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社会教育・生涯学習入門
誰ひとり置き去りにしない未来へ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2023年3月1日
- 書店発売日
- 2023年2月24日
- 登録日
- 2022年12月7日
- 最終更新日
- 2023年2月21日
書評掲載情報
2023-03-13 | 全私学新聞 |
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紹介
本書は,SDGsの登場により広く社会にその価値が共有されつつある「誰ひとり置き去りにしない」「持続可能で包容的な社会」の実現に向けた道筋を見据えつつ,それを支える社会教育・生涯学習のありようを多角的に論じることをめざしています。社会教育・生涯学習を学び考えるすべての人に,基礎的かつ包括的な知識と,持続可能性へ向けた人と社会の変容・変革を導く学習・教育について考える機会を提供する入門書として,一人ひとりが人生を切り拓き社会づくりに参画する過程を支える生涯学習,そのための社会教育とはどうあるべきか,全10章の論考から全体像を提示しています。
[編著者]
二ノ宮リム さち 東海大学スチューデントアチーブメントセンター准教授 [序章]
同大学院人間環境学研究科兼任講師/環境サステナビリティ研究所所員。東京都昭島市社会教育委員。1990年代後半より国内外のNPO・行政・大学などで持続可能な開発のための教育(ESD)を推進。主な著書・訳書:『社会教育・生涯学習論』共著(学文社,2018),『民主主義を創り出す』共訳(東海大学出版会,2020),『知る・わかる・伝えるSDGs II』編著(学文社,2021)ほか。
朝岡 幸彦 東京農工大学農学部教授 [第2・3章・終章]
博士(教育学)。共生社会システム学会会長。日本環境教育学会会長・日本社会教育学会常任理事/事務局長などを歴任。主著:『社会教育・生涯学習論』編著(学文社,2018),『こども環境学』監修(新星出版社,2021),『「学び」をとめない自治体の教育行政』編著(自治体研究社,2021),『知る・わかる・伝えるSDGs Ⅳ』編著(学文社,2022)ほか。
[著者]
鈴木 敏正 北海道大学教育学部名誉教授 [第1章]
石山 雄貴 鳥取大学地域学部准教授 [第4章]
田開 寛太郎 松本大学総合経営学部講師 [第5章]
伊東 静一 東京学芸大学非常勤講師 [第6章]
中沢 孝之 白河市立図書館館長 [第7章]
林 浩二 千葉県立中央博物館上席研究員 [第8章]
目次
序 章 誰ひとり置き去りにしない未来と社会教育・生涯学習
第1節 持続可能な開発の理念と「誰ひとり置き去りにしない」
第2節 SDG4と「誰ひとり置き去りにしない」社会教育・生涯学習
第3節 社会参画を支えるシティズンシップの学び
第4節 「対話」を通じた自己と社会の変革・変容と社会教育・生涯学習
第5節 本書の構成
第1章 社会教育・生涯学習とは何か ― 理念
第1節 戦後の民主化と社会教育
第2節 グローバリゼーション時代の生涯学習
第3節 ポスト・グローバリゼーション時代の「社会教育としての生涯学習」
第4節 現代民主主義と社会教育・生涯学習の課題
第2章 社会教育・生涯学習はどう変わってきたか ― 歴史
第1節 それは平和から始まった
第2節 経済成長の矛盾と社会教育実践の発展
第3節 生涯学習政策の登場と終焉
第4節 コロナ後の社会教育・生涯学習
第3章 社会教育・生涯学習の法と制度はどうつくられたのか ― 法と制度
第1節 教育基本法の理念と社会教育
第2節 社会教育・生涯学習の法と理念
第3節 社会教育・生涯学習の制度と施設
第4節 新型コロナウイルス感染症のもとでの社会教育・生涯学習
第4章 社会教育・生涯学習を保障する財政をどう考えるか ― 財政
第1節 社会教育の市町村主義
第2節 「公共施設マネジメント」による市町村財政の効率化・合理化
第3節 社会教育費の状況とその脆弱性
第4節 学ぶ権利をお互いに保障しあうシステムとしての社会教育財政へ
第5章 社会教育・生涯学習は地域をどう支えるか ― 地域づくり
第1節 活力あふれるまち長野県松本市に学ぶ
第2節 松本市の「公民館条件整備」への道
第3節 松本市における地域づくりの展開
第4節 松本らしい住民主体の地域づくり
第5節 社会教育・生涯学習から地区自治のあるべき姿
第6章 公民館は市民の学びにどうかかわるのか ― 公民館
第1節 社会教育・生涯学習を支える施設としての公民館
第2節 公民館職員としての専門性
第3節 今後の公民館に求められる支援とは―機能と役割
第7章 図書館は市民の学びにどうかかわるのか ― 図書館
第1節 社会教育施設としての図書館
第2節 図書館職員の専門性
第3節 図書館に求められる支援
第8章 博物館は市民の学びにどうかかわるのか ― 博物館
