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私、人間です。社員に贈る最後の結び文 吉野眞弘(著/文) - メディア総合研究所
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私、人間です。社員に贈る最後の結び文

四六判
縦188mm 横128mm
192ページ
並製
定価 900円+税
ISBN
978-4-944124-72-5
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年12月
書店発売日
登録日
2014年11月6日
最終更新日
2015年1月13日
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紹介

夏と海のことを、吉野さんと話した。それは僕の思い出であったが、吉野さんの思い出でもあった。深く共感してもらった。このことがあってすぐ、東京の吉野さん宛に、拙著『となりのボクちゃん。』を贈ったのが、今回の『私、人間です。』に関しての僕の旅の始まりである。やがて挿画の依頼。すぐに、吉野さんから原稿の一部が送られてきた。この中の「まえがき」の一文がすごかった。僕はしみじみと心打たれた。川で亡くなった長田くんの話。弟さんの話。生き生きと目の前に立ち現れてくる少年時代の情景。故郷をあとにして上京する吉野さんの青春の志。同時に、滔滔と流れる大淀川、宮崎神宮の深い森、弟さんと戯れたという競馬場の青い芝生の風景も、大きく目の前に広がった。これは、行かねばならないと思った。

<寄稿文より 中崎宣弘>

仕事が片付いたのが夜八時過ぎだったので、翻訳メディア事業部のY君に、「おい、ホッピーでも行くか?」と電話すると、「今はダメです、あと二、三時間後なら」とあっさり袖にされた。それではとIT事業部を覗くと、喧々諤々と討議をやっていて、誘いの声をかけるどころではない。管理部のK君は風邪気味でいかにも辛そう。一緒に、と言うのが申し訳ない。結局、まだ働いているみんなに深々と最敬礼をし、ガード下の赤提灯で一人酒となった。

考えた。会社は誰のものか?酩酊の底から神の声が響いてきた。「従業員」のもの、それ以外の何物でもない。神はハッキリそのようにおおせられた。

<本文より>

目次

第一章 人生を生きること
1. 二人のひろしおじさん
2. 再び幕が上がる
3. ハリジャン
4. メリー・クリスマス
5. ミッちゃん
6. 見つめ合う
7. 思いやり
8. 命の大切さ
9. 情熱的に生きたいのさ
10. 喜多見駅のプラットホーム
11. ニッコリ笑って!
12. 今日という明日
13. 言霊
14. 素読
15. 頭を垂れる稲穂
16. 親の背中
17. 不条理の輝き
18. 私を変える
19. ハアハア
20. 野生のあなたに乾杯!
21. 老子とヒッチコック
22. 思いやりじゃ
23. 蚊・蚤・虱トリオ
24. あんた、誰?
25. 大馬鹿者!
26. いばらの道
27. ウェル・バランス
28. ご恩返し
29. 西先生
30. ブッダ
31. 神が与えた労苦
第二章 経営のこと
1. ババク・パヤミの教え
2. 奇人・変人・異人
3. あるオヤジの予言
4. 赤ちゃんのハイハイ
5. 西郷どん
6. 急がば回れ
7. 恋する男女
8. エイリアン
9.GIM革命の時代
10. やってみなはれ
11. 頭は空っぽ
12. 赤提灯
13. ゴッホ
14. チャップリンの次回作
15. オヤジのノオト
16. 至宝の神々
17. 神の声
18. 変なオジサン
19. 眠れんなあ
20. ボタンのかけ違い
22. 色眼鏡
23. M先輩、ありがとう!
24. こころの痛み
25. ホッピー会
26. 初心忘るべからず
27. 女ソクラテス
28. サンドイッチマン
29. アットホームな味
30. あうんの呼吸
31. 神の清掃
32. からだを張ったお金
33. ストリッパー嬢の感謝
34. 妖しく輝く
35. 私、これで会社を止めました
36. 会社のナマズ
37. 詐欺陰陽師の占い
38. 生かされている
39. 私はデクノボウ
40. あなたの顔立ち
41. シアワセだなあ
42. 正直の頭
43. 我が子はすべてよい子
44. 未来のメシア
45. 今日も誠実ですか?
46. あなたに贈る五カ条のご誓文
47. 大いなる愚者は会社を救う
48. 慮るこころ
49. 社長、無理なされずに。
50. 生きていますか?
51. ホモ・ルーデンス
第三章 夢のこと
1. メビウスの輪
2. 少年とサッカー・ボウル
3. シアワセってなんだろう?
4. エチュードの軌跡
5. 生きる工夫
6. 信じる白寿
7. 灯じる救い
8. 失敗は成功の母
9. 十年前のオレ
第四章 人生の彩
1. 花の命は短くて
2. 煮込みと大熱燗
3. 多様性の花束
4. 只管読書
5. 記憶の走馬灯
6. 懐かしの江平若草
7. ラジーフのメモ
8. 青いカナリア
9. 自分との真剣勝負
10. アンチ・スピード
11. オバケ机
12. 石ころも生きている
13. 他人を生きる
14. 歌舞伎町の毛沢東
15. 太陽がいっぱい
16. 全部宇宙に教わった
17. バカタレ二十一会
18. 車座になろうよ
19. 大石がゴロリと動いた
20. 神が降りてくる
21. 人間の多様性
22. 抱いて!
23. 末永先生と鉄剣
24. 山師の語り部
25. 怪物・光くん
26. 人生は通過点だよ
27. チャーラからの贈り物
28. 赤玉ボーットワイン
29. お齢を考えなあきまへんで
30. 曼荼羅
31. 一卵性双生児
32. 人生の色彩
寄稿文  中崎宣弘
あとがき
付録
引用・参考文献一覧

