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器官レベルからみるからだ
病気は流れのとどこおりである
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年9月24日
- 書店発売日
- 2024年9月25日
- 登録日
- 2024年8月14日
- 最終更新日
- 2025年3月12日
紹介
症状は、病気の何を反映しているのか。
患者の全体像はどうすれば描きだせるのか。
そもそも病気とは何であるのか。
医師であり看護を理解する著者は、「器官」をイメージして病態を構造的にとらえる見方・考え方をはじめて体系化しました。
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器官とは、いわば「管」。
その「流れ」と「とどこおり」をイメージせよ!
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病む人のからだ全体をすばやく把握できる、看護師、医師、学生に必携のイメージツールです。
目次
はじめに
Ⅰ.総論:病態とは管腔壁の異常と流れの障害である
1 病気の構造とは
1)医療の構造
2)医療における2つの視点
3)看護につながる病気のとらえ方 ほか
2 器官レベルに注目する
1)個体における器官とは
2)器官レベルからとらえるための視点
➀役割 ②通過臓器 ③内腔の内容 ➃入口・出口 ⑤調節機構
⑥防御機構 ⑦管腔壁に生じる異常➊運動の異常 ➋腫脹 ➌欠損 ➍増殖(腫瘍)
Ⅱ. 各論:器官レベルから病態をとらえる
1. 消化器官の機能・構造・病態(潰瘍性病変/腫瘍性病変/炎症性疾患 ほか)
2. 循環器官の機能・構造・病態(高血圧症/心不全/糖尿病)
3. 呼吸器官の機能・構造・病態(気管支喘息/肺炎/肺癌 ほか)
4. 泌尿器官の機能・構造・病態(尿量の変化/血尿/糸球体腎炎 ほか)
5. 生殖器官の機能・構造・病態(細菌感染症/子宮頸癌/卵巣嚢腫 ほか)
6. 統合器官の機能・構造・病態(糖尿病網膜症/末梢神経障害/認知症 ほか)
各論のまとめとして――糖尿病を例に
「器官レベルでの病態の把握」連載によせて――薄井坦子
あとがき
索引
前書きなど
はじめに
医師と看護師は患者の回復という同じ目的のもとでそれぞれが専門性を発揮しています。医師は診察を通し病名を明らかにして治療を開始し、看護師は患者の全体像をとらえて行うべき看護を見出します。両者とも「みる」ことが重要であり、「みる」ことからそれぞれの専門性がひらかれていくわけですが、「みる」ことの難しさはたとえ医療技術が高度に進歩しようとも常に実感されるところです。
ことに患者の24時間をととのえるという広範な役割を担う看護師にとって、医師が診断した病名から、患者のからだに何が起こっていて、健康の何が障害され、なぜこの症状が現れているのかといった全体像を素早く把握するのは容易ではないと想像されます。病名から知れる臓器の異常についての詳細は患者の健康障害を大づかみするには情報の質・量ともに過剰であり、さりとて患者が示す症状や徴候は多様で個別性が高く、やはり患者の健康面の全体像には迫りきれません。つまり、病名が伝える臓器の異常と目の前の患者の症状や病態とをつなぐ“筋”がみえないところに難しさがあるといえます。
ナイチンゲールは、「よい看護というものは、あらゆる病気に共通すること、及び、病む人それぞれに固有のことごとを観察するという、ただ2つに尽きる」 と述べています。つまり、現象の奥に病気一般に認められる仕組みや構造といった法則性をとらえ、かつ、病む人の病む体験をも含めた個別性を押さえよ、ということでしょうか。さらに彼女は、病人の消化の状態、呼吸の状態、脈の状態、尿の状態等を観察するにあたっては、からだを構成する器官の機能のとどこおり(obstruction)を観察すること、を説いています。これらは、看護につながる観察のあり方について深い示唆を与えてくれます。つまり、どうみるかで、その対象への働きかけが変わってくるのです。
そこで、ナイチンゲールの言葉に示唆を得て、臓器の異常と病む人のからだ全体とをつなぐ構造を明らかにするために、器官レベルから病態をとらえるという視点を体系的に構築しました。臓器の異常が、所属する器官の機能に影響を与えて“症状”をつくりだし、患者に“病態”をつくりだす過程の定式化を試みました。器官は個体の生命維持という目的のもとにそれぞれ役割を担い、他器官と相互依存しています。器官レベルで構造をとらえていくと、健康の何が障害されているのかを容易につかむことができます。また、器官に共通する管腔構造に着目することで、そこにどんな変化が生じて器官レベルの機能が障害されたのかが一連の筋としてみえてきます。看護師はもちろん、医師にとっても「みる」ことの精度とスピードが上がる見方・考え方といえます。
本書では、まず「総論」で、病態をどのようにとらえるかの有効な答えとして「器官レベルからみる」視点を体系立てて概説し、続く「各論」で消化器官、循環器官、呼吸器官、泌尿器官、生殖器官、統合器官の6つの器官のそれぞれをとりあげてその健康障害の全体像と過程をとらえていきます。
このように本書は多くの病態学や解剖生理学等の本とは違って詳細な知識を伝えるものではありません。より早く、できるだけ的確に、患者の健康の障害をとらえて看護や医療につなげるための視点を伝えています。臨床でこの視点をつかいこなし、同時にご自身の看護あるいは治療を検証して、常により確かな実践を実現していかれることを期待します。
版元から一言
『綜合看護』(現代社)で好評であった連載を、よりわかりやすく、より使いやすくを念頭に加筆・再構成しました。
著者が体系化した「器官レベルからみる」という画期的な見方・考え方は、看護科学研究会等での事例検討会に医師の立場で参加した著者が何度も受けた問い――「症状は病気の何を表しているのか」「病名や症状から患者の全体像をどのように描きだせるのか」――への有効な答えを求めるなかで、従来の観察の視点にはなかった構造的な見方として結実したといいます。著者はその経緯について率直に「医師のもつ病気の知識そのままでは看護にはあまり役に立たないことに気づいた」と語っています(本書あとがき)。
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器官とは、いわば「管」。その「流れ」が「とどこおった」とき、病気が症状としてあらわれるーー。このシンプルなイメージは、単なるイメージではなく、見事に構造化された見方・考え方です。
病む人のからだ全体をすばやく把握できる、看護師、医師、学生に必携のイメージツールをぜひ手に入れてください。
上記内容は本書刊行時のものです。