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いただきますの山
昆虫食ガール 狩猟女子 里山移住の成長記録
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年11月1日
- 書店発売日
- 2022年11月1日
- 登録日
- 2022年9月27日
- 最終更新日
- 2025年1月18日
書評掲載情報
2022-12-17 |
毎日新聞
朝刊 評者: 養老孟司(解剖学者) |
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紹介
20代の挫折から山奥での狩猟へ。
奮闘する若者の自然への愛情と、青春の複雑な気持ちを、一風変わった食生活と共に、みずみずしく描写した物語
目次
はじまりは挫折から
第1章 私なりの〝街の狩猟〟
記憶のない時と尾道への旅/ 小さい頃の夢は〝海女さん〟になること/ 罠猟免許を取った理由/ 街でできる狩ハンティング猟/ 初めて虫を食べたのは
第2章 芸げ いほく北の自然と〝銃猟〟猟師との出会い
母と北広島町・芸北へのドライブ/不思議なカフェで会った有名人/猟師のアジト/〝もっちゃん〟とイノシシの皮を剥ぐ/家探し
第3章 移住と農業と銃猟免許取得
晴れて芸北へ/ 初めての農業/ キャベツ畑/1回目の米作り/ 田んぼのたまご丼/ 草刈り= 狩り/ 田舎の散歩は難しい? / やっぱり蝉は欠かせない/ 〝干し〟に願いを/ 赤ちゃんイノシシとの出会い/ イノシシの子の母になる/ 第一種銃猟免許を取る! / 銃砲所持許可証の取得/あこがれの銃、ミロクを譲り受ける
第4章 初めての猟期と忘れられない味
いよいよ初めての猟へ! / 師匠/ 雪山での〝待ち〟/ 猟の七つ道具/ 師匠と山を歩きたい/ イノシシを追って山を巡る/ イノシシを狙い撃つ/ 初めてのイノシシの〝止めさし〟/ 大きくなったココとコテツ/ココとコテツがつないでくれた出会い
第5章 ブラウン・ゲイブルズの日常
昆虫食界のトロ、カミキリムシの幼虫/ 師匠と猿/ あこがれの小麦畑/ 小麦の種蒔き/ 酵母も石臼も手作りしたい/ 小麦の収穫と便利な昔の道具/ 土から作ったパンの香り/ 草野のばあちゃん/〝山の灯台〟から始まった、落ち着ける家探し/ サンタクロース加計会長/ 春の味わい/ 新しい仕事、新しい日々/ 新しい家族/麦飴は懐かしい味/ 〝地域での自給自足〟に加わりたい/ 命のつながり/ 罠を掛ける/ 山を歩く/ 束元、撃つ! / 稲刈りとイナゴ/日々の楽しみとは
第6章 〝人〟としての悩み
地域と私とのつながり/ 水が出ない/ ひとりの私と銃/ 私のけもの道はどこへ/さよなら、ブラウン・ゲイブルズ
第7 章 R ターン
朔太郎のノイローゼ/ 江田島へのRターン/ 師匠からの手紙/ 猟銃を手放した私にできること
おわりに
ひと皿に乗せるたくさんのエピソード
前書きなど
はじまりは挫折から
私は幼稚園の先生だった。
幼稚園の先生になろうと思ったきっかけは、高校時代の職場体験で保育園に行ったことだ。子どもが好きだったし、友人や、保育士の母からも
「りえは、向いとると思うわ」
と言われていて自信もあったので、幼稚園の先生を目指すことにした。
高校を卒業して、幼児教育を学ぶ短期大学に入学した。短大では、2年間という限られた期間に、ぎっしり授業や実習が詰め込まれていた。付いていくのは大変だったが、それでも、自分が幼い頃に出会った先生たちの
ように、子どもを笑顔にできる先生になりたいと思い、頑張った。
忙しい授業の傍ら、私はフォークソング部に所属していた。〝パピヨン〟という犬種の名前を付けたコピーバンドを組んで、広島のライブハウスでYAMAHAのアコースティック・ギターを弾いていた。卒業ライブでは、大好きなスピッツの『春の歌』を最後に歌った。
〽重い足でぬかるむ道を来た
トゲのある藪やぶをかき分けてきた
食べられそうな全てを食べた
”食べられそうな全てを食べた”という歌詞が、食いしん坊の私のことをそのまま言い表しているように感じて、特に好きだった。
「子どもたちに人気の先生になってね!」
「ギターが弾ける先生、いいね!」
バンドメンバーも応援してくれ、就職先の幼稚園で着るためにと、猫好きの私のために、黒猫がたくさん描いてある生成りのエプロンをプレゼントしてくれた。私は、希望に満ちて卒業の春を迎えた。
2015年4月、私は小さい頃に自分が通っていた幼稚園に就職した。
ついに幼稚園の先生になれたのだ。
しかし、社会人生活に慣れるのに苦労し、1年が過ぎようとしていた頃、朝の清掃の時間に倒れてしまい、そのまま数か月間体調がよくならず、仕事は続けたかったのだが自主退職をすることになった。
耳鼻科や心療内科にも行ったが、学生時代とは違う新しい環境と人間関
係の中で、自分の気持ちや考えをうまく伝えられずに溜た め込んでしまったことが原因だろうと言われた。
苦渋の決断だった。
仕事を辞めた私は、空っぽになった。幼稚園の先生になることをずっと目指していたから。
自分には無理なのだろうか?
短大で学んできたことは無駄だったのだろうか?
何でこうなったんだろう?
私はこれからどうしたらいいんだろう……
こんな私に何ができるんだろう……
私はいったい何がしたいんだろう……
急に何も無くなった喪失感は大きく、心にポッカリと穴があいた。次のことを考えようと思っても、他に何が自分にできるのか思いつかなかった。
*
これは、そんな私が、北広島町の芸北に移住して出会った、忘れられない味、生きる力を与えてくれた大切な味を伝える”物語”だ。
版元から一言
中国新聞で異例の2年長期連載された人気コラム『あこがれ山暮らし~北広島から』を執筆した著者は、地元広島の過疎が進む山里『北広島町芸北』で、狩猟や農業などの田舎暮らしを通じて、20代すぐに挫折した心を癒しながら成長していきます。
「今殺してしまうんだったら、もう少し大きくして食べます!」
「わしらは撃たんけえ、束元が撃て!」
(本文から)
一風変わった食生活を通じて、さまざまな田舎暮らしの素晴らしさを紹介しながら、決して強くはない20代の若者が、たった1人で誰も知り合いがいない田舎町に移住し、全く未経験の農業や狩猟に果敢に奮闘し、地元の人たちに支えられながら少しづつ成長する里山移住の青春成長物語です。
生きることは食べること。
泣きながら自分で育てた猪の肉を頬張り、懸命に生きた6年間の記録です。どうか読んでみてください。
◯社会人1年目の挫折 ◯自分なりの狩猟 ◯北広島町での漁師との出会い ◯里山への移住 ◯はじめての農業 ◯雪山での狩猟 ◯育てたイノシシを自分で捌いて食べる ◯昆虫食(蝉・バッタ・蜘蛛・カミキリムシの幼虫... ◯爬虫類・害獣食(カエル・蛇・ヌートリア・イノシシ・猿...) ◯命を奪う道具「銃」と命への責任◯移住者の心細さ
上記内容は本書刊行時のものです。