書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
今選ぶなら、地方小規模私立大学! ~偏差値による進路選択からの脱却~
- 出版社在庫情報
- 不明
- 初版年月日
- 2018年10月19日
- 書店発売日
- 2018年10月19日
- 登録日
- 2018年9月26日
- 最終更新日
- 2018年10月18日
紹介
戦後最大の教育改革の波に乗る保護者・教育関係者の必読書!
「地方小規模私立大学に学生が殺到している」そんな衝撃が今、各地で起きている。
少子化の昨今、これまでのように、大学に自然と学生が集まってくることはない。人気大学とされていた大学すら、危機を迎える時代となる。そんな中で、「偏差値ではない基準」で学生から選ばれている大学が登場している。
前半では、大学が抱える多くの問題と偏差値に変わる教育基準を紹介。後半では、学生の社会で生き抜く力を伸ばす入試や教育を実施する3大学に密着。改革における苦悩や具体的な取り組み内容を紹介する。
目次
特別対談
今社会で求められている力と大学が果たすべき役割
立教大学教授 中原淳 × 河合文化教育研究所研究員 成田秀夫
第1章 2020年大学入試改革とこれからの地方私立大学の役割
・今、なぜ入試改革が行われるのか?
・2020年の入試改革とは?
・これからの大学に求められること
第2章 教育現場と社会をつなぐ
・社会の変化に応える大学改革
・多面的評価の必要性
第3章 受験生・保護者に伝えたいこと
・受験生・保護者はどう大学を選べばよいか
・アクティブ・ラーニングの本質とは
第4章 北陸大学(石川県)
AO入試改革や教員の組織づくりなどスピーディな大学改革を遂げ学生の力を総合的に伸ばす教育プログラムを導入
第5章 共愛学園前橋国際大学(群馬県)
「グローカル」を軸に不断の取組みを重ね地域に選ばれる大学となる
第6章 日本文理大学(大分県)
大学での専門教育を生かし人間力育成のポリシーのもと地域で活躍する人材を育成する
前書きなど
今、日本の大学教育に何が起きているのでしょうか?
私たち「大人」が大学受験をした頃とは、大きく異なる事態が起きています。
大学・高校関係者のみなさんはもちろん、進路を選ぶ保護者や高校生自身、そして、卒業した学生たちを受け入れるビジネス現場の方々にとって、それは必ず知っておいてほしいことです。
本書では、理論と事例で大きな過渡期にある大学教育の今と未来を伝えていきます。
私たちは、大学関係者、教育関係者が一緒になって、大学教育についてや大学組織のあり方を考える「大学リーダーシップ研究会」を立ち上げました。過去から現在にかけて、どう教育が変わったのか、そして、今後どう変わっていく必要があるのかを社会と教育現場を鑑みて日々議論を重ねています。
まずは、そこで見えてきた、4つの議題をこれから丁寧にお話していきたいと思います。
その1 「偏差値教育」の崩壊
これまで一般的に、偏差値の高い大学を卒業した学生が優秀だとされてきました。
しかし実際には、偏差値の高い大学を卒業したのに就職ができない学生もいれば、就職しても期待通りに活躍できない学生もたくさんいます。
どうして、そのようなことが起こるのでしょうか?
それは、偏差値が万能なモノサシではないからです。
しかし、偏差値の高い大学は羨望の眼差しを受け、偏差値の低い大学は「教育困難大学」だとレッテルを貼られ
る構造は今までずっと続いてきました。
「偏差値の低い大学には、まともに講義が聞けない学生、学ぶ意欲のない学生がたくさんいる」などとマスコミ
は囃し立てます。
けれども、恐ろしいことに、偏差値が上位の大学でもこの実情は変わりません。
教える側の問題を抜きにして、学生の入学時点での偏差値だけで大学教育の質をはかることは決して公平ではありません。
このことが物語っているのは、「偏差値というモノサシだけで、教育の成果をとらえてきたツケが回っている」
ということに他なりません。
おおぜいの学生が、「狭き門」をくぐって大学に進学していた時代には「偏差値による選別」が機能していました。
しかし、大学が大衆化し、18歳人口が減少する現在では、それがあまり意味をなさない。
そして、グローバル化した変化の激しい現代では、もはや1つの基準だけで教育の成果をとらえることは不可能なのです。
まさに、多様性(ダイバーシティ)が求められているといえます。
その2 「まっとうな教育」をしている大学が選ばれる
「偏差値」が万能なモノサシとしての機能を失った現在、受験生の支持を集めている大学があります。
通常、大学が学生募集を増やそうとする場合、学部や学科の再編や名称変更、校舎の新設にリノベーションといっ
たファシリティ(施設)の充実という手段を講じるところが多い。
はたまた、就職部やキャリアセンターによる就職支援で魅力を高めます。
そして、多様な入試形態・日程の設定をし、学生が入試を受けられる機会を増やす。
積極的な受験生の募集活動を実施し、教育の周辺部でさまざまなことが企画されてきました。
お気づきのように、これらの取組みは大学の外側、「見た目」を良くするものであり、本丸である「教育」そのものを改善しようとしているわけではありません。
それでも、このような取組みをすることで、今まではそれなりに受験生を集めることができました。
しかし、現在、こうした方法は限界をむかえています。どんなに外側を着飾っても、受験生が集まらない。そん
な過酷な状態を迎えた大学が出てきたのです。
むしろ、教育そのものの質を向上させた大学が受験生を集められるようになっています。
たとえば、理工系では金沢工業大学が有名です。「夢工房」をはじめとした、自ら学び自ら考えて課題を解決する「学
