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クシシュトフ・ヴォディチコ 瀧 健太郎(著) - 共和国
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クシシュトフ・ヴォディチコ (クシシュトフ ヴォディチコ) アンビヴァレントな記憶装置 (アンビヴァレント ナ キオクソウチ)

芸術
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発行:共和国
A5変形判
縦188mm 横150mm 厚さ27mm
重さ 400g
320ページ
並製
価格 5,000 円+税   5,500 円(税込)
ISBN
978-4-911729-00-7   COPY
ISBN 13
9784911729007   COPY
ISBN 10h
4-911729-00-7   COPY
ISBN 10
4911729007   COPY
出版者記号
911729   COPY
Cコード
C0070  
0:一般 0:単行本 70:芸術総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2026年7月10日
書店発売日
登録日
2026年6月15日
最終更新日
2026年7月14日
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紹介

建造物や彫像にイメージを投影し、都市空間を変容させる〈パブリック・プロジェクション〉の創始者、クシシュトフ・ヴォデイチコ(1943年生)。一貫して政治や社会とアートの境界を揺さぶり、〈公共性〉から〈生存〉へ変転する異能のアーティストの全体像に肉薄する。

――生地ポーランドから合衆国をはじめとする世界各国の博物館や美術館、そして原爆ドーム前、レーニン記念碑にいたる建造物や彫像の壁面に、戦争、ホームレス、家庭内暴力を想起させるイメージを投影し、近未来を意識した装置や乗り物を考案。都市空間に政治的文脈を持ち込むことで〈公共〉を異化させる稀有な表現者。その全貌を知るうえでの必携書。

定価5000円+悪税

目次

はじめに
 
I 地政学と社会心理のアート
 
第1章 あのときアートは何をみた?

1、共産圏、ポーランド ワルシャワの路上、ポーランド、一九七三年
2、冷戦期・新自由主義を迎えた西側 
  シュトゥットガルト中央駅、西ドイツ、一九八三年
  トンプキン・スクエア公園、ニューヨーク、アメリカ合衆国、一九八八年
  ストックホルムとパリの路上、スウェーデン/フランス、一九九二
3、戦禍の後に残されたもの
  バンカーヒル記念碑、ボストン、アメリカ合衆国、一九九八年
  原爆ドーム、広島、日本 、一九九九年
  ゲーテとシラー像、劇場広場、ヴァイマル、ドイツ、二〇一六年

第2章 アートは何を変えたのか?

1、心理的移行の装置/投影
 「みんなが注目してくれる!」中学生、広島、日本、二〇〇一
 「人殺しになるためではない」造船所跡、リヴァプール、イギリス、二〇〇八
 「分断は私たちの世代でなくさなければ」国立現代美術館ソウル館、ソウル、韓国、二〇一七
2、重ねられた二つの時間
 国境沿いの街から 一九八八/二〇〇一
 銃を握る手 一九八八/二〇一八
 分断と対話 一九八五/二〇一三


II 足跡

第1章 ポーランド 静かな抵抗

1、出自と第二次大戦後のポーランドの政治的状況
 美術アカデミーと工業デザイナー時代
 記念碑・楽器/装置
 個人的な装置《パーソナル・インストゥルメント》
 自分自身を追う回廊《ア・パッセージ》
2、ポーランド前衛芸術 状況と実験
 一九七〇年代ポーランドの前衛芸術
 ポーランドでの実験的写真と光学の自画像
 スライド映写による線的構造
 ポーランド出国
 一九八〇年代のポーランド

第2章 移民のアーティストとして

1、カナダへの移住
 思考実験のドローイング
 〈パブリック・プロジェクション〉の開始
 新たな観客の創出
2、アメリカ合衆国への移住 
 ホームレスと公園の彫像たち
3、資本主義世界と死の舞踏
4、〈パブリック・プロジェクション〉のテーマ分析

第3章 社会的介入への移行

1、好戦的なプロジェクト
2、コミュニケーションのための装置
3、問題提起型のデザインへ

第4章 冷戦の終焉と〈パブリック・プロジェクション〉 沈黙から語りへ

1、新自由主義の時代を迎えて
2、湾岸戦争を背景に
3、公共の投影の再開―投影と語り
4、窓/壁の向こう側
5、冷戦崩壊期の〈パブリック・プロジェクション〉
6、公共圏の機能を推し量る
7、社会的転回と反省なきパラダイムシフト

第5章 二〇〇〇年代のヴォディチコ

1、9・11への反応
2、二〇〇〇年以降の〈パブリック・プロジェクション〉
3、多義的な境界線
4、彫像の語り、多声性
5、応答としてのアート
6、非‐戦文化と〈モニュメント〉構想
7、〈モニュメント〉という記述法


III 記憶装置としてのアート

第1章 集合意識のフィードバック

1、三つのメカニズム
 心理的移行のメカニズム
 自己視認のフィードバック
 目撃者――集合的なフィードバック
2、記述のためのアート
 参加の使命感
 書き込みのプラットフォームとして
 集合意識の記録装置

