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主権者を育てる社会科の授業
社会と出会う・社会を知る・社会を生きる
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年5月30日
- 書店発売日
- 2023年5月30日
- 登録日
- 2023年4月5日
- 最終更新日
- 2023年5月28日
紹介
国内外の教師と教育研究者が絶賛 ‼
脇坂さんの社会科の授業で子どもたちは、具体的な人との出会いによって現代のジレンマを認識し、多様な知識と経験を総合して「答えのない問題」の探究を協同で実現している。本書は、社会科の本質と未来の在り方を鮮明に描き出した好著である。
佐藤 学(東京大学名誉教授)
[著者紹介]
脇坂圭悟
神奈川県小学校総括教諭。大阪教育大学を卒業後、民間企業、寒川町立寒川小学校(2006―2012年)を経て、茅ケ崎市立浜之郷小学校(2012―2022年)に赴任(2017年より研究主任を務める)。2022年からは茅ケ崎市立浜須賀小学校に勤務(2023年より東京学芸大学教職大学院へ現職派遣)。北京師範大学に招待され社会科教育セミナーを開催(2019年)、埼玉大学教育学部非常勤講師(2019年)、第8回学びの共同体国際会議(世界31カ国・2100名参加)にて提案授業を実施(2021年)。個人研究テーマを「自信をもって自己の思いを表現できる子どもたちをめざして」と設定し、そのなかで「学び合う学び」「聴き合う関係づくり」「社会科におけるジャンプの学び」を追求している。
佐藤 学
東京大学名誉教授。北京師範大学客員教授、教育学博士。東京大学大学院教育学研究科元科長・学部長(2004―2006年)。エル・コレヒオ・デ・メヒコ招聘教授(2001年)、ハーバード大学客員教授(2002年)、ニューヨーク大学客員教授(2002年)、ベルリン自由大学招聘教授(2006年)を歴任。全米教育アカデミー(NAE)会員。日本学術会議第一部(人文社会科学)元部長。日本教育学会元会長。アメリカ教育学会(AERA)名誉会員。アジア出版大賞(APA)大賞次賞(2012年)。明遠教育賞(2019年中国)。著書多数。主要な著書が、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、インドネシア語、ベトナム語、タイ語に翻訳されて出版されている。
目次
序 章 社会科における学びのイノベーション―脇坂実践の意義―
第1章 地域教材の開発と学びのデザイン
「開発と環境保護~地域教材を通して」(5年生)
第2章 学びの深まりと広がりをデザインする
「ダムの学習~宮ケ瀬ダムを通して~」(4年生)
第3章 保護者を題材とした学びをデザインする
「工業生産を支える人々~自動車工業の学習を通して~」(5年生)
第4章 活動のある学びをデザインする
「ごみ問題を考えよう~コンビニのごみ箱を通して~」(4年生)
第5章 世界に目を向ける学びのデザイン
1「世界の中の日本~ルワンダ大虐殺から学ぶこととは~」(6年生)
―ルダシングワ真美さんの思いを通して考えよう―
2「世界の中の日本~紛争地に生きる子どもたち~」(6年生)
―シリア難民支援をする大野木さんの話を通して考えよう―
第6章 コロナ禍における学びのデザイン
「国土の自然とともに生きる~トトロの森を守る人々の思いを通して
ナショナルトラスト活動の意義を探ろう~」(5年生)
前書きなど
まえがき―社会科におけるジャンプの学び
本書では、茅ケ崎市立浜之郷小学校において私(脇坂)が勤務した期間(2012~2021年度の10年間)で実践した社会科の授業のなかから七つの学びのデザインと実践を紹介しています。浜之郷小学校は開校以来、学びの共同体学の理念をもとに校内研究を続けています。「聴き合う関係の構築」「ジャンプのある学び」「リフレクションを中心とした研究協議」などを柱にして研究を続けている学校です。
本書では「子どもたちの聴き合う関係」および「ジャンプのある学びのデザイン」を浜之郷小学校での社会科の授業実践を通して紹介しています。いわゆる社会科のネタ本のような構成や書きぶりではなく、子どもたちがどのようにつながり合い、夢中になって学びを深めていくのかを伝えるため、できるだけ子どもたちの言葉やつぶやきを紹介しながら、「読み物風」の構成、書きぶりで執筆するようにしました。私自身が自らの実践をリフレクションしながら執筆していった形となります。読者の皆さんにも、子どもたち一人ひとりがどのような学びのストーリーを描きながら探究を進めているのかをイメージしていただけると思います。
学びの共同体では、通常、「共有の学び」(教科書レベル)と「ジャンプの学び」(教科書以上のレベル)の二つの課題で協同的学びを組織しています。45分の小さな枠組みのなかで、共有レベルとジャンプレベルを入れ込むことの大切さを感じていると同時に、学びを大単元としてデザインし、大きな枠組みとして共有レベルからジャンプレベルに移行していくこともまた、大きな効果があると実感しています。本書で紹介する事例の多くは、単元全体を大きな枠組みとして捉え、「共有の学び」から「ジャンプの学び」へと移行し、単元が進めば進むほど、子どもたちが夢中になって学んでいくという授業デザインをとっています。
では、社会科における「ジャンプの学び」とはどのようなものなのでしょうか。私は、社会科においては「認識をジャンプさせること」が「ジャンプの学び」といえるのではないかと考えています。子どもたちは、これまでの経験や学習、手元にある資料などを通して、課題に対する現在の認識をつくり上げます。そこに、新たな事実や資料を提示することで、これまでつくり上げた認識がどう変わっていくのかを見取ることができます。実際、世の中を生きていく以上、日々新たな情報や事実を突きつけられ、そのつど判断し、行動していくことの連続です。当然、それまでの認識が変わらないときもあれば、変えなければならないときもあります。しかし判断を下す際には、目の前に突きつけられた新たな情報に対して、しっかりと向き合い、吟味する力が必要となります。この力をつけていくという意味においても、「ジャンプの学び」をデザインしていくことはたいへん有効だと感じています。本書でも子どもたちの社会的事象への認識のジャンプを図る試みを多く紹介しています。
先にも記したように、本書では、子どもたちの「言葉」をできる限り多く掲載しました(本文中に登場する児童名はすべて仮名です)。子どもたちがどのように聴き合い、認め合い、つながり合って学びを深めていくのか。また、教師はどのように学びをデザインしファシリテートしていけばよいのかを読者の皆さんとともに考えていくためのたたき台となればこのうえなく幸いです。 脇坂圭悟
版元から一言
本書は、神奈川県茅ケ崎市立浜之郷小学校における、資料と課題によりデザインされ子どもたちがイキイキと主体的に取り組む社会科授業の「学びのカリキュラム」を、具体的な活動場面や子どもたちの言葉をふんだんに取り上げた7つの実践事例から紹介しています。
公立小学校に勤務する脇坂教諭による、教科書では隠されていて見えない現代社会のジレンマに焦点を当てた課題に対して子どもたちが主体的に協同・探究して「社会と出会い・社会を知る・社会を生きる」ための学びをデザインした21世紀型の社会科教育の未来の在り方をさし示した実践です。佐藤教授が提唱・推進する「学びの共同体」の理念をもとに、「共有の学び」(教科書レベル)と「ジャンプの学び」(教科書以上のレベル)の課題、さらに「スピンオフの学び」(発展的なレベル)を子どもたちが主体的かつ協同的に学ぶために、教師がどのようにデザインしファシリテートすればよいのかを提示しています。
上記内容は本書刊行時のものです。