びの仕掛け」が高く評価され、受験生だけでなく高校の先生方の支持を得ています。
文系学部でも同じようなことが起きています。立教大学の経営学部は、立教大学のなかでは最後発の学部でしたが、講義とアクティブ・ラーニングを融合させた質の高い教育を展開した結果、先輩から後輩へと大学の良さが伝わり、自然に志望者が増えています。
一言でいえば、「まっとうな教育をしている大学が選ばれるようになった」ということ。考えてみれば、これは至極当然のことでしょう。
その3 教育改善には「組織開発」が不可欠
「大学の教育を充実させる!」と言葉では簡単にいえますが、実行するのは容易ではありません。
失敗例は、山ほどあります。
たとえば、現場の先生が孤軍奮闘して燃えつきる「孤立無援タイプ」、組織のトップが強引に旗を振っても誰もなびかない「裸の王様タイプ」、主任1人が頑張りすぎてメンバーが疲弊する「玉砕タイプ」、教育改善センターはつくったものの機能していない「あるだけセンター(言い訳センター?)タイプ」などです。
失敗の原因は、どこにあるのでしょうか。それは、改革を個人の力量だけに任せているというところにあります。
上層部、ミドルマネージャーと現場が、それぞれバラバラに動いていたのでは同じ方向に大学を進めていくこと
はできません。
改革がうまくいっている大学は、上層部、ミドル、現場がそれぞれの役割を果たしつつ有機的に連動しています。
言葉にすれば当たり前のことですが、これができる大学は、実は少ないのです。各メンバーが効果的に動くためには、
小回りのきく小(中)規模大学はとても有利です。
本書の事例をご覧いただければ、「組織開発なくして教育改革なし」という鉄則がいかに大切であるか、ご理解
いただけるでしょう。
その4 高校・大学・社会が連携した新しい「学びのカタチ」
本書では、大学内部の教育にとどまらず、大学と地域が連携した新しい「学びのカタチ」がつくられつつあるこ
とをご紹介します。
これまでにも、大学生が地域の商店街や企業・自治体と協力して町おこしをしたり新商品開発をしたりする取組
みはなされてきました。けれども、地域や企業・自治体は学生の学びの「場」を提供することにとどまっていました。
現在の新しい動きでは、地域の人々が学生の学びを引き出す役割を担うようになったり、大学そのものが地域を活
性化させる拠点となったりと、地域と大学が一体化する方向に進んでいます。
こうした取組みは、中央が地方をコントロールするという形ではなく、地域が地域として独自の力をつけている現れです。そして、大学と地域の関係は一方的なものではなく、大学が地域を活性化させ地域や自治体が大学の価値を引き出すという互恵的な関係になっています。こうした動きは、日本の未来をつくる「教育の新しいカタチ」なっていくでしょう。
こうしてみると、いま唱えられている「高大接続」の教育改革は、高校と大学だけの接続ではなく、高校、大学、社会をつないだものであるべきです。そして、この改革のいちばん大切なポイントは、地域で生きている人々が連携して活力ある未来をつくろうとしているということです。
もしかしたら、「また国の方針を受けて、きれいごとをいっている!」と思う方もいるかもしれません。しかし、決して誤解しないでください。文部科学省(以下、文科省)がやれというから、経済界がやれというから行っているのではありません。それぞれの現場で生きている人々が、それぞれの切実な思いを抱いて、教育的取組みを進めているのです。
本書は、「大学リーダーシップ研究会」のメンバーでそれぞれ編著・報告をしました。第1章から第3章は、河合文化
教育研究所の成田秀夫が担当しました。内容は、「戦後最大の教育改革」と呼ばれている大学入試改革についてお
伝えします。大学入試が変わるということは、大学の教育内容が変わるということです。そして、当然のことながら、
その入試に対応するべく高校、中学での授業も変わるのです。
また、多くの大学が現在置かれている「崖っぷち」の状況をお伝えします。全国に746校ある大学(平成29年度)
が大きな岐路を迎えています。
そして、第4章以降では、先進的な取組みを進めている、北陸大学を山本啓一氏が、共愛学園前橋国際大学を大森
昭生氏が、日本文理大学を吉村充功氏・高見大介氏が紹介します。
組織開発から教育改革を行うには、地方にある小(中)規模の私立大学が大変有利です。しかし、地方の小規模
私立大学ならばどこでも改革が進んでいるかというと、そういうわけではありません。どんな取組みをすれば大学
が変われるのか、3大学の取組みをじっくりお読みください。
版元から一言
2020年、戦後最大といわれる教育改革が実施されます。大きな社会変化の中で、求められる力が変わってきていることから、教育の転換の必要性が叫ばれるようになったのです。
そうした社会動向を踏まえて、本書の前半部では、「大学入試改革とはなんなのか」「子どもたちに新たに求められる力とはどんなものか」「偏差値に代わる指標とはなにか」などをお伝えします。
また、大学においては少子化のあおりを受け、経営の危機を迎えるところも出てくるでしょう。真に学生を伸ばしていくことができない大学は、生き残っていくことができません。そんな中にあって、一般的に「不利だ」と思われる、「地方」「小規模」「私立」大学で注目を集める大学が出てきています。学生に社会で生き抜く力をつけさせることで、学生募集に成功しているのです。本書の後半では、実績を伸ばし、各メディアからも注目されている北陸大学、共愛学園前橋国際大学、日本文理大学に密着。そのメソッドを解き明かしました。
保護者も教育関係者も、偏差値ではない「新たな教育の価値」を見出すことが求められています。本書は、その羅針盤となる一冊です。
上記内容は本書刊行時のものです。