第1節 博物館とは
第2節 博物館の現況と活動
第3節 市民の学び/参加を支える博物館に向けて
終 章 ポストコロナ・SDGsの社会教育・生涯学習
第1節 忘れられるパンデミックの記憶
第2節 新型コロナを私たちはどう理解し,どう対応してきたのか
第3節 「災害に向き合う教育」をどのように考えるか
第4節 ポストコロナ社会のために
前書きなど
はじめに
「誰ひとり置き去りにしないことを誓う(We pledge that no one will be left behind)」とは,SDGs(持続可能な開発目標)を定めた『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(2015年9月25日第70回国連総会で採択)の前文に書かれたキー概念である。SDGsは地球上のすべての人々にとって共通の課題であり,その実現はすべての人々が担わなければならないものである。さらにSDGsの目標達成の成果から,誰かを除外して切り捨てることがあってはならないという二重の意味が込められている。
いま,私たちが生きている21世紀前半は,文字どおり「すべての人」が当事者とならざるを得ない世界である。その意味で,すべての人が学びつづけ,模索しつづけるための「社会教育・生涯学習」が求められているのである。本書は,そうした社会教育・生涯学習を考えるための入門書として,あえて基本的な枠組みを丁寧に解説しようとしている。初学者はもちろん,専門職として活躍されている職員にも,変貌する社会のなかで社会教育・生涯学習の原点を確認するものとして読んでいただきたい。
さて,私たちは依然として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延する世界に生きている。このパンデミックが世界をどう変えるのかも,注視しなければならない。おそらく,もとの世界には戻らないであろうし,ポストコロナ社会が「誰ひとり置き去りにしない」ものであることを期待したい。そのためにも,新たな社会教育・生涯学習のあり方が模索されねばならないのである。本書を通して,ともに考えていただきたい。 朝岡幸彦(編者)
おわりに
世界の人口は80億人を超え,いっぽう日本の人口は急減期に入った。感染症や気候変動といった人類史を左右するグローバルな危機,少子高齢化やジェンダー格差,経済の停滞,閉塞感の広がりといった日本社会の課題。私たちはいま,誰にも見通しのつかない時代を生きている。そのような時代に,「誰ひとり置き去りにしない」というスローガンと「持続可能な開発」という概念が,世界の道標としての役割を担うべく共有されつつある。経済成長一辺倒の開発や,それを担う人づくりとしての教育は,大きく方向を転換し,社会や環境の質を大切にしながら誰も取り残さない共生の価値を体現する,持続可能で包容的な未来を創る開発と,それを担う人々を支え力づける教育へと,変化することを求められている。
本書はここまで,そうした変化の必要性に向き合う社会教育・生涯学習のありようを,理念,歴史,法制度,財政,地域づくり,施設と職員といった多様な側面から論じ,その全体像を提示してきた。
人類が切り拓いてきた,すべての人の基本的人権として学習・教育を保障しようとする道筋と,すべての人が持続可能な社会を創造するための力を獲得していくことを支えようとする道筋が交わり,さらに延びていく先に,社会教育・生涯学習はどのような実践を生み出していけるだろうか。政治的公共性を担いながら自己を変容させ社会を変革するシティズンシップを,これからの社会教育・生涯学習はどのように育んでいけるだろうか。
本書を手にとり各章からのメッセージを受け取っていただいたみなさんには,ぜひさらなる議論に加わり,これからの社会教育・生涯学習を創造する仲間として,ともに歩みを進めていただければと願う。 二ノ宮リム さち(編者)
版元から一言
本書『社会教育・生涯学習入門』は「社会教育・生涯学習の基本 シリーズ」の初巻です。本シリーズは,社会教育・生涯学習に携わる研究者および実践家,従事者等が取り組んでいる学術的研究ならびに活動実施の記録などに基づいて,その成果・実績・課題・展望などを分かりやすいテーマ設定と内容構成で社会に向けて発信するものです。
パンデミックやウクライナ戦争などによりグローバル化・高度情報化が更に加速する世界情勢の中にある日本でも社会生活の流動性が進行し,目まぐるしく生活環境の不安定化が引き起こされています。これを鑑みて,本シリーズでは社会教育・生涯学習の今日的な情勢を適切に捉え問題意識をもった著者に広く門戸を開いて,社会教育・生涯学習において時宜を得たテーマを取り上げ,これまでの研究・実践のエビデンスに裏付けられた信頼のおける最新の論考によって展望していきます。
本書は,シリーズを貫く理念の礎となる入門書と位置づけて上梓しました。是非とも本書をお読みいただき,今後の続巻にも是非ご期待ください。
上記内容は本書刊行時のものです。