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『ピカドン』(初版オリジナル復刻版)/『ピカドン』とその時代
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年8月6日
- 書店発売日
- 2023年9月11日
- 登録日
- 2023年7月26日
- 最終更新日
- 2023年9月28日
書評掲載情報
2024-02-16 |
みすず
読書アンケート2023 評者: 川本隆史 |
2024-01-13 |
図書新聞
3622 評者: 宮田徹也 |
2023-10-20 |
週刊金曜日
1445 評者: 長瀬海 |
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紹介
「原爆の的確な記録であるばかりでなく、ファンタスティクな魅力をそなえたこの小さな絵本」―大江健三郎(『ヒロシマ・ノート』エピローグより)
1950年、朝鮮戦争勃発後まもない夏、<原爆の図>制作中の丸木夫妻によって編まれた小さな絵本が、研究者の解説冊子とともに当時の姿でよみがえる。
本書は、「原爆の図」の共同制作で知られる画家の丸木位里と赤松俊子(丸木俊)が絵と文を手がけた絵本『ピカドン』(平和を守る会編、ポツダム書店刊)を、一九五〇年の発表時の状態を可能な限り再現して復刻し、あわせて別冊として研究者の解説をまとめたものである。
『ピカドン』は、連合国軍の占領下で原爆報道を禁じるプレスコード(検閲)があり、加えて六月に朝鮮戦争がはじまって反戦運動への圧力も強まるさなかに刊行された。広島に原爆が落とされた当日に各地で起きたできごとの記憶を、ペン画の明瞭な描線と簡潔な語り口によって多角的に伝えるこの絵本は、これまでにも複数の出版社から装いを変えてたびたび刊行されてきた。しかし意外なことに、一九五〇年当時のまま、掌に収まる軽やかな造本を再現する機会は、今回が初めてである。
目次
『ピカドン』絵・文 丸木位里・赤松俊子(丸木俊)
カラー口絵特別付録
幻灯ピカドン/「原爆の図」展ポスター/「原爆の図」関連木版画
はじめに 岡村幸宣
『ピカドン』―たぐいまれなる物語 小沢節子
『ピカドン』と「原爆の図」全国巡回 岡村幸宣
『ピカドン』という出版物の流通と変遷について 鳥羽耕史
幻灯『ピカドン―広島原爆物語―』について 鷲谷花
『ピカドン』と大江健三郎『ヒロシマ・ノート』 高橋由貴
前書きなど
はじめに岡村幸宣
本書は、「原爆の図」の共同制作で知られる画家の丸木位里と赤松俊子(丸木俊)が絵と文を手がけた絵本『ピカドン』(平和を守る会編、ポツダム書店刊)を、一九五〇年の発表時の状態を可能な限り再現して復刻し、あわせて別冊として研究者の解説をまとめたものである。
『ピカドン』は、連合国軍の占領下で原爆報道を禁じるプレスコード(検閲)があり、加えて六月に朝鮮戦争がはじまって反戦運動への圧力も強まるさなかに刊行された。広島に原爆が落とされた当日に各地で起きたできごとの記憶を、ペン画の明瞭な描線と簡潔な語り口によって多角的に伝えるこの絵本は、これまでにも複数の出版社から装いを変えてたびたび刊行されてきた。しかし意外なことに、一九五〇年当時のまま、掌に収まる軽やかな造本を再現する機会は、今回が初めてである。
本書解説編については、その歴史的な意義を明らかにするため、一九五〇年代の文化運動や原爆の表象についての研究を積み重ねてこられた方々に、それぞれの専門領域に即して解説を依頼した。『「原爆の図」―描かれた〈記憶〉、語られた〈絵画〉』(岩波書店、二〇〇二年)の著者であり、「原爆の図」のみならず被爆体験の表現について幅広い関心を寄せる
歴史家の小沢節子は、『ピカドン』の意義と役割を読みなおし、時代を超えて何度も「発見」される表現の可能性を示している。『1950年代―「記録」の時代』(河出書房新社、二〇一〇年)の著者である文学研究者の鳥羽耕史は、『ピカドン』成立の経緯を整理するとともに、その流通と復刻の変遷について明らかにした。一九五〇年代に社会運動のメディアとして広く活用されていた幻灯(スライド)の研究者である鷲谷花は、絵本を再構成した幻灯版『ピカドン』を詳細に分析し、原水禁運動における幻灯の活用の問題にも言及している。戦後日本文学の研究者である高橋由貴は、『ピカドン』を挿画に使い、その存在に再び光を当てた大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』(岩波新書、一九六五年)との関係性を考察する。また、原爆の図丸木美術館の学芸員として「原爆の図」の一九五〇年代の全国巡回の調査研究を行ってきた岡村も、巡回展で用いられたポスターや当時の木版画運動などの複製芸術と『ピカドン』の同時代性についての執筆を担った。
以上の解説に加え、付録として収録した幻灯版『ピカドン』と巡回展ポスター図版も、まとまって初公刊となる。本書の刊行に尽力してくださった琥珀書房の山本捷馬さんに心より感謝したい。なお、原爆の図丸木美術館では、一九五〇年代における丸木と赤松をめぐる複製芸術に焦点を当てた企画展「『ピカドン』とその時代」(二〇二三年十月七日~二〇二四年一月二十八日)を開催することになった。『ピカドン』の原画は所在不明だが、〈原爆の的確な記録であるばかりでなく、ファンタスティクな魅力をそなえたこの小さな絵本〉(大江)は複製技術とともに拡がり続ける。原爆投下から八十年の歳月が過ぎようとしている、しかし核の脅威はいっそう日常と隣りあわせにある今日の時代に、人から人へと手わたしていきたい。
版元から一言
大江健三郎は、『ヒロシマ・ノート』のエピローグで、「『ピカドン』という小さな絵本のことを記憶している人々が、果たしてどれだけいるだろうか?」と述べています。
『ヒロシマ・ノート』の刊行とこの言葉の影響でこれまで多くのヴァージョンの『ピカドン』が刊行され、1965年『ヒロシマ・ノート』刊行以前よりも知られてはいるでしょうが、いまの若い世代にとっては、再び知られずにいるのではないでしょうか。
古書でもオリジナルは数万円の値段がついており、気軽に手に取れるものではないでしょう。
そのような状況の中、岡村幸宣学芸員のお声がけで、初版オリジナルの復活の企画がうまれたのは2022年の6月の広島でした。(原爆の図丸木美術館での企画展にあわせての刊行となりました。)
上記内容は本書刊行時のものです。