第2章 アート・記憶装置・両義性

1、問題提起の質的変化
2、誰が書き込むのか?
3、政治的文脈の途絶と場への記述
4、絞首台のユーモアとして
5、記憶装置としてのアート
6、対抗の記念碑から両義性へ



あとがき

[附録]スライド投影による〈パブリック・プロジェクション〉(1980-1991)一覧

前書きなど

〔……〕本来、公的な空間には、そこに集うさまざまな歴史的言説が蓄積されていることが想定できる。学生運動が盛んであった時期の新宿駅の構内のように、主張の異なる集団による衝突が起きた現場には、暴力/非暴力にかかわらず、眼には見えなくとも政治的闘争の文脈がその残響のようなものとして場に漂っていると考えられる。そうした余波や痕跡が抹消され、漂白させられているとするなら、私たちはその根源をどう感知し、遡ることができるのだろうか。
 世界的史な局面からみれば、この半世紀の間に資本主義/共産主義の議論の終焉と、それまで抑えつけられていた小国や民族、マイノリティの声があがっていく政治的文脈が、いたる所に刻み付けられているはずだ。あるいは新自由主義的な潮流のために、そうした政治的文脈を好まない資本の論理によって、開発業者らが一掃してしまったのだろうか。それともIT時代を迎え、すべての情報が曝け出されつつも、情報の平板化と均質化に埋もれ、国際的なテクノ的状況によって場と政治性が切り離され、問題が矮小化されていく傾向も、その一端を担っているのだろうか。このような状況下で何か声を上げたとて、世界中にあふれる情報のノイズにかき消され、表面上は何も起こっていないかのように見過ごされ、水面下で格差拡大だけが浸透していく、といういびつな状態に陥っている。
 現在にいたる高度情報社会の進化は、これまで集積された情報を誰が管理するのか、その倫理的規範も曖昧なまま、ただただ膨大な情報を地球規模で吸収する記録装置として日々肥大化している。それは一種の両義性を帯びた進化の過程だ。実際、当局による歴史改竄や記録廃棄が後を絶たないなか、市民の不満は消費者やユーザーとして呟くことしかできていない。
 そのような生きる空間と歴史的な時間の両軸が危機を迎えているこの時代に、クシシュトフ・ヴォディチコの活動は一つの示唆を与えてくれる。彼のプロジェクトは、単に空間の政治性をクリーンや真空状態にするのではなく、アートの介入によってその場の潔癖症や神経症、あるいは窒息状態の人々の存在を浮かび上がらせようとする。その過程は、私的な言説を公的で社会的な問題にまで昇華させ、現代の議論なき空間、声なき声を別様な形で顕在化させてきた。彼の軌跡は、精神分析から集団セラピーなどの来談者中心法的なアプローチへ、そしてなんらかの膠着状態をまずは「動くこと」で変革を迫る行動療法的な営みへとたどってきた。いわばフロイト以降の二十世紀の心理学的が歩んできた道を、社会アクションによってトレースしているかのようだ。個の心理と社会心理の関係、それらのフィードバックのプロセスを分析することは、前述のような現代社会の袋小路にいるような状態に解決の糸口を与えてくれる。本書はそのようなクシシュトフ・ヴォディチコの活動を遡行的に追っていき、出来事の分析を試みる。
――「はじめに」より

版元から一言

担当者より:クシシュトフ・ヴォディチコの表現は、世の中に「いない」「視えない」ものとされる戦争やDVの被害者、ホームレスをはじめとする社会的弱者やマイノリティたちの姿や声を都市空間に可視化することで、それを見る/それに参加する人びとの意識や感性にありありと働きかけます。そして、わたしたちが生きるこの現実とは別の現実がたしかに存在するのだ、という確信を与えてくれます。かれの手になる一連の表現は、広告代理店や巨大資本などが都庁や万博と結託して参加者の内面を虚無化し、腐敗させることを目的とした「なんとかマッピング」などという〈アート〉とはまったく異なる、「微小な生」を獲得するための歴史に連なる達成のひとつです。本書は、豊富な図版とともにその全体像を描き出した、いまこの時代を生きる人たちにこそ読んでほしい1冊になりました。ぜひ。

著者プロフィール

瀧 健太郎  (タキ ケンタロウ)  (

1973年、大阪府に生まれる。横浜国立大学大学院都市イノベーション専攻(博士)。現在は、NPO法人ビデオアートセンター東京理事、東海大学教養学部芸術学科准教授。専攻は、メディア芸術、美術研究。
共著に、『飯村隆彦 ヴィデオ・フィールド』(MORI YU GALLERY、2023)、『ぼくらはヴィジュアルで思考する シームレス・メディアの時代とvideo art』(現代企画室、2013)、『いま、ここからの映像術 近未来ヴィジュアルの予感』(フィルム・アート社、2009)、映像出版企画に、ハルーン・ファロッキ『世界のイメージと戦争の刻印/隔てられた戦争 識別+追跡』(2018、現代企画室)、『フィルム・アンデパンダン一九六四 ぼく自身のためのCM』(飯村隆彦映像研究所+REF、2013)、『キカイデミルコト 日本のビデオアートの先駆者たち』(現代企画室、2013)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。