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南海トラフ地震はいつ来るのか
- 初版年月日
- 2025年1月31日
- 書店発売日
- 2025年1月22日
- 登録日
- 2024年12月20日
- 最終更新日
- 2025年1月23日
書評掲載情報
2025-02-01 | 毎日新聞 朝刊 |
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紹介
2024年8月8日16時42分頃、日向灘でM7.1の地震が発生した。同地域で発生したほぼ半世紀ぶりのM7クラスの大地震ではあったが、過去にも同じような地震は起きており、日向灘での定常的な地震活動と私は考えていた。ところが地震発生から2時間以上が経過した19時ごろ、気象庁から「巨大地震注意」が発表された。「想定震源域内で、南海トラフ沿いの巨大地震が発生する可能性がある」という推定であった。<
日向灘で起きたM7クラスの大地震と南海トラフ沿いで起きる巨大地震の関係を、気象庁の発表通りに理解できた日本国民がどのくらいいたかはわからないが、おそらくはほとんどの人は、急に「巨大地震発生」の可能性を知らされ、困惑したと思う。
発表の記者会見をした気象庁および関係の評価検討会の専門家の説明も、なんとなく歯切れが悪かった。正直過去に発生した日向灘地震と南海トラフ沿いの東海、東南海、南海地震の関連を指摘した研究がどの程度あったかは知らないが、その関係は地震予知・予測の面からはほとんど議論されていなかったと思う。発表されて以来1週間、少なくともNHKテレビの画面には常に「巨大地震注意」の6文字が示され続けた。
正直、私は専門家の多くが「既存のルートに従って「注意」を出したが、実際には巨大地震は発生しないだろう」と考えていたのではないかと、邪推していた。
発表された「注意」がそのような混乱を引き起こした原因は、「注意」の中に「地球の寿命」で起きる現象と、「人間の寿命」で起きる現象とが混在しているからである。いくら「巨大地震が起きる」「巨大地震が発生する」と叫んでも、地球の寿命での現象なら、会見で説明する関係者も「まあ起きないだろう」と思いながら話すので、その説明には迫力に欠ける。
一般にその違いが理解されていないので、「巨大地震注意」は「何か変」という疑問を多くの人が抱いたのであろう。そのパズルを解き、対策を示したのが本書である。
日本が「地震に成熟した社会の形成」がなされている国になる一助に役立てば幸いである。
目次
■第1章 日向灘地震
1 日向灘地震発生
2 過去の日向灘地震
■第2章 南海トラフ地震臨時情報
1 南海トラフ地震の想定震源域の変化
2 評価検討会
3 「巨大地震注意」
4 想定震源域は地球の寿命
■第3章 南海トラフ巨大地震
1 過去の巨大地震
2 南海トラフ沿い巨大地震の予知
3 次の南海トラフ沿いの地震はいつか
■第4章 太平洋側のほかの地域
1 関東地震
2 関東地震と南海トラフ沿いの地震の関係
3 後発地震注意報
■第5章 地球の寿命の問題点
1 地球の寿命の議論の例
2 活断層と原発
3 活断層の調査
4 それでも地球の寿命にこだわりますか
■第6章 結論
1 学者の責任
2 人間の寿命だけの情報にして欲しい
3 最後は抗震力で
4 抗震力
コラム1 1944 年の東南海地震の調査
コラム2 1946 年の南海地震の出張観測
コラム3 1946 年の南海地震は予知されていた?
コラム4 地下核実験を探知
コラム5 稲村の火
コラム6 津波(tsunami)
コラム7 チリ地震津波
コラム8 鯰と地震 ―宏観現象―
コラム9 タテ(P)波とヨコ(S)波(地震に強くなるトレーニング)
コラム10 緊急地震速報
コラム11 長周期地震動
コラム12 防災力
上記内容は本書刊行時のものです。