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尼僧少尉カタリーナ・デ・エラウソ
時空を超える冒険者
原書: Vida y sucesos de la Monja Alférez
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年5月10日
- 書店発売日
- 2025年5月14日
- 登録日
- 2025年4月1日
- 最終更新日
- 2025年5月19日
書評掲載情報
| 2025-09-05 |
週刊読書人
3604号 評者: 岡本淳子 |
| 2025-06-22 |
読売新聞
朝刊 評者: 金沢百枝(多摩美術大学教授・美術史家) |
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紹介
時は大航海時代――
スペイン北部の町サン・セバスティアンの良家の娘として生まれ、修道院で幼少期を過ごすものの脱走。男性として新大陸に渡航し、時には商人として、時には無頼漢として、また時には兵士として、広大な南米大陸各地を渡り歩いたひとりの人物が実在した。その名はカタリーナ・デ・エラウソ(1592-1650)。「尼僧少尉」という呼び名でも知られ、その波乱万丈の生涯は人々の興味をかきたて、こんにちに至るまで小説・戯曲・映画・コミックの題材となってきた。
カタリーナ・デ・エラウソをわが国ではじめて本格的に紹介。この人物みずからが語ったとされる自伝『尼僧少尉の生涯と事蹟』の翻訳に加え、歴史研究やジェンダー・スタディーズ、演劇論や比較文学など、さまざまな観点からの論考6編を収録、その数奇な生涯と、後世の物語化に迫る。
目次
はじめに
第Ⅰ部
カタリーナ・デ・エラウソ『尼僧少尉の生涯と事蹟』
翻訳と解説(「自伝」成立の経緯)/坂田幸子
第Ⅱ部
第1章 カタリーナ・デ・エラウソの「自伝」に見る十七世紀前半の南米スペイン領植民地――十七世紀前半の南米スペイン領植民地/横山和加子
第2章 スペイン文化の黄金世紀――栄光と斜陽の時代の文芸/竹村文彦・坂田幸子
第3章 「尼僧少尉」、あるいはカトリック帝国における貞操と征服――カタリーナ・デ・エラウソの「自伝」が照らし出すジェンダーとセクシュアリティの諸問題/棚瀬あずさ
第4章 スペイン黄金世紀の演劇における男装の女性と演劇作品――『尼僧少尉』にみるカタリーナ・デ・エラウソの表象/田邊まどか
第5章 舞台とスクリーンの上の「尼僧少尉」――黄金世紀と二十世紀の演劇作品およびメキシコとスペインの映画から/カルロス・ガルシア・ルイス=カスティージョ(坂田幸子訳)
第6章 「獰猛な虎」か「高貴な子猫」か?――フェレール版カタリーナ・デ・エラウソ伝の翻訳・翻案の比較研究/坂田幸子
あとがき/坂田幸子
前書きなど
十六世紀末、スペイン北部の町サン・セバスティアンに良家の娘として生まれた子が、幼くして女子修道院に預けられる。当時のスペインではよくあることだ。だが修道女になる誓いを立てる前に脱走し、髪を切り、修道院で着ていた服を男性用にみずから仕立て直し、旅に出る。フランシスコ、アロンソ、アントニオと、次々に男性名を名乗るこの人物は、見習い水夫として新大陸に渡り、時には商人として、時には無頼漢として、また時には征服戦争に参加する兵士として、広大な南米大陸各地を渡り歩く。戦闘や喧嘩で重傷を負うのも一度ならず。さらにはあわや死刑という危機もくぐりぬける。だがやがて女性であることを明かさざるをえない事態となり……
まるで冒険小説の主人公のようだが、こういう人物が実在したのだ。その名はカタリーナ・デ・エラウソ(一五九二~一六五〇年)。エラウソがみずからの半生を一人称で語る自伝的なテクストは、この人物自身と同じように数奇な命運をたどったのち、一八二九年にはじめて活字となり、それ以降さまざまなヴァージョンで流布するようになる。
そこで語られる波乱万丈の生涯や驚異に満ちた出来事の数々は、人々の興味をかきたて、魅了しつづけてきた。こんにちではこの人物を原型とする映画の登場人物やコミックのキャラクターも存在する。またエラウソの残したテクストは歴史、文化やジェンダー研究にとって貴重な資料だ。
本書はこの人物をわが国ではじめて本格的に紹介するものである。
版元から一言
スペインを中心に、文学や演劇、映画などでも描かれてきたカタリーナ・デ・エラウソの「自伝」を翻訳し、その物語世界の魅力を伝えます。
カタリーナ・デ・エラウソは、日本でも、古くは佐藤春夫が「剣侠尼僧伝」という翻訳小説で取り上げています。近年でも、大航海時代を舞台としたゲームにキャラクターとして登場、また某海賊漫画にも、カタリーナ・デ・エラウソをモデルとしたといわれる「女海賊」が登場しています。
その名前は知られつつも、日本ではその全貌がよくわかっていなかった人物を、初めて本格的に紹介する一冊です。
上記内容は本書刊行時のものです。