前書きなど

僕の故郷は南九州の宮崎である。自宅の近くに、旧官幣大社の宮崎神宮がある。少年の頃、鬱蒼とした木々と小さな沼池に包まれた境内は僕らの格好の遊び場だった。また、そのずっとずっと遠くの高台には、通称、平和台と称される八紘一宇の塔があった。塔裏手の雑木林には、戦時中に掘られた防空壕が幾つもあり、ここもまた秘密の遊び場として人気があった。僕らの誰もが肥後守をポケットに忍ばせ、いっぱしの大人気取りだった。
 街の南側には大淀川がゆるやかに流れ、悠久の時を刻んでいた。夏休みともなると、近所の子供たちが宿題もそこそこに、釣り竿とミミズ缶を手に大挙して釣りに繰り出した。ハゼや時にはスズキの大物まで上がった。釣りに飽きると、僕らは水遊びに夢中になり、疲れると冷たい川の清流でぷかぷかと仰向けになってからだを浮かべた。瞼を閉じると、それでも燃えたぎる陽が眩し過ぎた。この地では、太陽はいつも爛れていた。
小学校四年生の夏、その川で仲良しだった長田くんが亡くなった。おとなしかった長田くんの横顔が遠くの方に消えた。その時から、川を目指す僕の足はふっつりと止まった。長い夏の最後だった。

 この街に僕は十八年間住んだ。東京に立つ最後の日の午後、僕は弟を連れて、郊外にある広い競馬場に出かけた。ふかふかの緑の絨毯の上を、ポリオの重症心身障害児の弟とかけっこをした。弟は不自由な足を軋ませながら、きゃあきゃあと雄叫びを上げて僕を追って来る。弟の笑顔が間近に近付き、突然僕にがばっと抱きつく。弟の弾んだ息の乱れや饐えたよだれのにおいが、五十年経た今でも鮮やかだ。その翌日、僕は一人、単線の日豊本線に乗り、初めて九州という地を離れ、東京に向かった。

気付くと、あの時から半世紀。いつの間にかあの「僕」はいなくなり、かわりに「私」というペルソナを被った経営者が一人悄然と立っている。遊びに夢中だったあの頃の「僕」は消え、かわりに悩める経営者の「私」が今ここにいる。
好奇心豊かな僕の感性は、どこへ消えたのだろうか。僕は瞳の輝きを、一体どこに置き忘れたのだろう。もしかしたら、私はそれを知っているくせに、見て見ぬふりをしているのではないだろうか。

