 そればかりではない。先島をはじめ、南西諸島の民間空港へF35B戦闘機を配備するという、凄まじい事実までが発表された。
 それは、与那国島・石垣島・宮古島・南北大東島などの民間空港を軍事化し、F35Bの基地に使用するという計画だ。
 マスメディアでは、このF35Bの運用については、ヘリ空母「いずも」などの改修による本格空母の導入が注目されているが、短期的に採用されるのは、南西諸島の民間空港の軍事化である。

 つまり、先島―南西諸島は、対艦・対空ミサイル部隊などの基地として要塞化されるだけでなく、琉球列島弧に沿ったほとんどの島が、文字通りの要塞――不沈空母として造られていくということだ。

 一大要塞島と化す奄美大島

 左の写真を見てほしい。これは、2018年6月中旬の奄美大島・大熊地区の駐屯地工事現場だ。この地点を防衛省は、陸自・地対空ミサイル部隊・警備部隊350人規模の配備と発表しているが、誰の目にもそれをしのぐ巨大さは明らかだ(敷地面積30ヘクタール)。

 奄美大島にはまた、陸自の地対艦ミサイル部隊・警備部隊の駐屯地が、瀬戸内町節子地区へ建設されている(写真下)。この規模も防衛省は、200人規模と発表しているが、駐屯地敷地の巨大さ(28ヘクタール)からして、配備部隊の大幅な増強は必至だ。節子地区には、防衛省自身が「大規模火薬庫」と明記している、弾薬庫も造られつつある(写真下の左上部分)。

 これだけでも、奄美大島の基地建設が凄まじいことが分かるが、この島には、空自の移動警戒隊の配備が発表されているばかりか、空自の通信所建設までもが発表されている。
 要するに、奄美大島は、琉球列島弧の北の拠点として島全体が要塞化されるということだ。しかも、本文で叙述するように、種子島・馬毛島の「事前集積基地」と相まって、南西諸島への機動展開・中継拠点としても確保されようとしているのだ。

 一行も報道されない奄美の基地建設

 おそらく、読者は宮古島を始めとする先島諸島の基地建設の現場もそうだが、とりわけ、この奄美大島の自衛隊駐屯地の工事現場を、初めて知ったのではないだろうか。
 率直に言えば、ここまで大規模に進行している奄美大島の基地建設について、全てのマスメディアは、一行・一秒も報道していない。リベラルと言われる朝日新聞を始めとしてそうである。信じられないだろうが、これは事実だ。最近、『週刊金曜日』(2018年4月13日付)などが少しだけ報じ始めたが、未だにマスメディアの報道は皆目ない。

 残念ながら、奄美大島の自衛隊基地建設に関する限り、あるいは、先島―南西諸島への自衛隊基地建設と言ってもいいが、マスメディアは、ほぼ完璧に政府・自衛隊への「翼賛勢力」に転化した。
 もちろん、奄美大島の地元の新聞は、正確に報道しているが、これが全く本土へは伝わらない。 

 抵抗の砦・石垣島のたたかい

 与那国島の基地建設が完了し、宮古島、奄美大島の基地建設工事が、着々と進んでいる中で、石垣島は現在、唯一つ基地建設を食い止めている島だ。
 しかし、その石垣島にも、防衛省の魔の手は迫ってきている。今年5月からは、「防衛は国の専権事項」などとうそぶき、基地誘致について言葉を濁していた中山石垣市長が、駐屯地予定地である平得大俣地区、そして、全石垣市民を対象とした「自衛隊配備の説明会」を開催・強行した。

 この中山市長の豹変ぶりからすれば、相当の政府・防衛省の建設推進への圧力がかけられていると言えよう。奄美大島、宮古島への自衛隊配備は、2018年度末と予定されているが、石垣島では、未だに用地確保のメドさえ立っていないからだ。
 駐屯地の予定地は、全体として市有地(ゴルフ場)であるが、予定地内には農地もある。木方さんの「ダハズ農園」(次頁の防衛省図面)は、防衛省が何の前触れもなく、いきなり駐屯地用地に組み入れた。この図面の発表後、沖縄防衛局が二度ほど「挨拶」に来たというが、常軌を逸した行為だ。

