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生涯学習と社会教育の基礎
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年11月25日
- 書店発売日
- 2024年11月22日
- 登録日
- 2024年5月17日
- 最終更新日
- 2024年11月20日
書評掲載情報
2025-02-03 | 全私学新聞 2025年2月3日付 |
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紹介
本書は,社会教育論,生涯学習論を学ぶ学生や行政関係者等の入門書として初学者の羅針盤の役割を果たすことを企図しています。生涯学習と社会教育の変遷や基礎的な知識, 人類が直面する課題と今後の展望をわかりやすく解説しています。気鋭の執筆陣が, 生き生きと生きる生活者,学習者の姿を踏まえた社会教育と生涯学習を学ぶ「おもしろさ」「奥深さ」のエッセンスを交えて論じています。
目次
はしがき
第1章 さまざまな学びの形とそれを支えるしくみ
1 学びを支えるしくみを理解する意味
2 生涯学習と社会教育の意味と成り立ち
3 生涯学習と社会教育を支える制度
4 多様な学びの形
5 学ぶことと教えること
6 社会的な課題と学び
第2章 地球市民としての人々の学び
1 「地球市民」とは誰か
2 危機的な問題が山積する現代
3 「問題」と「問題」の絡み合い
4 地球社会を見渡す消費者教育
5 消費者シティズンシップ教育と地球市民
6 「共生の社会教育」の視点
第3章 少子高齢社会・人口減少社会における人々の学び
1 人口動態と社会教育・生涯学習との関わり
2 少子高齢化と社会教育・生涯学習の課題
3 人口減少がもたらす社会教育と生涯学習の課題
4 時代を象徴する障害者の生涯学習推進政策
第4章 インクルーシブな社会に向けた人々の学び
1 社会教育・生涯学習における「排除」の問題
2 インクルージョンの理念
3 インクルーシブな社会に向けた学び
第5章 ジェンダー平等社会に向けた人々の学び
1 「ジェンダー」とは何なのか
2 数値データからみる日本の女性がおかれている状況
3 ケア労働とジェンダーの関係性を考える
4 ジェンダー平等の意識を育む学び
5 ジェンダー平等と社会教育
6 ジェンダー平等社会に向けた学び―哲学カフェの取組
7 ジェンダー平等をめぐる社会教育
第6章 ICT 社会の課題と人々の学び
1 ICT と生涯学習
2 ICT 社会における学びの推移
3 ICT 社会における学びをめぐる課題
第7章 コミュニティが変容する社会における人々の学び
1 コミュニティとは何か
2 近現代における地縁型コミュニティの変容
3 テーマ型コミュニティとネット空間におけるコミュニティの展開
4 コミュニティにおける学びの特徴と展開
第8章 循環型社会に向けた人々の学び
1 人間と自然との関わりを創り直す社会に向けて
2 持続可能な開発という考え方が生まれた背景
3 持続可能な開発のための教育(ESD)とSDGs
4 持続可能な開発を推進する主体とまちづくり
5 農村における資源循環の事例と多様なプレイヤー
6 農村の資源循環に埋め込まれた学び
7 循環型社会の形成をESD として進めるうえでの課題
8 自然環境との相互作用から生まれる自律的な学びへ
第9章 学校がかかえる課題をめぐる人々の学び
1 学校がかかえる課題―不登校
2 学校がかかえる課題―学校における働き方改革
3 コミュニティ・スクールでの学びあいによる学校課題の解決
4 学校に関わる固定観念の「学びほぐし」と公民館と連携した地域からのアプ
ローチ
第10章 生涯学習と社会教育の現在
1 生涯学習と社会教育,それぞれの意義
2 学びの多様性と構造
3 学びを支えるしくみ
第11章 生涯学習と社会教育の歴史と理念
1 生涯学習と社会教育の歴史を構成してきた要素
