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男女別学の倫理とイスラーム
教育のジェンダー平等を問う
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2026年3月6日
- 書店発売日
- 2026年3月10日
- 登録日
- 2026年1月28日
- 最終更新日
- 2026年3月5日
紹介
なぜ、のびのびと学べるのか?
ジェンダー不平等の象徴とみなされがちな男女別学。だが、それは教育現場が何をいかに伝えるかによる。イスラーム諸国の多様な事例をもとに、別学・共学の文化的富の継承のあり方を再考し、学校教育の課題に挑む画期的研究。
目次
まえがき 服部美奈
序章―イスラームと男女別学の倫理を問う視点 服部美奈
第1章 エジプトにおける男女別学制度―特にアズハルの制度とその宗教的根拠 松永 修
コラム① イスラーム法学における男女混合(ikhtilāṭ)の是非―四大法学派と近現代学者の見解 松永 修
第2章 トルコの共学による排除と別学による包摂 望月遥加
コラム② イスタンブルの女性マドラサ 山本直輝
第3章 イランにおける男女別学 森田豊子
第4章 シーア派の女子教育観と女性の地位 平野貴大
第5章 男女別学の倫理の源流―一三世紀のイスラーム倫理学者トゥースィーの思想 西山尚希
コラム③ 中世イスラーム社会の教育とジェンダー 小野仁美
第6章 インドネシアとマレーシアの別学・共学 服部美奈
第7章 タリバンの思想における女子教育 中田 考
第8章 アフガニスタン首都カーブルの女子マドラサ 小野仁美
コラム④ 在日ムスリムの男女別学 松山洋平
コラム⑤ ムスリム当事者による学校との「交渉」の経験 松山洋平
終章―日本の公立高等学校の共学化問題に照らして 小野仁美
あとがき 小野仁美
前書きなど
本書のテーマである男女別学(以下、別学)と男女共学(以下、共学)の問題は、どのような形態であれ教育の営みがあるところならば世界中で見られるものである。同時に、自分が受けた教育が別学でも共学でも、あるいはその両方でも、それぞれの経験から身近に語ることのできる日常的なトピックでもある。
本書の第一の特徴は、日本で暮らす私たちにとってもなじみ深い別学・共学の問題を、イスラーム社会・思想を通して、改めて眺めてみる点にある。そして、別学・共学をめぐる日本のこれまでの議論に対して、異なる視点からの知見を提供するものである。もしかしたら読者の中には、表題にある「イスラーム」という言葉をみて、自分たちの社会とは縁遠いもの、あるいは男女分離を原則とするイスラーム社会と私たちの社会とは違いすぎて接点がないと思う人がいるかもしれない。しかし、別学・共学をめぐる各国の歴史的展開や現代における別学・共学をめぐる議論には、イスラーム世界に限定されない共通の問いがあることを本書から読みとっていただけるのではないかと思う。
本書の第二の特徴は、各国における別学・共学のあり方を、形態から論ずるにとどまらず、別学・共学の背景にある多様な思想や社会・政治状況を論ずる点にある。「あとがき」で小野が述べているように、本書の執筆者の多くはイスラーム思想・哲学・倫理学を専門とするメンバーから構成されており、それぞれが専門とする時代や地域のイスラーム思想・哲学から別学・共学を論じている。別学・共学の問題はこれまで主として教育学から議論されてきたが、本書はそれとは趣を異にしている。具体的には、それぞれが研究対象とする時代や地域のイスラーム思想・哲学・倫理学を論ずる中で、時には必然の流れで、あるいは別の問題を論ずる中で派生的に、イスラーム社会におけるジェンダーと別学・共学の問題との接点が見出されている。この点は他にはない本書の新規性であり、従来の教育学の議論にはなかった別学・共学に関する新たな示唆が本書の随所に現れているのではないかと思う。
本書の第三の特徴は、倫理という切り口から別学・共学を論じている点である。序章でも論じられるように、別学・共学の議論はこれまで主に、教育における平等・公正の問題やジェンダー平等の問題、人権の問題として論じられてきた。一方で、何をもって平等とするか、公正であるか、人権の保障であるかといった議論において、何か普遍的な基準があるかといえば実はそうでもない。そこで、何が普遍的な基準であるかを論ずるよりも、これまで何が普遍的な基準であるかのように語られてきたか、あるいはそのように語られる基準は何によって決められてきたのか、さらには他にどのような論じ方があるのかを改めて考えてみることが、新たな議論を展開するために必要なのではないかと考えた。イスラームにおける倫理の問題を真正面から論ずる力を筆者は有していないが、「人間の性質としての善さと善き行為についての議論」である倫理学 (ʿilm al-akhlāq)や思想・哲学において、上述の問題に関する議論は長い歴史を有している。本書では、そのような豊かな議論を文化的富として捉え、別学・共学という二分法的な議論ではなく、教育を通して何が引き継がれるべき文化的富として理解されているのか、その継承の仕方はどのような形でなされているのか、歴史をたどると現在継承されている思想の源流はどこにあり、それが支流となって、さらには異なる文化的富と合流する形でどのように継承されているのかといった問題群を、多様な時代・地域からみることが重要であると考えている。(後略)
上記内容は本書刊行時のものです。

