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アジアの水覇権 Hydro-Hegemony in Asia 天野  健作(著) - 博論社
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アジアの水覇権 Hydro-Hegemony in Asia (アジアノミズハケン ハイドロ ヘゲモニー イン アジア) 中国・インドの資源紛争を解く (チュウゴク・インドノシゲンフンソウヲトク)

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発行:博論社
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ11mm
重さ 349g
262ページ
並製
価格 2,950円+税
ISBN
978-4-9910204-7-6   COPY
ISBN 13
9784991020476   COPY
ISBN 10h
4-9910204-7-6   COPY
ISBN 10
4991020476   COPY
出版者記号
9910204   COPY
Cコード
C0031  
0:一般 0:単行本 31:政治-含む国防軍事
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2024年1月20日
書店発売日
登録日
2023年5月25日
最終更新日
2024年1月19日
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紹介

本書のテーマは、中国とインドの水資源をめぐる紛争である。代表的な事例として、両国をまたいで流れる国際河川のブラマプトラ川を扱っている。
本書は博士論文(2017 年東京大学学位認定)を基にしている。できるだけ専門的な用語を使わずに、学術書としてだけでなく、一般書としても読めるように、噛み砕いて記述されている。

目次

序 章 「水覇権」とは何か
 第1節 本書の目的
  1-1 「紛争防止メカニズム」を解剖する
  1-2 国際関係論の系譜をたどる
  1-3 「覇権論」を適用する理由
 第2節 本書の5つの意義と知見
  第1の意義:気候変動による中国とインドの水資源への影響
  第2の意義:ブラマプトラ川の隠された実態
  第3の意義:中国の国際水資源の紛争防止メカニズム
  第4の意義:インドの国際水資源の紛争防止メカニズム
  第5の意義:「統合的水資源管理」と米中関係
 第3節 本書の構成と手法

第1章 水資源をめぐる紛争
 第1節 「水戦争」がメディアを席巻
 第2節 水不足の危機的現状
  2-1 水資源に関する国際社会での議論の変遷
  2-2 世界各地でみられる水危機
 第3節 水不足の理由と背景
 第4節 「水に恵まれた」日本と言えるか
 ▶コラム1 「鬼滅の刃」水の呼吸

第2章 国際水資源の焦点
 第1節 紛争リスクが高まる国際河川
 第2節 国際水資源の「利用」の変遷
  2-1 「航行」から「開発」へ
  2-2 国際水路条約の発効 
 第3節 「衡平利用原則」と国際裁判例
  3-1 ガブチコヴォ・ナジュマロシュ計画事件
  3-2 ウルグアイ川パルプ工場事件
 第4節 中東・アフリカ地域と異なる視点
  4-1 中東・アフリカ地域の水資源をめぐる紛争
  4-2 アジア・モンスーン地域の水資源の特徴
 ▶コラム2 国際河川を持たない日本ができることは?

第3章 中国とインドの水危機
 第1節 中国とインドの水危機の現況
  1-1 干上がる中国
  1-2 水不足と戦うインド
 第2節 気候変動による中国とインドの水資源への影響
  2-1 国連気候変動枠組み条約における報告書の制度
  2-2 中国の報告書
  2-3 インドの報告書
  2-4 報告書の意義の考察
 第3節 「南水北調計画」の概要と開発実態
 ▶コラム3 中国による日本の水源地買収

第4章 中国とインドの水紛争:ブラマプトラ川を事例に
 第1節 ブラマプトラ川の概況
 第2節 中国とインドの対応
  2-1 インドの懸念の表明
  2-2 中国の戦略的沈黙と問題の矮小化
 第3節 中国とインドの限定的協調関係
  3-1 協調関係の経緯
  3-2 協調の限界要因
 第4節 4章のまとめ
 ▶コラム4 原発処理水の海洋放出に中国が反発

