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びっくりさせてよ
- 初版年月日
- 2018年11月28日
- 書店発売日
- 2018年11月21日
- 登録日
- 2018年11月9日
- 最終更新日
- 2018年11月14日
紹介
主人公のジョアンは幼少時からバレエを習い、ハイスクールを卒業してプロのバレエ団に入ろうとするが、それほどのダンサーではないため、就職先が見つからない。ひょんなことからフランスの名門バレエ団の芸術監督の眼に留まり、群舞ダンサーとして雇われたが、うだつの上がらない自分に絶望する毎日だ。
ある日、バレエ団のゲストダンサーで、ロシアから来仏した天才アースランのリハーサルを盗み見するうちにその完璧さに感動し、激情にかられて彼の化粧室に忍び込み、発作のようなセックスをしてしまう。そして去り際に、自分のアメリカの住所を書き残していく。
帰国後、天才的振付家のミスターK率いるニューヨークの名門バレエ団に採用されるが、やはりここでも群舞
止まり。そんなジョアンのもとに、アースランから封書が届き始め、文通を続けるうちに彼の亡命の手助けをする羽目に陥る。冷戦時代のことで、亡命は非常に危険な行為だ(このあたりは、ヌレエフやバリシニコフなど、優秀な旧ソ連のダンサーたちの亡命事件とダブって興味深い)。
幸い、カナダ経由で亡命は成功。アースランはジョアンの運転する車に潜んでニューヨーク入りし、ジョアンと同じバレエ団から華々しくアメリカデビューを果たす。二人は同棲を始め、ジョアンは亡命を助けた恋人として“時の人”になり、ミスターKは大喜びだ(ちなみにミスターKは、ミスターBと呼ばれたあのジョージ・バランシンをイメージさせる)。
しかし二人の仲は続かなかった。天才アースランは自分と踊れない無能なジョアンに愛想をつかし、ただでさえ女好きの彼は浮気三昧の体たらく。ジョアンは捨てられ、失意のまま自暴自棄になり、昔から彼女を心から愛し、理解してくれている幼馴染のジェイコブと肉体関係を持つようになる。結果、妊娠。彼女は潔くバレエ団を辞めて結婚生活に入る。心理学者のジェイコブの仕事で一家はカリフォルニアに転居し、ジョアンはバレエスクールを主宰し、息子ハリーにも教え始める。
そのハリーは母親がアースランの元彼女であることを幼少のころから誇りに思い、この天才に憧れを抱いている。成長とともにバレエの才能を発揮し始め、16歳になるとジョアンの古巣のバレエ団で特別レッスンを受けるようにもなる。当然、大御所アースランの目にも留まり、それが要因となってジョアンの幸福な結婚生活が崩壊の危機に晒されていく。誰の目にもハリーがアースランに似すぎているのだ、容貌も才能も……。そして徐々に明かされて行くジョアンの秘密。
だが、ジョアンはこの“修羅場”を真の愛の力で乗り越えていく。想定外の衝撃のハプニングでストーリーが展開していく本書の読みどころはまさにこの点にある。ドラッグ、セックス、嫉妬が渦巻くバレエ界を突き抜けた先で、主人公はふつうの人間であることの幸せ、人を愛することの意味を見いだし、大人の女性に成長していく。彼女の生き方に沿って読み進むほどに、読者も心豊かに、目が開かれていく──これは、変ることを恐れない人間の、激情と愛情と勇気のドラマチックな物語。
上記内容は本書刊行時のものです。