 駐屯地予定地とされる 平得大俣地区の四つの自治公民館は、全地区あげて自衛隊駐屯地の建設に反対だ。先の石垣市長の説明会にも、全地区あげてボイコットし、強く抗議行動を行っている(写真下、開南・於茂登地区への説明会に抗議)。
 
 石垣島最大の農業地帯の基地化
 
 開南・於茂登・川原・嵩田の4地区自治公民館でつくられている平得大俣地区は、石垣島でも最大の農村地帯であり、景勝地だ。戦後、沖縄本島の米軍基地建設で追い出された開拓農民たちが創り上げたという集落は、沖縄最高峰の於茂登岳の南に広がる豊かな農村地帯だ。

 この緑豊かな地域に、46ヘクタールもの敷地を占有し、対艦・対空ミサイル部隊、警備部隊などを配備するというのだから、農民らをはじめ、石垣住民らが反対するのは当然である。
 しかも、石垣島は、戦中の一時期、1944年からおよそ1年余りしか、「軍隊」が駐屯したことはないという、非武装の島なのだ。もちろん、戦後は米軍も自衛隊も、一兵さえも駐留したことはない。戦後73年、軍隊がいなかった島に、「防衛の空白地帯」などと口実をつけて軍隊が来ることを、石垣島島民は決して許さないだろう。

 日本記者クラブ取材団は先島で何を見てきたのか?

 下の記事は、2016年11月30日から12月1日まで、与那国島・石垣島を取材したとされる「日本記者クラブ」16人の、石垣市長への取材を報じる記事だ(八重山毎日新聞、同年12月2日付)。

 取材団には、沖縄2紙をはじめ、新聞・テレビのマスメディアが参加していたと言われる。
 ところで、沖縄本島の2紙は、翌2017年初めから、特集を組んで、自衛隊の先島―南西諸島問題をようやく本格的に報じ始めた。ところが、残りのマスメディアはどう報じたのか? なんと、ほとんどが沈黙を守ったのだ!

 下の左の資料は、ウェブサイトに貼られていたNHKの深夜の解説記事である(17年1月31日)。この解説委員は、自らがこの取材団に参加していたことを話し、若干の自衛隊の南西シフトに関する解説を行っている。しかし、報道は深夜なのだ。

 朝日新聞は、どのように報じたのか? 同紙は、17年3月1日、夕刊で与那国島に関する記事を掲載。だが、驚くべきことにこの記事は、自衛隊配備問題にはほとんど触れず、マンガ家・かわぐちかいじの『沈黙の艦隊』に関する、与那国駐屯地司令との「漫談」を書いているのみだ。以後、今日に至るまで、朝日を始め、マスメディアは、自衛隊の南西諸島への配備にほとんど沈黙している。
 

版元から一言

自衛隊の南西シフト態勢による、急ピッチで始まっている与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島などへの新基地建設の現状のリポート。
これを約220枚の写真と現地調査、そして自衛隊内部の資料で描く。そこには国民が全く知らない、知らされていない、恐るべき実態が隠されている。始まっているのは、「島嶼防衛戦」=日米共同の東シナ海戦争態勢づくりという、戦慄する事態である。

著者プロフィール

小西 誠  (コニシマコト)  (

1949年、宮崎県生まれ。航空自衛隊生徒隊第10期生。軍事ジャーナリト・社会批評社代表。2004年から「自衛官人権ホットライン」を主宰し事務局長。
著書に『反戦自衛官』(社会批評社・復刻版)、『自衛隊の対テロ作戦』『ネコでもわかる? 有事法制』『現代革命と軍隊』『自衛隊 そのトランスフォーメーション』『日米安保再編と沖縄』『自衛隊 この国営ブラック企業』『オキナワ島嶼戦争』『標的の島』『自衛隊の島嶼戦争―資料集・陸自「教範」で読むその作戦』(以上、社会批評社)などの軍事関係書多数。
また、『サイパン&テニアン戦跡完全ガイド』『グアム戦跡完全ガイド』『本土決戦 戦跡ガイド(part1)』『シンガポール戦跡ガイド』『フィリピン戦跡ガイド』(以上、社会批評社)の戦跡シリーズ他。

上記内容は本書刊行時のものです。