第5章 中国の国際河川における紛争防止メカニズムの比較
 第1節 中国の水資源をめぐる国際合意
 第2節 紛争防止メカニズム構築の経緯
  2-1 イルティシ川―カザフスタンとの関係
  2-2 松花江―ロシアとの関係
  2-3 メコン川―下流域諸国との関係
 第3節 常設の共同機関の役割と任務
  3-1 常設の共同機関と定期会合
  3-2 情報・データ交換制度
  3-3 緊急事態条項
  3-4 衡平利用原則と相当注意義務
 第4節 南北メカニズムの相違
  4-1 中国の領域主権原則
  4-2 中国の問題認識の差異
  4-3 カザフスタン関係の特異性
  4-4 中国とメコン川流域の包括的経済協力
 第5節 5章のまとめ
 ▶コラム5 「新疆綿」のとんだ災難

第6章 インドの国際河川における紛争防止メカニズムの比較
 第1節 合意締結経緯の概観・
  1-1 インダス川―パキスタンとの関係
  1-2 ガンジス川―バングラデシュとの関係
  1-3 マハカリ川―ネパールとの関係
 第2節 常設の共同機関の役割と任務
  2-1 常設の共同機関の意義
  2-2 情報・データ交換と視察
  2-3 共同機関の実効性:合意の履行状況
  2-4 合意履行の差異の要因
 第3節 インドの紛争防止メカニズムの有効性要因
  3-1 「専門的機関」としての側面
  3-2 メカニズムに内在する有効性要因
  3-3 メカニズムの脆弱性
 第4節 6章のまとめ
 ▶コラム6 インドの水神「サラスヴァティー」

第7章 中国とインドの水資源政策の影響と統合的管理
 第1節 インドの「覇権」の低下
 第2節 中国の多国間アプローチの展開
  2-1 イルティシ川における中国・ロシア・カザフスタンの枠組み
  2-2 ブラマプトラ川における中国・インド・バングラデシュの枠組み
  2-3 中国とメコン川下流域諸国の枠組み
 第3節 米国とメコン川
  3-1 オバマ政権の「アジア回帰」
  3-2 トランプ政権の関与
 第4節 包括的な紛争防止メカニズムの構築
  4-1 統合的水資源管理の意義
  4-2 統合的水資源管理の可能性

終 章 アジアの水紛争は防げるか
 第1節 総括と本書の成果
 第2節 今後の課題・

版元から一言

「地球沸騰化」が昨年の新語・流行語大賞でトップ10入りしました。著者は気候変動による水資源への影響に着目し、アジアでこれから起こる可能性のある水をめぐる紛争を予測します。その中心となるのが中国であり、水への支配を及ぼす「覇権」をテーマに、紛争の解決策を本書で提示しています。さらに世界人口では中国を抜きトップになったとされるインドの水資源の現状も解き明かし、これらアジアの二大国が水をめぐって衝突している場所も明らかにしています。著者は元新聞記者であり、ジャーナリストの感覚を持ち合わせ、ネット上では消されてしまった中国の「重要資料」を入手し、本書で一部掲載に踏み切りました。秘匿されてきた中国の水資源外交戦略を大量の資料や文献を読み解いて、浮き彫りにしています。本書は、著者の博士論文(東京大学学位取得)をもとにしており、今回それを噛み砕いて一般の読者にも分かるようにしたものです。世界を読み解くカギは「水」にあり。水紛争を防ぐ望ましい国際協調のあり方を示した珠玉の本となっています。ちなみに、本年十二支の辰(龍)は水の神様ともいわれます。辰年の初めに、生命の源の「水」について考えてみませんか。

著者プロフィール

天野 健作  (アマノ ケンサク)  (

大和大学社会学部教授(2021年~)。
1974年愛知県豊田市生まれ。
同志社大学法学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了(人間・環境学修士)。
ニューヨーク大学プログラム課程(国際関係学)修了、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了(国際協力学博士=環境学研究系)。
1999~2020年、産経新聞社記者。記者時代は環境省、原子力規制委員会、厚生労働省、東京都庁、警察・検察、北朝鮮拉致問題などを担当した。
専門は地球環境学、国際水資源、ジャーナリズムなど。著書に『原子力規制委員会の孤独』(エネルギーフォーラム新書)などがある。
大和大学では2022年、SDGsに関わる「SDG研究推進室」を立ち上げた。
加えて、大学ベンチャーである「株式会社ヴェリダス」を設立し、代表取締役社長として、海外の大学や企業・団体と連携しながら、学生と共にSDGsに関係する社会発信や、商品を開発・販売するなどしている。

上記内容は本書刊行時のものです。