2 社会教育政策の意味と役割
3 社会教育法制の成立と社会教育行政の展開
4 生涯教育概念の移入と社会教育行政
5 生涯学習政策のなかでの社会教育政策
6 学校教育への注目と社会教育行政への逆風
7 社会教育政策の新しい展開への期待
8 社会教育行政の盛衰
9 役割転換を模索する社会教育行政
第12章 社会教育の役割のこれまでとこれから
1 「持続可能」ということ
2 「元気が出るテレビ」
3 社会教育の学習課題
4 社会教育と持続可能性
5 これまでの社会教育・これからの社会教育
6 社会教育委員という存在
資 料
▪関連法規
▪基礎データ
▪関係年表
前書きなど
はしがき
本書は,社会教育論,生涯学習論の入門書として編まれた。入門書であるからには,この本を手にとってくださった読者に,「社会教育,生涯学習っておもしろい,興味深い」と思っていただきたいと思うし,しっかりエッセンスをお伝えしたうえで,さらに深く学ぼうとしていただきたい。「おもしろい」と感じるポイントは,人によって異なる。本書を分担執筆した各章の著者も,それぞれ大事にしていることが異なる。読者のみなさんには,本の各所に散りばめられている「おもしろさ」のポイントのどこかに引っかかっていただきたい。
とはいえ,どのような領域でも,共有すべき基礎的な知識や考え方がある。社会教育論,生涯学習論においても,もちろんそういったものがある。しかし,そういった知識や考え方の多くは,文脈のなかに位置づけられなければ「おもしろい」わけがない。したがって,専門用語の解説を並べるだけでは「入門」にはなりえない。エッセンスをストーリーとして語ることで,はじめて入門書たりえる。
本書の源流は,碓井正久・倉内史郎編『新社会教育』(学文社,1986年)に行き当たる。この本の後継として,倉内史郎・鈴木眞理編著『生涯学習の基礎』(学文社,1998年),鈴木眞理・永井健夫・梨本雄太郎編著『生涯学習の基礎〔新版〕』(学文社,2011年)があり,本書はこれら本の末裔といえる。編者
代表者(津田)も,学生時代に初めて手に取った社会教育関連の本のひとつが,『新社会教育』であった。『新社会教育』は,まさにエッセンスがストーリーとして簡潔に書かれており,学生時代に,何かにつけこの本を羅針盤のように使っていたことを思い出す。
本書も,少しでも,初学者にとっての羅針盤の役割を果たすことができればと思う。とはいえ,『新社会教育』が編まれた時代から,社会教育や生涯学習をめぐる状況が大きく変化してきた。1986年といえば,まだ冷戦構造さえ残っている「昭和」の時代だった。それから40年足らずのうちに,パソコンの時代を経てスマホが普及し,私たちの情報取得のあり方は大きく変わった。オンデマンドの情報を手元で手軽に取得できる時代になり,活字離ればかりかテレビ離れまで広がった。人々の学習行動が変わっただけでなく,学ぶべき内容も変わってきた。情報網と交通網の発達によって地球が狭くなり,深刻な環境破壊,気候変動,人口減少,経済の停滞など,人類が直面する課題の解決のために,人々の学びが不可欠だとされるようになった。社会教育や生涯学習のエッセンスを語る際のストーリーも,1986年と現在とでは,大きく異なる。
本書は,人類が直面する課題をいくつかピックアップし,それらの解決に関わる学びに焦点を合わせることで,基本的なストーリーを構成した。消費行動の問題,少子高齢社会,人口減少,排除をめぐる問題,ジェンダー問題,情報社会をめぐる問題,コミュニティの変容,自然環境の問題,学校をめぐる問題
を軸とするストーリーによって,社会教育と生涯学習のエッセンスを語っている。
時代の波に翻弄されながらも,社会教育と生涯学習の「おもしろさ」のエッセンスは,人々の生き生きとした生き様と学びとがつながっているところにあると思う。それぞれの章の記述の向こう側に,生き生きと生きる生活者,学習者の姿を感じながら読み進めっていただけたら幸甚である。 編者代表 津田 英二
上記内容は本書刊行時のものです。