そのペルソナを被った悩める経営者が、この十数年、社員に向けて雑多な文章を書き綴った。題して「ノブリス・オブリージュ・ノオト」、本来は高貴なるものの責務ノオトという程の意味だが、今再読してみると、むしろ、この文は「社員に贈る最後の結び文」と言った方がよりふさわしい気がする。その理由は、人生のすべてを私は社員一人ひとりから学んだからである。

「人間は、なぜ生きるのだろうか?」
偶然に生を受け、錯覚の中で生を送り、必然の死を迎えなければならない人間にとって、生きるとはどういう意味を持つのだろうか。私には分からない。ただ今の私に言える確かなことがただ一つだけある。それは、死の床に至るその日まで、私は生きる意味を一生懸命に問い続けるだろう、ということだ。生き生きと生き続けるとは、とりもなおさず生きている意味を何度も何度も問い続けることだから。

その意味では、この小冊子は社員と私との間で交わされた「結び文」であると同時に、私が社員のみなさんすべてから教わった「人間として生きる書」でもある。
「人間は、なぜ生きるのだろうか」
そう自分に問い続けることに意味があるならば、この書『私、人間です。』は、読者にとっても価値のある一冊といっていいのかも知れない。

刊行に際し、またまた、多くの方にお世話になった。特に題字、挿画、寄稿文を書いていただいた『となりのボクちゃん。』の著者でもあり、日本の稀有のデザイナーでもある中崎宣弘氏には、お礼を述べる手立てがないほどお世話になった。また、僕にとっては深遠な哲学の書である『となりのボクちゃん。』の宣ちゃんには大きな力を与えられた。縁は異なものであるが、京都ラジオカフェの高島加代子さんの霊感溢れるご紹介がなければ、中崎さんとの出会いもなかった。まさに感謝以外に言葉がない。また、たいへんな編集の労をいとわず執っていただいたメディア総合研究所の森山文恵さんの素晴らしい情熱、何度と泣く校正を手伝っていただいた金井妙さんの地道な作業、それに暁印刷さんの最高技術がなければ、とてもこの本は世に誕生していなかった。すべての方に手を合わせたい。
最後に、四十有余年に亘り私を支え続けてくれた我が家の山の神・政子には、こころからありがとうと言いたい。また、コウノトリに運ばれてきた有佐と美玲にも。
この書を捧げて、私の悔悛の秘跡としたい。

私は生きているのではない。生かされているのだ。

版元から一言

40代で会社を設立して以来21年間経営者稼業に専念してきた著者が、経営のバトンを次世代に引き継ぎ、青年時代からの夢を追って筆をとる。ウソか本当か、次なる目標は芥川賞!
本作品は、著者が10年以上に亘って社員に宛てて日々綴ってきたメールの文章をまとめたエッセイです。人生のこと、愛のこと、芸術のこと、経営のこと、読書のこと、お酒のこと、そして子供時代のことなど、悩める人生を体当たりで生きる著者の本音やヒミツが詰まった1冊。現代を生きる社会人ならついついページをめくってしまう、等身大の企業人の喜怒哀楽をお楽しみください。
『となりのボクちゃん。』の作者、中崎宣弘氏による、著者の故郷・宮崎を舞台にした温かくて優しい挿絵の数々は、読者の郷愁を誘います。

著者プロフィール

吉野眞弘  (ヨシノマサヒロ)  (著/文

宮崎県宮崎市生まれ。早稲田大学理工学研究科修士課程卒業。1993年10月株式会社メディア総合研究所創立。以後20年に亘り、代表取締役社長を務める。会社はIT、翻訳、映像、出版、教育、中国事業等、様々なメディアの融合を通した独特の事業展開を行っている。2013年には伊勢神宮式年遷宮20年のメディア統括業務をご支援、また同年、トロント国際映画祭を始め世界10数カ国の映画祭で入賞を果たしている長編映画「人間」を製作、主演も務める。趣味は、読書、テニス、山登り。人生最後の夢は、人々のこころにいつまでも残る長編小説を書き上げること。2014年10月から株式会社メディア総合研究所取締役会長。

上記内容は本書刊行時のものです。